#90 魂久王
「やっぱりファントだ!」
ルナの知り合いなの?
「普段こんな感じなんだ。以外ー」
「あの…誰?」
困惑がピークに達した所で補足が入った。
「ああ、紹介するね。この人は同じ神格者の"魂久王"ファント=ナイエクレ。9番目だよ」
え、そうだったの!?
「スミマセン。うちの問題児がお世話になってます」
「ちょっと、問題児って何よ!」
「主観ですよ。小生から見れば…そう見えます」
「何よ!私より遅く成ったくせに生意気ね」
「自己紹介ありがとうございます」
ああ、争いになろうとしている。
これは…不味い。
さっきまでの平和ムードは何処へやら。
神格者対神格者がどうなるかなんて…巻き込まれたら終わりだ。
それは先輩も同じ事。
一瞬目を合わせる。
僕はルナを、先輩はあの人を。
「落ち着いて…」
向こうは冷静な分簡単。
「いくらパートナーでも…止めるなら――」
ヒートアップして暴力まで厭わなくなってるし。
「先輩、どうしましょう…?」
返事は即答。
「言葉で無理なら力で!」
力ってどうしろと…
「――許して!」
ルナを少し小突く。
これで落ち着いてくれたらいいが――
それより、どうして七不思議に?」
神格者ともあろう人が…
「それは…小生の生い立ちに関連するのですが、今は言いたくありませんね」
「なんで?」
「そういうものです」
なら仕方ないか。
誰だって秘密の一つや二つぐらいある。
「それより…小生、ずっと白石さんとは戦ってみたかったのです。どうでしょう、手合わせ願えませんか?」
「今!?」
「勿論です。周囲に危害を加えないようにここに連れてきたのですから」
「あ、そういう理由だったんだ」
「普段この廻廊には人を入れないので、特別です」
「私も来たことないもんね!」
「あなただとすぐに壊すでしょうから、絶対に入れませんからね!」
せっかく落ち着いたと思ったのに、またバチバチだ。
まさか…相性最悪?
「――気に食わない!パートナーやっちゃって!」
「巻き込まないでよ…だって神格者だと即死級の攻撃ばっかりしてくるに決まってるし…」
「そんなやつじゃないのよファントは。いいから戦ってよ!」
そんなやつじゃない?
このままだと向こうにボコされるか、味方にやられるか。
「――分かりました」
渋々了承。
「有難うございます」
「いつでもどうぞ」
「なら早速…」
剣を構え、走り出す。
「行かせてもらおうかな!」
相手が何をするか分からない分、軽く一振り。
もちろん――相手は避けた。
「そりゃそうか…ならば!」
後ろ向きで剣を振る。
反動で――進む。
「コレならどうだ!」
剣を下に構える。
ファントはまだ動かない。
間合いに入った!取った…
剣をそのまま振り下げた。
すると、消えた。
「どこへ――」
「パートナー後ろ!」
いつの間に!?
情報確認でも確認できなかったのに…
「邪魔が入ったとはいえ、反応できたのは素晴らしいですね」
なにを…
「しかし、戦闘とは真っ向に戦うだけではないのですよ」
すると、手をおもむろに前に出したと思うと――
「不死凋霊。選択の時間だ」
雰囲気が変わる。
何処からか、低い鐘の音が鳴った。
「選択肢は二つ。どちらか好きな方を選んでくれ」
一つが、"勝負に負ける"
二つ目は、"戦いに勝つ"
「こんなの2一択――」
反射で押した。
「パートナー駄目!」
もう遅い。
ルナの悲鳴が耳に入る頃には、選択は完了していた。
『"天命"発動。白石湊を勝者とします』
頭に声が響いたと同時に、戦闘が終わった。
「――なんだったの?結局…」
すると、右手に違和感を覚えた。
――剣が無い!
「なるほど、こうなっていたのですか…」
見ると、ファントが剣を弄んでいる。
「ファント。返しなさいよ!」
ルナが強めに言った。
ファントは怖気づくような表情もなかったが、意外とあっさり引き下がった。
「もちろん。確認したいことは済みましたから」
剣が返される。
――やっぱりやなヤツ!
心は読めないのに、ルナの感情がわかった気がした。




