#85 再度のゼルティア
「貴方たちには、再びゼルティアに行ってもらいます」
なんで――と言う前に回答が来た。
「"大司教に変装していた人が逃げ出した"との情報をローラスから伝達されたから。それ以外は何もないです」
話していて思った。
「――"社長"、なんだかこの人無愛想じゃないですか?」
「そう言ってくれるな。本人も改善しようと頑張ろうとしているんだから…」
「分かったら早く行ってください。移動費用はこちらで抑えますので」
フォローしてくれている人の言葉を遮る。
あれ、この感覚どこかで――
チラっと"社長"を見る。
やっぱり、類は友を呼ぶのか。
《ゼルティア航空268便に搭乗される人は、5番ゲートまでお越しください。お時間には、余裕を持って――》
アナウンスが、焦りを加速させる。
早く保安検査を済まさなければ…
《ビー!》
「ちょっとバッグの中確認するよ」
検査官にそう言われる。
「何引っかかってるのよ。早く!」
急かさないでください。
「薬物探知は――」
マジか!?
そんなの持ってないぞ。
すると、取り出したのはスキャナーらしきもの。
バッグに当てて、ポーンとなった。
「持ってないね。通っていいよ」
「ありがとうございます!」
薬物探知が早くて安心した。
「そう言えば、パスポートみたいなのいらないんだね」
先輩に言われ、確かにそうだと気付く。
「パスポートって何?」
ルナが知らないってことは…元々存在しないんだろうな。
向こうでも無くなれば、いちいち取得がーなんて言わないで済むのに。
そんな事を考えていた。
バタン!
「お客様。座席券の提示をお願いします」
「ちょっと白石君?」
いつの間にかそこに来ていた。
「すみません…」
頭を下げる。
「もしかして…疲れてるの?」
ルナまで心配している。
先輩は――完全に呆れてるな。
《まもなく、ゼルティア航空268便が発着します――》
体調管理があるとはいえ…限界はあるか。
飛行機でゆっくりしよう。
――まだこの時は、ゼルティアまでたった20分あれば着くことを忘れていたのだった。
当然、離陸したと思ったらすぐに着陸な訳で…
「全然休めなかった…」
「癒してあげようか?」
ルナ、どうやって…?
「普通にするのとチューするのとどっちが良い?私はチューする方が…」
突如、不味いことになる予感がした。
「普通でお願いします!」
すると、少しがっかりしたような素振りを見せた。
「分かったよ…腕出して」
腕に手を重ねた。
光が出る。
「本来直接的にしたかったんだけど…これでもいけるよね」
すると、少しづつ力が漲ってきた。
「神格者の特権だよ」
聞いてみると、力を分け与えているとのこと。
「無茶しないでよね。倒れたらどうなるのか分かんないんだから」
「OK…ありがとね」
空港を出ようとしていた。
ドアが開いて見えたのはゼルティアの景色。
戦闘があったとはいえ、いつも通りに戻っているようだ。
「いやーあの時はどうなるかと思ったけど…」
校舎を見ると、なにか込み上げてくる感情がある。
「もとに戻って、良かったな」
「これのどこが元に戻ってるって?」
後ろから怨みのこもった声が聞こえた。
「校舎に横穴!一階なんて地盤陥没状態よ。これも全部全部彼奴らが――」
迫力には鬼気迫るものがある、情報部に怨念たらたらのヴェルナ。
「そんな状態でよく授業できますね…」
「それは当たり前。我がゼルティアの科学力は世界一よ」
「なら早く直したらいいのに」
ルナが放った言葉が、ヴェルナの口火を切った。
「金欠なのよ!ただでさえ少なかった金が修繕費用に全部もっていかれるし、このままだと廃部よ!
必死だ。
ヒーローが報われないのはこっちもか――
「廃部でも別にいいんじゃないですか?平和なわけだし…」
ひょっこり出てきたのはガルド。
「おおガルド。久しぶり」
「話は聞いたぞ。大変なことになってるな…」
「お互い多忙だな」
二人揃ってため息をつく。
「せっかくの休みだし、遊びたかったな…」
今日はもともと休校日のはずなのだが、休日返上で協力してくれるようだ。
「あとで何か奢ってくれよ。お金持ちなんだろ?」
肩を叩いて言ってくるが、そんな事言われても「いや…一文無しに近いんだよね。給料が入らないから」
最早苦笑いしか出ない。
「こっちと一緒だな…もう退部しようかな」
二度目のため息。
「私は払ってた。今少し遅れてるだけ…」
いわゆる永久滞納中ですか。
「もう諦めてますから…早く行きませんか?」
ガルドからは、帰りたい意思が滲み出ていたのだった。




