#75 破
――スパイ任務、3日目。
今日は教団の内側に潜入。
手がかりや情報は無いため、とにかく歩き回る。
盗聴器とか仕掛けれたら良いんだけど…
あいにく、そんなの持ってない。
持っているのは、自分の耳のみだ。
と、言うことで…
「"社長"ーどうにかならないんですか?」
困った時の"社長"頼み。
『スキルを使って探せ。頑張れ』
そう言って、切れた。
使えないんだって…
でも、せめて今日は、何か収穫を…
ドアを開けると、そこには――
「…なんだコレ」
闇金とか、証拠とかではない。
それはとても大きく、壁に描かれていた。
「白石さん!そこには――」
カノンが血相を変えて走ってきた。
「これって何?」
「それは…レリーフです。とにかく、そこをどいてください」
「あそこなんの場所?」
「あそこは…信者でも普段入ってはいけないとされる、神聖な場所です。戴冠式が行われるとか…とにかく、そういう所もあるので勝手に歩き回らないでくださいね」
…そういう所が一番怪しいんだが、そんな事を言うとまた怒られてしまいそうだ。
素直に従おう。
――――――――――――――――――――――――
スキル使えないのイヤなんだけど。
周りの魔力も取らず自己完結したらバレないかな?
なんでこんなに面倒にしたの…
あの二人――
「またこんなの作ってるし…もう神聖魔法に名前変えたほうがいいんじゃないの?」
「神の名の下、どんな事も許される。力を手に入れ、信仰することを忘れた信者はどうなるんだろう」
「知的好奇心ね。性格わる――」
「力を上手く使えないモノは破滅して終わり!素晴らしいですお兄様!」
「このブラコンとシスコンども…」
「さすが!よく分かってる」
どうしてコイツらは2人で一つの神格者なのよ。
「回復魔法がビームまで撃てるって、趣旨から外れすぎ――」
「ビームではなく、神聖光弾」
どっちもいっしょ。
それって私にも使えるのかな?
信仰対象…パートナーでいいか。
「回復魔法:神聖光弾!」
光が集まる。が――
消えた。
「そう簡単には行かないよね…」
――――――――――――――――――――――――
――4日目。
今日は息抜き。
秋の紅葉が美しい山に、散歩に行っている。
「白石君、元気だね…」
「先輩が疲れすぎているだけでは?」
ほぼ無限の体力を持つルナと、運動不足の先輩。
「こんなに体力落ちてるなんて…体調管理使いっぱなしで分かんなかった…」
「体力が増えるわけじゃないからね」
神格者の力で、体力が無限近く増えている。
「たまにはこういう事も楽しいですね」
もう一人、カノンである。
回復魔法を延々と自分に放ち続けるチートぎみた事をやっている。
「回復魔法は他とは違って、魔力切れの心配をしなくていいんだよね」
とは言え、よほどの信仰心がなければ、常時発動は難しいだろう。
「普段街から出ないもので…あまり外で運動してこなかったんです」
箱入り娘か?
いや、たぶん暗殺される事を防ぐためだな。
どこで誰が狙ってくるか分からない状況、そりゃ歩かせないのが普通だよな――
ま、僕の側だと安心だと法皇さんが思ってくれているからできたことだ。
信頼って大切だな。
「ちょっと待って白石君。もう限界…」
先輩は完全にバテてしまっている。
「仕方ない…今なら誰も見ていないので、今だけなら使っていいですよ」
その直後に、体調管理を発動。
「生き返った…」
癒されたような顔。
普段どれだけ頼ってたのかよく分かる。
「ていうか、あの時一瞬で切るって言ってたような…」
「気のせいじゃない?」
「私の記憶力をなめないほうがいいよ」
それはそうかも…?
そうこうしている内に、山頂に到着。
標高300メートルもないんじゃないか?この山。
そして、何より真っ昼間。
朝焼けや夕焼けの絶景もなく、平凡な景色だが…
「きれい…」
カノンには響いたようだ。
なら良かった。
道中特に変なヤツも見当たらなかったし、大成功だろう。
「少ししたら下るよ」
「もうちょっと休ませてよー」
結局、一時間ほど滞在して下山。
すると、カノンが何かを言ってきた。
「私、白石さん達と一緒に旅がしたいです!」
予想外の言葉に耳を疑う。
「普段見なかった景色が見れたの、楽しかったです。体力には自身があるので、足手まといにはならない…はずです!」
熱弁しているが、僕は連れていけない。
法皇さんとの約束が――
「ねぇ、何アレ?」
ルナが刺した場所。
何やら、人だかりができている。
「すみません。何があったんですか?」
すると、一人が新聞を渡した。
「これだよこれ!」
…
"法皇様のご容態が急変"
その文字に、言葉を失う。
「法皇様!」
カノンが一心不乱に走り出す。
「ちょっと待ってよ!」




