アマチュアは高飛車とお出かけする。
「そっ……! それは……! デートと言う事ですの……!?」
霧香は口元をハンカチで隠し俯きながらそう言う。
「……違うな、まあ、少しお前のことを教師として知っておこうと思って……」
「なっ! なんですか……もうっ! それなら素直に私の事知りたいでいいじゃない!」
霧香はデートの誘いと勘違いした事を恥ずかしがっているのか、顔が赤くなっていた。
「ハハッ、そうだな! じゃあ放課後、職員室に来い」
「その……いいんですけども……仮面は外して下さらない? なんか……怖いですわ、仮面の人と歩くとどう見られるか……」
「仮面……? ……あ」
そういえば仮面つけてたな……。
「悪いがそれは……できない……」
そう言うと霧香は少し考えた後……。
「分かりました……私に考えがありますわ!」
「なんか、分からないが、ありがとう誘いに乗ってくれて」
そうして約束を取り付けた俺は午後の授業をしに戻る。
□ □ □
放課後になり、職員室で仕事の仕方を海月に教えて貰った為、仕事をしていると……。
「失礼します……生我先生はいらっしゃいますか?」
いつもの高飛車お嬢様口調からは考えられないくらい丁寧な口調で霧香が入ってきた。
「あぁ……いるぞ、放課後だな……仕事は明日に回せるから、行こうか」
「……はい……」
□ □ □
こうして俺と霧香は王都でも最大規模の複合商業施設にやってきていた。
そうこの国にはいくつもの複合商業施設があるがやはり王都、俺の世界の地方の施設と都会の施設くらい違う。
「ほら、これで問題ありませんわ」
「なるほどな、これで問題ないと」
霧香の能力は霧に関する能力だ、それによる霧の影響で俺と霧香は霧みたくぼやけ周りには見えて、誰かいるのはわかるレベルにはしてある為認識はされるがこれなら顔も見られない。
だから……仮面をつけていてもおかしくはないのだ。
まあ、これはこれで……目立つがな……。
「で……ここに連れてきて……何をするんですの?」
「まあ、取り敢えず、何処が行きたい? どこでもいいぞ?」
「まあ……! まさか……何も考えてなかったとは……分かりました! わたくしが、先生にこの施設の楽しみ方を教えてあげますわ!」
霧香が俺の手を引いて、進み出す。
「まずはこちらの! ブティック! わたくし……いつもここですの!」
まずは霧香がいつも使っている、チェーン展開されている庶民的な定番の安価な服屋に連れてこられた。
なんというか……霧香、意外と庶民的なんだな……。
「今の季節はこの服なんかを纏め買いして、安く、済ませて節約しますの!」
「なるほどな、考えてるんだな、お金の使い道」
「えぇ! お金は大切ですからね!」
そして服を選んで貰うことになった。
「先生にはこの、紺色のシャツなんて良いですわ!」
「そうか……? じゃあ試着してくる」
試着室に入り、着替える。
「どうだ?」
「思った通り! 似合ってます……わたくしの目に狂いはなかった……!」
「じゃあ買ってくる」
自分のセンスに喜ぶ霧香を横目に服を購入する。
「さて? 次は……何処に案内してくれるんだ?」
「本当はせっかくきたのでメイク用品でも見たいのですが……先生は興味ないですものね?」
「いや、興味はないが一応買った事はある……」
「え!? 先生もメイクをしっかりするタイプなんですの?」
「……そこは……そのノーコメントだ」
そうあれは忌々しい記憶……。
"あの二人"に女装させられた時に購入して使ったからな……。
「そうですか……では! いつか聞き出して見せますわ!」
「聞き出せるといいな……」
正直止めて欲しいが……。
「あら!? こんな時間!? ならばメイク用品よりも……フードコートですわ!」
施設の時計を見た霧香は予定を変更しフードコートに行くことになる。
フードコートまで移動して来た俺達は……いや……俺はあまりの人の多さに懐かしさを覚える。
なにせこの世界ではこんなとこ来たことなかったからな……元の世界ぶりだ。
「人、多いな?」
「それは当然です! なにせ王都ですからね!」
「そうだが……座れるか?」
「ご安心下さい! この時間に来たのはちゃんと意味がありますわ!」
「と言うと?」
「この時間帯は入口付近は混雑していますし、中に入ってもそれは変わりません……ですが……! そこまで見て帰る人が多いのも事実……! ならば奥の方の席はチャンスがありますわ!」
「なるほど……?」
今思ったが……よく考えればフードコートにくるなんて大分イメージが変わったな。
もちろん良い方向にだが。
「見てください先生! やっぱり席が空いてましたわ!」
「よくやった霧香!」
席に座り、テーブル拭きを持ってきて、テーブルを拭く。
「さぁ、何を食べる?」
「やはりフードコートと言ったら……! ポテトとたこ焼きですわ!」
「分かった……買ってくるから待ってろ」
「あ、ありがとうございます……」
やっぱり急に丁寧な口調に戻る時があるな……?
□ □ □
「買ってきたぞ……?」
たこ焼きとポテトを買って戻ってくると……何故か男共が霧香のところに倒れていた。
「先生! 見てください! わたくしをナンパして来た男共を締め上げましたわ!」
「おぉ……その……良かったな……」
明らかに周囲が困惑しているが……。どうしようもないので……。
「ほら……起きろお前達……」
ナンパ男達を起こし去らせる。
「全く……あいつら……霧香……怖かったろ? 俺がいるのに何もできなくてもごめんな?」
「全然怖くありませんわ! わたくし……最強ですから……!」
そう言う霧香は確かにパッと見は震えてなかった……。
だが……。
「お前……やっぱり怖かったんだろ?」
「なっ!? 何を根拠にそんな事……!」
「隠してるんだろうが本当に微量だが震えてるし、なによりさっきから髪を触ってるだろ」
「なっ!? それが……なんだというのですか……?」
「慰め行動だ、自分の髪を触る事でストレスや緊張を和らげてるんだろ?」
「そんな事は……!」
「それにお前は能力を使ってたはずだ、だがそれなのにも関わらず、ナンパをされた……それも関係してるだろ?」
「……」
「なぁ……お前の事聞かせてくれ……お前やっぱり無理してないか? そのキャラ」
「キャラ……ですって……?」
机に置いた、たこ焼きとポテトの湯気が俺と霧香の間に割って登っていた。
そう、まるで俺と霧香の今の心の距離感を表すように。




