アマチュアはキャラ作りの原点を聞く。
俺達は個別指導室に移動しそこで、話をする事にした。
「それで……? お前がキャラを作ってる理由は何だ?」
俺がそう言うと霧香は一拍置いて深呼吸した後、いつもとは少し違う口調で話し始める。
「それは、お姉様が……優秀だったから……」
なるほど、これは海月も言っていた事と一致するな。
「具体的にどう優秀で、どう感じたんだ?」
「お姉様は、教師をやっている事からも分かると思いますが頭がよく……面倒見もいい、そしてこれは知りませんでしたが……七理だった……そして私はそれが誇らしく……されど苦しかった……」
やはり七理というのは知らなかったらしいな。
「それで?」
「私はそんなお姉様に憧れていた、いえ……コンプレックスだったのです……幼い頃から優秀で先を行くお姉様と、それと比べられる私……お姉様と同じくらいの期待……いやそれ以上の期待を背負わされる事もあったのです……」
比べられる事、そして期待、その重圧が霧香を追い詰めていたと言う事か……。
「そんな時、お姉様は、この学園に入学した……もちろん寂しくはありました、が……それ以上にようやく重圧から解放されると……ですが……」
「そうではなかった……と?」
「はい……待っていたのはお姉様の代わりという役割だけでした……」
「だから、コンプレックスは変わらなかったんだな……?」
「そうです……が、この時期に入ると同時に私にとって転機が訪れました」
「転機?」
「それは、貴方の言うキャラ作りです、お嬢様のキャラになりきる事を始めたのです」
どうやら霧香のキャラはその時期からのものらしい。
「どうしてだ?」
「まず、私はもう環境に耐えられなかった……でも、表だっては言えない……なら、言えるだけの実力があればいいと思い、能力の鍛錬と武器の扱いを激しく学び始めたのです」
霧香は天才型ではなく、相当努力して今の形になったんだな……。
「そして能力の扱いに慣れ始めた頃……学園に入学しました、その頃にはもうお姉様は新任の教師で、私は、お姉様が担任にならない様に祈り、学園でもなるべく他人のフリをして生きてきました、そして……」
「そこで、お嬢様キャラになるきっかけがあったと?」
「はい……きっかけはお姉様でした、お姉様は教師としてこの学園の実力主義を受け入れ面倒見の良さを封印していました、その時、思ったのです、お姉様はまた先に行ったと……」
「つまり、面倒見の良さを封印していたのを霧香……お前は成長だと思ったわけか」
「そうです……だから私もお姉様の代わりにならない為に成長しなければと……そうして変わろうとしたのです」
霧香は、海月の教師としての性格を自分の先を行かれたと勘違いしたわけだ。
なら霧香はこう思っていたのだろう……。
「霧香……もしかしてお前は……先を行かれるから比べられるんだと思っていたんじゃないか?」
「その通りです、だから私も急ぎ成長し、実力を身につけ、お姉様の先を行く必要があったのです」
「でも、お嬢様キャラである必要はあったのか?」
「ありました、私達、姉妹はお嬢様に憧れていたのです、幼い頃に見たおとぎ話のお話に出てくる様な強いお嬢様、その私達の憧れの象徴になることで、私はお姉様の先を行った事になると思ったのです……」
「そういう事だったのか」
「はい……その……どう思いましたか……? この話を聞いて……」
霧香は俯き……スカートの裾を握りながら言う。
「二つ、思った事がある」
「それは……?」
「まず、一つ……お前自身が、自分に期待をかけてくる存在になってしまっていた事だ」
「どういう事……ですか……?」
霧香は顔を上げ、首を傾げる。
「お前は海月の代わり扱いあるいはそれ以上を求められる事を嫌がってたはずだ、でも……お前が目指したのは海月を超えるというそれ以上を自分に求めていたんだ……」
「……! 確かに……言われてみれば……私は結果的に一番コンプレックスを抱える原因となった期待をかけられると言う事を自分自身でしてしまったんですね……」
「そうだ、だが、二つ目を言うぞ……お前は能力を制御出来てないだろ?」
「……はい……」
「それはお前のキャラクターの継ぎ接ぎによる精神の摩擦によるものだ」
「精神の摩擦?」
「そうだ、キャラを無理に作ってるから、お前は精神が安定せず、能力が安定しなくなっているんだ」
「じゃあ……キャラを作るのを辞めろと……?」
「いや? むしろ極めよう……よし……霧香、行くぞ」
そうして俺は立ち上がる。
「え……? どこに……?」
「戻るんだよ、個室訓練室に、これから俺が……お前を指導してやる!」
霧香はそう言われて、俯き……強く目を瞑ったあと……。
パッ!
「分かりましたわ! そこまで言うなら、わたくしを鍛えてみなさい!」
霧香は自分の顔を両手で叩き、立ち上がるといつもの口調に戻った。




