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#7 絶望、そして希望

此花先輩が、消えた。

“社長”に連絡を入れたが、返ってきたのは短い言葉だけだった。

――しばらくは向かえない。現地で待機するように

ここまで来るのに四日。

迎えが来るのも、同じくらいかかるだろう。

……遅い。

あまりにも。


足りなかった。

あと少し、手を伸ばしていれば――

届いたかもしれないのに。

そんな意味のない考えが、頭の中をぐるぐると回る。

「……はぁ」

息が重い。

もう、疲れた。



街には、まばらに明かりが灯っていた。

静かだ。

下を向いたまま歩いていると、

足先に、何かが当たった。

靴だ。

――片方だけ。

転がるように、そこにあった。

汚れている。

持ち主は、もう履くことができないのだろう。

……きっと、この街の“行方不明者”の一人だ。

もう、驚きもしなかった。

そのまま通り過ぎようとして――

ふと、違和感に気づく。

淡い、水色の光。

「……魔力?」

靴のそばに、わずかに残っている。

次の瞬間。

その魔力が、ふっと浮かび上がり――

自分の体に、吸い込まれた。

「っ!?」

頭の奥が、じんと熱くなる。

視界の端に、文字が浮かんだ。


【解析結果】


対象:生活魔法:時空跳躍(テレポート)


結果:使用痕跡あり

行き先:不明



「テレポート……?」

その言葉を理解した瞬間、

胸の奥に、火が灯る。

――追える。

まだ、間に合うかもしれない。

考えるより先に、体が動いた。

走る。

先輩が消えた、あの場所へ。



「ここだ……!」

息を切らしながら、叫ぶ。

情報確認(パラメーターチェック)!」

視界が揺れる。



【解析結果】

対象:同一の魔法反応を検出

行き先:不明

追加情報:魔力痕跡を可視化します



次の瞬間。

地面の上に、淡い光の線が浮かび上がった。

一直線に、街の外へと続いている。

「……行ける」

迷いはなかった。

その光を追って、走り出す。

どれだけ遠くてもいい。

どれだけ危険でもいい。

――追いつく。

その一心で。

気づけば、地平線の向こうから太陽が昇り始めていた。


――――――――――――――――――――――――




「……ん……」

意識が浮かび上がる。

ぼんやりとした視界。

冷たい空気。

「……ここは……?」

ゆっくりと体を起こそうとした、その瞬間。

ジャリッ――

金属が擦れる音。

「……っ」

腕を見る。

そこには、無骨な枷がはめられていた。

鈍く光る鉄。

動かそうとすると、重い。

それだけじゃない。

(……魔力が、流れない?)

違和感。

内側にあるはずの“何か”が、押さえつけられている。

「……なるほどね」

小さく息を吐く。

(捕まった、ってことか)

状況は最悪。

だけど――

(まだ、終わりじゃない)

そのとき。

コツ、コツ、と足音が近づいてきた。

(……誰か来た)

咄嗟に、目を閉じる。

呼吸を浅くする。

意識を落とした“フリ”をする。

扉が開く音。

誰かが入ってくる気配。

「やはり、戦力の分断は正しかったようだな」

(……女の人?)

落ち着いた声。

感情の起伏がほとんどない。

「剣を使う方は、こちらの存在に気づいたようだが……」

(白石君……!)

胸がわずかに跳ねる。

「だが、あの程度の実力では問題にならん」

淡々とした評価。

(……言ってくれるじゃん)

内心で苦笑する。

「それよりも――準備を進める。時間は多くない」

準備?

何の?

思考を巡らせる。

足音が遠ざかる。

扉が閉まる音。

静寂。

「……行ったか」

ゆっくりと目を開ける。

枷を見る。

引く。

びくともしない。

(物理的にも、魔力的にもロック……ね)

簡単には外れない。

「……ふーん」

周囲を見渡す。

壁、床、構造。

逃げ道。

使えそうなもの。

一つ一つ、確認していく。

(白石君なら、多分来る)

あの性格だ。

放っておくはずがない。

でも――

「それまで待つつもりは、ないかな」

小さく笑う。

(せっかく異世界に来たんだし、ピンチも、楽しまないとね)

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