プロ登場!
「なるほどね……はぁ……全く分かったよ! ならこの俺……私が、お前の……あなたの学園生活と人生を彩ってあげる……よ!」
「……はぁ?」
「ふっふっ〜ん!」
目の前の存在はそうして腕のデバイスを起動させる。
俺は今こいつの扱いに困っていた……。
――何故こうなったのかと言うと……。
□ □ □
――入学前、受験期。
「ねぇ! 亡! 何してるの〜!」
俺の妹、藍は俺の背中に遠くから近づいてきてそう言いじゃれて来る。
「別に何もしてない、いつも通り勉強だよ……」
勉強……これは学園に入学する為に必要なこと。
正直……やりたくない気持ちは山々だが……。
入学できないと家系図から追い出されるらしいのでな……。
「何もしてなくないじゃん、勉強してるじゃん! もー」
藍ははっきり言って兄離れ出来ていない。
どうも友達と遊んだりするよりも俺と絡む方が楽しいらしいが、俺としては静かな方が好きなんだがな……。
「私もちゃんと毎日してるよ勉強! だって私も亡と同じ学校入りたいからね」
そして妹も同時期に同じ学園に入学する。
俺の入学する学園には中等部もあり、そこの三年に今いる学園から藍は転校するのだ。
そう俺の入学するかもしれない学園は……かなりのエリート校だ。
なにせあそこはあの学園独自の集団、七理が存在するからな……。
七理……それはあの学園のトップだけじゃなくこの国最強の集団として、国王の護衛も務めるまさにエリート集団なのだ。
だからこそ、七理クラスとまで行かなくてもついていけるように藍は勉強をしているのだろう。
俺にはその努力が見えずに遊んでいるようにしか見えないが……。
まあ藍は今いる学園でトップの成績らしいからまあ何とかなるだろ……。
問題は俺だな……あー面倒だな……全く……。
□ □ □
そこから数日が経った頃、藍が学園の見学に行ってくると言い、ボロボロになって帰ってきた。
俺はそもそも行きたくもない学校にわざわざ見学に行くのも馬鹿らしいので行かなかったのだが……。
流石の俺も藍のボロボロな姿には心配したが何があったのか教えてはくれなかった……。
□ □ □
そんなこんなで……受験日になり、筆記も実技も適当にこなして合否発表の日が来た。
「……あー合格、はい、帰ろか」
合格してしまった……。
そりゃ嫌だ……だって能力者学園なのに、肝心の俺は無能力者だしな……。
どうするか、な……まあ、なるようになるしかないな、なにせ俺は……。
それにしても嫌だな……先に学園にいる姉さんになんて言われるか分かんないし……。
□ □ □
「どうだった? 合格した?」
そんな今、一番聞かれたくないことを藍から言われる。
「したな……合格……はぁ……」
正直言うと……合格したのは当然だろう……。
なにせ家系図から消されたくないからこそ、まさにちょうどいいという意味の適当にやったのだ。
「何そんな嘆いてんの! これで亡と一緒に登校できる! ヤッタ……」
「何喜んでんだ藍、俺は合格は嬉しくないしそもそも俺達これから寮生活だろ? それに男女に分かれてるんだから困るぞ、そんなんだと」
「なっ!? 喜んでなんか!!! って合格嬉しくないって何よ!? 私と一緒なの……嫌なの……?」
そう藍は上目遣いで聞いてくる。
「別に嫌じゃないが、かと言ってこのままでも困るんでな、ってそうじゃなく俺はニートがいいなって……」
「何言ってんの……!? そんなんだとお母さん大変なんだからね!? ほら、少しはやる気出す!」
そう、我が家は父が既に亡くなっており、母一人で俺達三人を育てた。
姉さんはすでに学園に入学して暮らしており、何と七理のメンバーらしい。
そんな凄い姉を持てて母さんも光栄だろう……。
うん、なら俺はもう頑張らなくていいなって言いたいが母さんは厳しいからな。
だから家系図から追い出すとか何とか……。
そして幼馴染姉妹の妹も俺達が通う学園に転校するらしい、幼馴染の妹は藍と同じ中等部にそしてその姉は既に学園に通っていて七理になっていると聞いた。
「はいはい、わかってるよ……俺も家系図から追い出されるのは、なんか嫌だしな……」
「え? 何それ?」
「……は? お前は言われてないの? ……いいな」
そんな妹贔屓が発覚しながら入学式の日を待つ。
□ □ □
――そうして入学式の日になり俺は……絶望していた。
ついに来てしまったのだ、来たくもない学園、輪廻王国直轄のエリート校、輪廻能力者学園に。
「さ、私は職員室に行かなきゃだからここでね! 行ってらっしゃいお兄ちゃん!」
「ああ……気をつけてな」
そうして妹と別れ入学式に出る。
入学式はなんというか、色々当たり前のことをやり、国王からの挨拶があり、わざわざ国王自らがご苦労な事だなと思いながら聞き流した。
……まあどうせ大した話ではないだろうしな……。
そんなこんなで入学式が終わった。
この後クラスに移動して担任やら、生徒同士の自己紹介やらがあるだろうが、思うところがあったので俺はサボった。
