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#82 福音ノ書、第ニ楽章

神。

ヒトの信仰心に宿る、形無き存在。

――だと思っていた。

「逃げ遅れてるのはざっと50人ちょっと!耐えればいけるよ!」

神相手にどうやって耐えろと…

そもそも、なんで信者を攻撃するんだよ。

神失格…いや、あいつのせいか?

レリーフの時より黒いし…

「アレって、本当に神だと思う?」

「そうだよね。なんか変な感じの…」

もしかして…

「何ボーッとしてるの。行くよ!」

先輩が動いた、瞬間――

ズドン

重圧で、動けなくなる。

リゼリアみたいな重力じゃない。

まさに、神の圧。

「なら私が…」

ルナが動く。

「神格、解除」

しかし、何も起こらない。

「アレ!?もう一回…」

結果は変わらなかった。

まさか、神格化まで封じられているのか!?

神の名は伊達ではない。

全てを"支配"している。

こんなの、どうしようも…

力が弱まる。

再び、信者を攻撃しようとしているのだ。

剣もない――

守る手段も、攻撃の手段も無くなった。

あとできるのは…整理誘導だけ。

幸い、40人ほどに減っている。

高校で培った力を見せてやる!

「落ち着いてゆっくり進んでください!大丈夫です。きっと…守りますから」

守ってみせる。

何としてでも…

そこで、頭に一つの疑念が浮かぶ。

…本当に全てなのか?

攻撃魔法と、生活魔法は試した。

回復魔法は?

結果…使用可能。

回復魔法は使える!

流石は回復魔法の守護者!

こんな状況でも使えるとは、やっぱりちゃんとした神だな。

「先輩!ルナ!回復魔法は使えます!」

「使えるっても、私たち回復魔法(ヒーリング)しか使えないんだよ!」

ああ、制約がのしかかって襲うのが目に見える!

もっと真面目に勉強しとけば…

「回復魔法:神聖光弾(レーザー)!」

憂いていた自分に青天の霹靂!

神は少し避けるが、右脇腹に命中。

「ルナ!?」

なんで使えて…

「こっそり練習してたんだよ。いざって時のために…

「そうじゃなくて、信仰対象は!?」

「それは君だよ、マイパートナー!」

そんなめちゃくちゃな理屈…

しかし、難なく打てているのが事実。

「まだまだ行くよ!」

左手、右足、更に頭…

当たるたびに、存在が揺らぐ。

「やっぱり、本当の神じゃないね」

遂に確信した。

「きっと、ただの事象なんでしょ?アレの」

所詮は――レイズの想像の産物。

揺らいだり、見た目が少し違うのも当たり前。

「偶像でこれとか…本来どんだけ強いのやら」

感心してしまった。

そうだ。カノンは!?

少し離れた所、段の上に立って、何かしようとしている。

カノンを攻撃しないのは…アレに従ってるからなのか?

この期に及んで、まだ何を…

「もうすぐ避難終わる!」

あと少しだけ…

その時、神の魔の手が伸びる。

――逃げ遅れ、最後の一人へ。

「白石君!どうにかして!」

どうしろって…

その間にも、どんどん近づく。

当たるだけで即死級。回復させるタイミングは――ない。

当てるわけにいかない。

でも、どうすれば止められる?

剣は…

「ええい!ヤケクソだ!」

必死に祈る。

どうか剣が出現しますように…

「白石君!?何してるのよ!」

先輩がどんなに言おうがお構いなし。

とんでもない願いだが…願うものは救われる。

そうだろ――

なぁ、中の――きっと、神格者なんだろ。

キィーンと高い音を鳴らして、その場に出現する。

そのまま…止める。

スキルを一切使っていない分、神には止められない。

「剣がなんでここに!?」

願ったら叶った、なんて言おうものなら困惑必至だ。

「それは後で話します!今はこの状況をどうにかしましょう」

小さく頷き、耐えを行う。

神の力は強い。

「早く逃げて!」

後ろの人を先に逃がす。

「あと少しだけ…」

拮抗、硬直。

「ありがとう!今まで止めてくれて!」

カノンの声が響く。

「元ある場所へ還れ!神術、展開!」

真っ白な光に空間ごと包まれる。

法皇ノ神歌(ゴッド・レイド)!」

槍が光り、神よりも眩しい源となる。

そして、想像の神は吸い込まれるように――消えた。

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