アマチュアは高飛車と精神の特訓をする。
そうして、霧香と俺は、またもや個室訓練室に戻って来ていた。
「さて……まず、お前の能力についてだ、お前の能力は俺が貰った資料と実際俺に能力を使ってもらったところからみるに霧に関する能力で間違いないな?」
「ええ……間違いないですわ! わたくしの能力……月の大紙は最強なんですの!」
「分かった、じゃあまず、自分の能力についてどこまで理解してる?」
「わたくしの能力は制御が出来てないのはご存知でしょう? それは精神の摩擦だけが原因じゃなくこの能力の性質にもよるものだと思うのですわ……」
能力の性質か……月の大紙という能力名にも関係しているのだろうか?
「わたくしの能力は霧、霧は真実を隠すもの、それは月の大アルカナの性質とそっくりであり、月は満ち欠けするもの、つまり能力の出力自体に元々粗があるのがこの能力の性質だと思うのですわ……」
なるほど、アルカナか……確かに月のカードは嘘や幻影を表す、確かに物を覆い隠す、霧に似ているな。
「なら、やる事は一つだ、まずお前にとってのお嬢様が何かから始めよう」
「わたくしにとってのお嬢様……? それは……昔のおとぎ話のお嬢様みたいな……」
「違う、お前の中にあるお前だけのお嬢様だ! それを作るぞ!」
「でも……それはどうしたら……」
そう、まず必要なのは憧れの存在になる事ではない、キャラを作るならまず、するべき事……それは……。
「プロデューサーによるプロデュースだ!」
「は?」
霧香はきょとんとした顔で固まってしまった……。
「まあ、聞け、アイドルってのはファンの為にキャラを作り夢を与える者だ、そしてそれはプロデューサーが管理しイメージをコントロールする、つまり俺がお前をプロデュースしてやるってことだ」
「えぇ……と……つまりわたくしにあの、王都で人気のアイドルグループ、☆←アタイ達! に入れと……?」
「なんでそういう事になる……?」
というかなんだそのグループ名……この世界にアイドルがいるのは知ってたが、そんなグループが人気だったのか……。
それにしても星か……"アイツ"もアイドルしてたが……アイツの名前も星が入ってたから、なんだかアイツが見たら親近感勝手に感じそうだな……。
『亡! 見て! ☆←アタイ達だって! 私の名前にも星が入ってるからお揃いだね!』
とか言ってくるんだろうな……。
「じゃあなんだというのですか……!?」
「それは……だな……! 今からお前には俺がお前のファンになる、それをお嬢様アイドルとして応対してもらう、そこでどういうお嬢様になりたいか掴むんだ」
そう、これは、俺がアイツを復活させた時にも使った特訓法……アイツで効果あったからって霧香に効果があるのかは分からないが……やるだけの価値はある。
「その……どうしたらいいのか……わたくし……こういう、アイドルという文化には触れて来なかったもので……」
「普通にいつもの言動をまずはしてみろ」
「分かりましたわ……まあっ! ごきげんよう、ファンの方! わたくしの魅力にやられてしまいましたのね? 手を出しなさい? わたくしは最強なので握手くらいならしてあげますわ!」
「……なるほど……悪くない……アイドルとしては……だが……俺はお前を見たいんだ! よし俺がフィードバックを送る……待ってろ分析するから」
「おま……お前を見たい!? その……それは……少し特訓だとしても大胆では……?」
霧香が何故か照れているが今は霧香をどうするかの分析に集中する。
「よし、原因が分かった! 何故お前が見えないのか、な……だが……その前にお前の手応えはどうだ?」
「そうですわね、いつも通りなんですが……何故か今のわたくしにはしっくりこないと感じましたわ」
「そうだろうな、俺に秘密を打ち明けた事でお前の中にも変化が訪れた、だから違和感があるんだろう……そしてその違和感の原因は……」
「何が原因なんですの……?」
「それはつまり……」
「つまり……?」
霧香が息を呑み、俺の回答を待つ……。
「それはつまり、お前は健気にキャラを作ろうとしてるのが可愛いのに、今のままだとキャラ作りによって可愛さが雅的高貴さに寄ってるのが問題だ!」
「かわっ!? 可愛いですって……!? その……あの……はい……霧香可愛いんだ……」
「そうだ、お前は健気で可愛い!」
霧香が頬を両手で挟みながらモジモジしているが……まあ、急に褒められれば誰だってそうなるからな……うん。
「でもそれってキャラを作るのが可愛いのにキャラを作ったら可愛さが別の方向に行くという矛盾が起きてませんの?」
「そうでもない……! ここで必要なのはキャラを作る事が問題なんじゃなく方向性が美しすぎるのが問題だ、だからお前の健気な可愛さを出すためにも、キャラの方向転換をするぞ!」
「待ってください……! わたくしのお嬢様キャラは憧れ……そう簡単に方向転換など……」
「霧香……何を言っているんだ……? 俺は方向転換をするだけでお嬢様キャラをやめろとは言っていない……俺達が目指すのは健気で庶民的、親しみやすい、お嬢様だ……これは内心お前もそう思ってる事だ」
「わたくしが内心そう思っている……?」
そう霧香は今までの行動をみればわかるが、かなり庶民的で彼女としての素があるのだ、それと今の高貴さはどうしても摩擦が生じる。
そしてそれを霧香自身もストレスに感じているのだ、キャラ作りにより自身を解放出来ていない為にそのストレスで能力が不安定になるのだ。
「そうだ、お前の素をお前のキャラの高貴さで抑圧してるから心の奥底の本当のお前は、本来の自分を取り戻したがってる、それと同時に憧れも捨てたくないんだ」
「そうですわ……ね……」
「故に俺は提案する、今すぐじゃなくてもいいんだ、これから暫く毎日、俺と二人きりになる時間を作ろう、そしてそこでお前の素とキャラの統合を果たすんだ」
「二人きりに!? そのそれは……少し教師としての指導の枠をはみ出しすぎではなくて……?」
霧香は更にモジモジしだす、まあ、当たり前だこれは確かに指導の枠をはみ出している。
「そうだ、はみ出してる、俺はプライベートでの時間を使ってでも霧香をよくしたい!」
「そんな……!? わたくしの事をそこまで……? その……嬉しいですわよ……そこまで想ってくれることが何故か……」
「どうだ? 付き合ってくれるか?」
「えぇ……その……付き合うのは……もう少し……仲良くなってからというか……いやでも……その……時間が……仲良くなる為のもの……?」
霧香が、何故か俺と付き合う事になると謎の勘違いをしているので……。
「違うぞ、霧香、そういう意味じゃない」
「へ? あ、あ! あぁ……そうですわよね! わたくしったらなにを……そうですか……」
霧香は慌てて、勘違いを恥じたあと、少し落ち込んだ。
まあ、恥ずかしい勘違いがバレればそれは誰だって落ち込むわな……。
「それで時間……作ってくれるか?」
「えぇ……作ります! 作りますとも……!」
「よし! じゃあ次は、能力訓練だ!」
こうして今後の方針が決まったので個室訓練室に来た本来の目的、能力訓練を始める。
「ええ!」
「目標は打倒、海月だ!」
「へ……?」
霧香は……またもやきょとんと固まった。




