#78 MODulatIoN
「白石さん、来てくださったんですね!」
カノンに話しかけられた。って…
「それは君が呼んだから…」
「私、会いに行きましたっけ?」
コレは駄目だ。とんでもない忘れよう。
「ほら、早く座って」
来賓席に案内される。
「その忘れグセ…どうにかしなよ」
ルナが見かねたように言う。
…神格者かつスキルの補助がある人には言われたくないけど。
「本当に行ってないんです!」
…じゃああれは誰?
「私は着替えがあるのでまた後で会いましょう」
大司教が戴冠式を執り行うしきたりで、今回も漏れずそうなるようだ。
開いている"現法皇席"が、少し寂しさを醸し出している。
ファンファーレが鳴り響く。
トランペットに少し近い音色。
明るい音なのは万国共通なんだな。
そして出てきたカノンの服装は…荘厳そのもの。
遂に法皇になる事を表しているかのように。
…そんな事思って、親父じゃないんだから。
「全能なる神の御名において、この者を法皇として戴冠する。神と信者に一身に尽くす事を誓いますか?」
「はい。誓います」
カノンが言い、大司教の手で戴冠される。
法皇として頑張ってくれよ…
そう思っていた。
突如として、光の壁が出現する。
け、結界…?
まさか…騙したのか!?
「何をしているんですか!?ここは神の御前ですよ!」
カノンはこの事を知らない?
「神の御前だからこそ、ですよ。このような場に異教徒がいては…いけませんね」
さては、犯人は大司教か。
「牢にでも放り込んでおきなさい」
部下に指示を出した、その時には…ルナの我慢は限界を迎えていた。
バリン!
結界が、悲鳴をあげて壊れる。
「こんなので、神格者でもある私を止められると思ってるの?」
さすが神格者!このまま倒してくれ。
そう思ったが、そうは問屋が卸さないようだ。
「そうですよね。忌々しい神格者の貴方なら、簡単に破ると思ってましたよ。しかし、この場で神格者だと明かすと…」
その場に居た人全ての視線がルナに向く。
「"禁忌"ですね。犯した人は…」
「捕まえろ!」
攻撃は一斉に。
神聖なはずの場所が、力だけの乱闘場へと変化してしまった。
「神聖光弾!」
「おとなしくしろ!」
ルナも一般人には攻撃出来ない。
「背徳者を捕まえたぞ!」
歓声が沸き起こる。
ああ…まずい。
「こいつらは裁判にかけて、有罪なら死をもって償わせろ!」
声のボリュームが、より一層増した。
「魔女裁判…?」
歴史の授業でしか聞かない言葉だと思っていた。
って…魔"女"――
「男だから回避出来ないかな…」
「バカ!こんな時に冗談言わないで!」
先輩からお叱りを受ける。
「裁判で、せいぜい無実を証明する事ですね。結界はもう分かりきってますか!」
勝ちを確信し、完全に煽りに来ている。
「私たちになんの恨みがあって…」
先輩が言った時、笑っていた目が鋭く変わった。
「忘れたとは言わせませんよ。あの時受けた屈辱を…味わってもらいますからね」
感じれたのは――深い憎しみ。
「最期の時まで、牢屋で過ごしていなさい」
連行される。
「離せー!」
必死の抵抗も虚しく、力になされるままだった。