そうして学園をふらついて、隠れて時間をつぶそうと思ったので、人気のない場所を探して物置を見つけた。
そして中に入ると明らかに目立つように、物置の一番奥によく分からない扉を見つけた。
それは如何にも怪しさ満点の不可思議な彩りと彩色がされ、まるで異世界にでも繋がっているかのような気配を感じ取らせた。
開けたら不味い……そんな事は思わなかった。
むしろこれで退学になるならそれはありだと思った。
元々サボったら怒られて退学になると思ってサボりに来たが、実際それだけで退学になるわけがないので隠れて時間を潰していた。
そんな俺としてはある意味何か不味そうな扉を開くのは、退学のチャンスを作るにはもってこいだった。
なにせ俺は入学はした。
だから家系図には消されないと、そう無理を通す事に決めていたので躊躇なく扉を開ける。
扉を開けると……。
紫と黄金の光が放たれる空間が見え、奥から物凄い勢いで人影が近づいてくる。
そしてその影の正体は美女だった。
「ハァハァハァ……あー疲れた……全く俺はツイてないな……んで……ここどこだ……?」
目の前に現れた女は、男口調で独り言を喋っていた。
「うん? お前……その、ここどこ?」
「え……? あ、学園です、というかハハッお綺麗ですね……」
あまりにも馴れ馴れしく話しかけてきて怖いので世辞を言って何とか機嫌を取る。
「あ? 綺麗……?」
そうして女は自分を見回した後……。
「あーなるほど……ごほん!」
「えーと……大丈夫ですか……?」
「うん! 俺……いや私は、大丈夫! それよりも教えてくれてありがとう! 貴方は学園の生徒?」
「まあ……はい……」
「そうか……そうなんだ……そのこんな人気のないとこに一人で居て大丈夫?」
「あー……俺、退学しようかなと……この学園を……」
「どうしてだ……どうして?」
「その……人生に飽きたからかな……」
女は俺を暫く凝視した後……。
「なるほどね……はぁ……全く分かったよ! ならこの俺……私が、お前の……あなたの学園生活と人生を彩ってあげる……よ!」
「……はぁ?」
「ふっふっ〜ん!」
女は鼻歌を歌いながら、腕についた何かを起動させた。
こうして女が何かを起動している間にどうしてこうなったのかを振り返っていたのだ。
正直開けなきゃよかった……完全に相手の扱いに困っている。
「よし、何となくこの世界のことは分かったよ! じゃっ! これからよろ!」
何故かトントン拍子で話しが進みながら女は何かしているが……。
俺はもう完全に諦めていた。
だってこれ完全に妹にわがまま押し通される時と同じパターンだからだ。
「さて! 自己紹介だね! 私は……心廻! よろしく、もう察してるだろうけど別の世界から来たよ! ちなみに私異世界経験豊富だから何でも言って! まさにプロ! だからさ!」
駄目だ……異世界だの……プロだの……もう、なんか話しが通じなさそうだから撤退だな……。
「ふっ甘いね、出でよ! 神殺剣畏怖! 時間格解錠! 時の大遅刻」
心廻が言った瞬間、俺の体が動かなくなる。
いや違う、実際には動いているのだ……。
だが……俺が動いた結果が世界に認識されていない。
つまり意識では歩いたし体も動いた、そう心廻の宣言通りこれは時間の遅刻だ。
だから次の行動を起こす事が出来なくなる。
だがこれも一生ではない。
だけども、この俺自身の時間が、この世界の時間より遅刻している。
故に遅れて行動する羽目になる、そしてこの世界の時間は止まりはしない。
だから元の時間軸で生きることは不可能だ。
つまりこれは元の時間で生きるものたちからしたら実質的に時間停止なのだ。
「さて、逃さないよ……だって私、この世界に来るの初めてだし学園生活なんて楽しそうじゃん! 私も一緒に生活させて!!!」
「……」
「ってそっか……時間が遅れてるから私の声が届くのも、返事も遅いのか、てへ、じゃあ私もそっちの時間軸に移るね」
何とかこの世界の時間に追いつこうともがくが……。
脱出不可能だと悟ってしまった……。
その瞬間、あの女が俺と同じ時間軸で現れる。
「やっほー! 解除してあげるからさ、一緒に学園生活しよ?」
そう言われ最早抵抗する気も失せた俺は……。
「……好きにしろ」
「よし! よく言えたね! 時間格……時の同期、はいこれで元通りっと……時間格施錠」
「はぁ……酷い目にあった……それでこれからどうするんだ?」
「決まってるでしょ? 君の寮の部屋に行くんだよ」
「部屋? ああ……さっきこの世界のことについて調べてたっぽいし、それでついでに俺の事調べたから知ってるのか」
「……まあ……そうだね! さ、寮の部屋に出発!」
こうして俺と心廻の学園生活が始まった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
面白かったら評価、ブクマ、感想をくれると嬉しいです。
執筆のモチベに繋がります!




