プロは貴方を無抵抗にする。
「えーと……ここが俺の部屋だな」
心廻と寮まで向かい、自分の部屋まで着いたが……。
見た目はそうだな……落ち着かないほどの豪華さで、まるで高級ホテルの様なベッドや、家具の配置とクオリティをしていて、流石の俺も引いてしまう。
「凄いな……この部屋……学費や寮費がタダじゃなかったらどうなっていたことか……」
「え!? タダなの!? それ大丈夫なヤツ!? タダより怖いものはないんだよ〜……」
「大丈夫だって、なにせ、この学園は王国直轄だぞ? 国のお金があるからできることだな」
この学園は王国直轄であり、合格するのはとても難しいため、合格者はそれ相応の扱いを受ける。
まあ俺は……無能力者だからバレるとロクな扱いされないだろうが……。
それも生徒からであって国自体は特に差別をしていない。
ただ無関心ではあるがな……。
「駄目だよ! タダを疑わないなんて……私が初めて異世界に行った時……タダにつられてご飯を食べたら、タダ働きって意味のタダで、ご飯代はきっちり支払ったし、タダ働きさせられたんだからね!!! ……って聞いてないじゃん!!!」
「これか……」
心廻が何かを言ってるが、俺はとにかく先に送ってある荷物の確認がしたかったので、部屋を探索し、窓とベッドの間の隅で見つける事に成功した。
「君の荷物?」
「そうだ……よし……よかった……あった」
「何それ鍵?」
俺は荷物から二本の鍵を取り出す。
「ああ……これはとても大切なものだ……まあ使えることはないのかも知れないが……」
「ふーん……じゃあまあ、今は聞かないでおくよ」
「何だ? 配慮なら要らないよ」
俺は心廻が配慮できる人物とは思わなかったので、少し評価を引き上げる。
「配慮? ただ長くなりそうだし面倒くさいなって!」
訂正、こいつの評価なしと。
マジで殴り飛ばしたい笑顔で言われた。
「あ、見て亡! この冷蔵庫に入学祝いとして寿司とステーキそしてフルーツとコーラが置いてあるよ!!!」
寿司……? ステーキ……? フルーツにコーラ……?
何だこの学園ふざけてるのか? 生徒を甘やかし過ぎだ……けしからん!
「さ、亡! 用意して食べよう!」
はしゃぐ心廻を見て、なんだか少し懐かしい気持ちになったが……それはそれとして……。
「そんな事してる場合じゃないだろ? 今後お前と俺がどうするか決めないと」
「だから食べながらすればいいじゃん? 私お寿司大好き!!!」
そう言い着々と準備をする心廻。
「でも俺一人分しかないが……?」
「大丈夫大丈夫! カモン! 救世剣祝福……食の恵み!」
技名を叫ぶとなんと二人分に食事が増えている、何というかまさにチート能力者だな……。
恐らくこの能力は、純粋な倍増ではなく、恵みという名の通り増やすのではなく与えるということ。
その与える為のストックが何故あるのか?
どういう原理なのか?
どのくらいあるのか?
分からないが……こいつが持つ、何かしらを消費してこの場に出しているのだろう。
全く……俺も能力について詳しくなり過ぎたかもな……。
「さ、食べよ食べよ」
「はぁ……分かったよ、でもしっかり今後のことについては話し合いながらだからな?」
「うん! 分かってるよ! あ、このお寿司うまぁ〜」
幸せそうにお寿司を頬張る心廻を見てると最早、急かす気も失せるな……。
そうして結局、食べ終わるまで具体的な話はしなかった。
「さて……それで私の立ち位置や君の今後について話そう! まっ、任せてよ私、もうこの学園の学生名簿に登録してあるから!」
「は? どうやって?」
「じゃじゃん! この腕に着けてる腕時計型のデバイスでチャチャっと世界を改変してきたよ! ちなみにこの世界を調べたときに使ってたのもこれ!」
あ、もう駄目だこの人無敵すぎる。
「はは……その……それでお前の立ち位置は分かったよ、じゃあ俺は今後どうするんだ……?」
「決まってるじゃん、私と七理を目指します!」
「は? いやいや俺はそんなの嫌だぞ」
七理に入るだと……?
俺はただニートしたいだけなのに……。
どうせ全て無駄なんだし、やる事から逃げている俺は最低な人間のままで居たいのに……。
「居たいの? 本当に最低なままで? いつまでも本当の力を隠し通して、やるべき事から逃げて、それであの二人は満足するのかな?」
「お前!? 何で知って……」
「そりゃ経験豊富なプロですから!」
久しぶりに図星を突かれたことで俺の中で焦りと恐怖が戻って来た。
この感情は……逃げ続けている事から向き合わなきゃいけない恐怖からなのだろう。
しかし、それでも俺は直ぐに冷静になった。
何故なら、今ここで焦り、恐怖しても、今の俺にはどうしようもないからだ……。
何故知ってるのか気になったが……。
こいつにはもう何を言っても駄目な気がするし……。
最早、バレたところで俺にはどうにもできない……。
「それで何が目的なんだ?」
「だから言ったじゃん! 私が貴方の学園生活を……いや人生を彩り直すんだよ!」
こいつが宣言して来た時点で俺にはもう拒否権はなかった。
なにせここで抵抗すること自体が無駄だからだ。
「そう……前みたいにね……」
「前みたいに?」
「気にしないで! 今話したって変わらないから……」
「はぁ……まあいいだろう……やれるものならやってみろ! どうせ無駄だと、時が来たら思い知るこの世界の人間達もな……」
「ふふっ! そうならない為にも私がサポートするから!」
全く……こいつと居ると何故だか心地よい無抵抗感に誘われるな。
面倒なはずなのに……。
無駄なはずなのに……。
それが何故か、心の奥底ではきっと分かっていたのかもしれない……。
「さ! 取り敢えず、教室にサボってごめんなさいを言いに行くよ! ほら!」
「はいはい……行きますよ……」
少し加筆しました。




