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異世界経験豊富なプロと行く!〜無能力者の学園生活〜  作者: 啓上秋
二章アマチュアは教えを説く。
27/29

アマチュアは高飛車の能力を味わう。

「待ってください! お姉様を超える……?」


「そうだ、怖いのか?」


「! そんな事はありませんわ! ただ……いきなりだから驚いただけで……」


「じゃあこれが目標でいいな?」


「はい!」


 こうして、俺と霧香の特訓が始まる。


 

□ □ □



「よし、準備はいいか……?」


「ええ! いつでもかかって来てください!」


「権利行使……! 強化……! 身体能力……!」


 まずは様子見で身体能力を強化し、距離を取る。


 霧香の能力……月の大紙……。


 月の大アルカナを模した名前だろう。


 つまり月のカードによる、嘘、幻影、不安等に関する能力だろうか?


 そして月は満ち欠けする……能力の出力に問題がある事を見極め、改善点を見つけなければな……。


 そうして……霧香が能力を発動する。


「シャッフル! ドロー! 新月……!」


 霧香がそう言うと一瞬にして……全てが暗闇になる。


 ……。


 ……。


 霧香が見えない……。


 ……。


 ……。


 音も、景色も、自分の姿さえ見えない暗闇……それが今の状態だった……。


「権利行使……! 火炎葬哀愁……火時計……!」


 炎の秒針を展開し秒針を早回しするが……。


「なるほどな……」


 直ぐに炎は消え再び暗闇に呑まれ、何も起こらないまま……数分が過ぎた……。


 そして――。


「全く……いきなり、新月の正位置を引いてしまうとは思いませんでしたわ……」


 霧香の声が前方から聞こえ、徐々に暗闇が霧になっていく……。


「ご安心を先生、今は三日月の正位置……になりましたわ……では優雅にお茶でもわたくしはいたします……!」

 

 そう言うと霧香はお茶を始めた……。


 流石に呆気に取られた俺は……。


「そんな余裕ぶってると、負けるぞ」


 強化した身体能力で一気に距離を詰め、霧香に殴りかかる……!


 ブワッ!


「なっ……!」


 殴りかかったはずだったのに……感触がないどころか……体をすり抜け、効いていない……。


 そして何より……何故か……とてつもない不安を感じている……。


「あら……先生、落ちつきなさい? 今どれだけわたくしに攻撃しても無駄ですわよ?」


 霧香が優雅にお茶を一口含みそう言う。


「どういう事だ……?」


「月の大紙……それは、月の大アルカナの様に、幻影を見せるもの……つまり今、わたくしもあなたも月のカードの様に、霧が出た世界に居るということ、その場所では全てが疑惑……つまり真実ではなく嘘になりますわ……故にどちらからも攻撃が効きませんの」


「そういう事か……」


 つまり今は互いが霧であり実体がないため、どちらの攻撃も通らないということだ……。


「そして先ほどの新月は月という不安が消えた代わりに明かりが届かない、つまり夜の暗闇だけになり互いに、見えも干渉もできない虚無……暗闇になるんですわ……」


 なるほど……暗闇で何も見えないなら、互いが居ないのと同じ……故に戦闘すら始まらないと……。


「わたくしの能力の恐ろしさと強さ……分かりましたか?」


「確かに攻撃が通らないのは強いな……! でも、そっちも攻撃出来ないなら意味がないじゃないか……!」


「さぁ? それはどうでしょうね? 早くしないとわたくしの攻撃が来るかもしれませんわよ?」


 確かに、相手はまだ手のうちを全て明かしてない……。


 資料も詳しい事は書いていなく霧に関するとしか書いてなかった為……これ以上何をしてくるのか読めない……。


「ちっ! 権利行使……実力の付与……!」


 俺は権利付与で実力という実体を相手に付与する事を試みもう一度霧の中に突っ込み殴るが……。


「何をしようとしたのか分かりませんが……能力も嘘になるのですのよ? 効くわけありませんわ……!」


 まずいな……権利行使すら使えないとなると……どうすればいい……?


