#95 ツクモガミ
「えーー!もう帰っちゃうの?」
ガルドの部屋に、またもやイリスの声が響き渡る。
「まだ3日でしょ。もっとゆっくりしていけばいいのに…」
とても名残惜しそうだ。
って、まだ3日か。
だいぶ濃い3日間だったな――
「まあ、またいつか来ると思うよ。やり残した事もあるし」
それに、もともとデータの採取で来たんだ。
「長居すると――怒られるからね」
あのセレナって人に。
「でも、まだ4番、5番、6番に会えてないけどどうするのよ」
先輩が、口に出してしまった。
「4番?何のこと?」
イリスが聞く。
慌てて弁明する。
一応、秘密にしといてくれ――と、ファントから言われているのだ。
ちなみに、リゼリアにはすでに言っている。
「あの空間に、他の誰かを入れたくありませんわ」
「いや、リゼリアの空間じゃないでしょ…」
と、独占欲のような感情を出していた。
「ふ~ん。ならいいけど」
イリスは言った。
なんとか守る事に成功したようだ。
「でも、できるだけ早く来てね」
「――もちろん。忘れたりはしないよ」
先輩も、イリスを宥めていた。
「――なら、帰るよ。またいつかね」
振られた手は、空港に入るまで残っていたのだった。
「…あれ?鍵が――」
普段ならユリアが開けている鍵が、閉まっていた。
今日は来ていないのか。
ま、心霊部も忙しいのだろう。
ポケットに入っている鍵を取り出し、回した。
重い扉を開くと、中は電気がついていた。
そして…ユリアがいた。
「…ユリア、どうやって入ったんだ?」
ゼルティア学園内の鍵は、中に人がいると閉まらないようになっているはずだ。
それなのに、ユリアがいる。
「一体、君は…?」
すると、ユリアが笑う。
どこかクセがある、あの笑い方ではなかった。
「ハハハ!今になって気が付くとは、おめでたい人ですね」
咄嗟に身構える。
「お前は、何が目的だ!?」
すると、まるで興味がなさそうに言った。
「安心してください。戦ったりはしません」
そのまま、出口に向かって歩いていく。
通り際に、こんな言葉を残して。
「また会いましょうね。クロードさん」
そのまま、消えた。
…はぁ――
安堵とため息が漏れる。
「一体、なんだったんだ…」
すると、机の上にある書類が目に入った。
「――なんだコレ?」
そこには、"ツクモガミ"と書かれていた。
モノを大切にする事を忘れた現代人は、教訓であった存在すら忘れてしまっている。
ならば、自分自身が再び、記憶を呼び返さなければならない。
それがゼルティア七不思議5番、ツクモガミとして…
ここから先は、書きかけのまま。
――まさか、な。
七不思議なんて、そんな存在…
「嘘じゃないって言ったら、どうしますか?」
さっきまで聞いていた声が、耳元で響いた。
後ろに振り返ると、そこには――
声にならない悲鳴を上げ、クロードは気を失った。
うなされていたクロードを起こしたのは、白石達を見送ったイリスだった。
「先生…何してるんですか?」
呆れたように言う。
「う…イリス?」
「大の大人が失神なんて情けないですよ」
なんと手厳しい。
そして、目を開けると…
まだいる。
「ヤッホー。起きた?」
「…うわぁ!」
またもや驚きの声を上げる。
「先生?病院に連れていきましょうか…?」
「いや、だってアレ…」
クロードは指をさすが、イリスが見てもそこには何もいない。
「何言ってるんですか。早く起きてください」
「お、おう…」
まさか…見えていないのか?
「御名答!流石は先生だね」
周りを飛びながら言ってくる。
「まさか…ユリア?」
「あったりー!」
見た目も子供っぽい上に、元気な男の子――
なんというか…うるさくなったものだ。
「これからずっと離れないからねー!」
終わった…
クロードも、苦労人として生きることになった。
そして、七不思議に合っているのはもう一人――
ドン!
ケースを叩く音が、廻廊にこだました。
「あの剣でも駄目だった。これ以上、どうすれば…」
ファントの前にあるケースには、氷で漬けられた女性が眠っている。
「まさか、不可能なのか…?」
その時、後ろからコツコツと、靴を鳴らせて歩いてくる音があった。
「――誰だ。入れた覚えはない」
すげなく追い返す。
「おや、貴方が私をこの廻廊に招いたのですけどね。心の内は正直ですね」
歩いていたのは――レイズ。
「帰れ。小生の邪魔をするな――」
「どうでしょう。協力しませんか?」
レイズが言い放った一言で、事態はさらに混迷を深めるのだった。