 そしてまた霧に振れた事で不安が強くなった……。


 俺が負けるかもしれない……霧香は俺を殺すかも知れない……そんな疑惑が浮かんで来て不安が止まらない……。


「あらあら……先生の頭を抱えているところなんて初めて見ましたわ……よろしくないかもしれませんが……可愛いですわよ……先生♡」


 今の俺にはその言葉さえ、何か含みがあるように見えて不安が止まらなかった。


「さて……そろそろ時間ですわよ……上弦の月の正位置!」


 霧香がそう言うと霧が晴れる。


「やれやれ仕方ありませんわ……」


 そう霧香が言うと――。


「!?」


 霧香が不安に苛まれている俺に一気に距離を詰め、二刀の刀を振り下ろす。


「ぐっ!!!」


 俺はそれによって……弾き飛ばされる……幸い、霧香が逆刃で斬ってくれたおかげでそこまでダメージはない……。


 しかし……ダメージが入った……?


「疑問、ですわよね? 何故攻撃が通ったのか……答えは簡単ですわ……今は能力が使えないから」


 能力が使えない……?


「そう、能力が使えないんですの、丁度満月の半分……つまり嘘と真実が混じり合う時期ですから」


 つまりこういう事だろうか……?


 新月は暗闇で互いが見えないから何も起こらない。


 月が出ている時は、霧が出て全てが嘘になり互いに攻撃が通らない……。


 そして半月は嘘と真実が混ざり合い能力が発動しなくなる……。


 つまり能力自体の出力が不安定とはこの事だろう能力が使えない為、自分で戦わなきゃいけない瞬間が出てくるだからナンパされたあの時も半月だったのだろう……。


 だから俺の仮面も見えた、つまりあの時素の実力で霧香はナンパ男を撃退したのだろう。


 そしてこの能力ならば、素の実力がものをいうため、刀を帯刀している事も武器の扱い方を必死で学んだ事も必要な事だったのだろう。


 だが……気になるのは……霧に触れた時に出る不安……あれが何なのか俺にはまだ分からない……。


「さて……そろそろ次のフェーズですわよ? 十三夜月……正位置……!」


 そう言うとまたもや霧が出てくる……。


 そして霧が先ほどよりも濃く範囲が広がっている……。


「さて、お茶の続きをしましょう……」


 霧香はまたもや優雅にお茶をしている……。


 しかし、どうすればいい?


 この能力の突破法を見つけなければ……勝ち目はない……。


 いや、勝ち目ならある……半月まで待てば素の実力差で……勝つことはできるが……。


 だが、霧の範囲が広がっていることが気がかりだ……。


 ただ、待ってれば勝てる相手でもないのだろう……。


 なら――。


「権利行使……力説!」


 力説で嘘を真実にしてみれば何とかなるかもしれない……。


 俺は自分の拳に、霧を蒸発させる温度があると自分に力説し、霧香に殴りかかる……。


 すると……。


「!? あっ!?」


 当たった……!


「ようやく一撃だな……霧香……!」


「まさか……わたくしの能力が破られるなんて……でももう、遅いですわ……霧を蒸発させても、霧に触れたは触れた……ほら、不安が止まらないですわよね?」


 霧香がそう言った瞬間……体の震えが止まらなくなる。


 ここで負けたら教師としての立場が……。


 霧香に迷惑がられていないか……?


 そもそも霧香は、俺に殺意を持っているのではないか……?


 そんな不安が頭を支配しいっぱいになる。


「さぁ……おしまいにしましょう? 月の逆位置……満月!」


 霧香がそう言うと霧が晴れる。


 だが、間髪入れず霧香が接近してくる……。


 俺はそれを受け止めようと――。


「ああぅああ!!!」


 霧香の攻撃は俺の体を透けた、だが確かに俺にダメージが発生した……。


「ちっ だがダメージが通るならこっちのものだ……! 権利行使! 気力を剥奪!」


 俺は霧香の中の気力を剥奪しこの戦闘を終わらせようとしたが……。


「効きませんのよ? 月の逆位置は霧が晴れる……満月の光が世界に届くもの……その中では真実だけが存在できる……貴方は霧という不安に支配された嘘の存在、わたくしは真実……つまり、わたくしの攻撃だけが一方的に入るのですわ……!」


「なんだと……!」


「さて、これでトドメですわ!」


 またもや刀が振り下ろされ――。


「くっ!」


 ――振り下ろされたはずだった……。


 だが……目の前にはダメージを受け倒れている……霧香だった……。

 

 

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