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#72 カルテット

「助かりました〜ありがとうございます」

少し砕けた声で言うのは、金髪の少しウェーブがかかった女の子。

「申し遅れました。法皇様の命で迎えに来ました。カノンと言います」

見た目的には、カノン…?

「白石さん…でしたっけ?これから、皆様のガイドを務めることになります。よろしくお願いします」

深々と頭を下げている。

その姿は、とても悪い人では無さそうだが…

「早い話、監視人を付けられた感じかな?」

たぶん、そうなんだろうな…

とは言え、ガイドが付くのは悪くない。

「こちらこそ、よろしく。僕は白石 湊で、こっちが――」

「伺っています。此花さんと…ルナさんでしたよね!」

「うん、あってるよ」

「良かったです。人の名前を覚えるのが苦手なもので…」

やっぱり、悪人には見えない。 

なんとか敬語を使おうと、努力してくれているのだろうし――

「さっそく向かいましょう!歩けばすぐです」

「すぐって…一面畑だけど」

「歩かないと進めませんよ!」



「え…と、ここを曲がって…?」

「なにこんな所で迷ってんのさ!」

一面の畑で、どうやって迷うというのだ。

「完全に迷子じゃない!」

先輩も必死だ。

「いや、迷ってないはずです。きっと神様が教えて下さります」

それってどうなの…

「たぶんこっちです。いきましょう!」

一歩歩んだ、その瞬間――

「ウッ」

視界から消える。

変な声とともに、コケたのだ。

なにしてるんだか…

すると、起き上がって回復魔法(ヒーリング)を発動。

完全に慣れた手つきである。

「これって上位回復(グレートヒール)じゃない!」

ルナが興奮気味に言う。

名前からして凄そうだが、僕には何が違うのか分からなかった。

「昔からよく転ぶもので…授けていただいたんです」

宗教観があまり良く分からないが――異世界だものな。

「でも、思い出しました。確かにこっちです!」

本当かな…

「ルナちゃん。さっきの上位回復(グレートヒール)ってなんなの?」

そう。僕も気になっていた。

「アレはね、回復魔法の中でも使える人が少ない、珍しいモノなんだけど…使用者が使える事に気が付かないパターンが多いって、ユークレル兄妹がため息ついてたんだよね」

ユークレル兄妹って、簡易魔法(アクアイルド)を作った…

「ほら、話聞いたらわかると思うけど…あの二人、なんでも隠したがるんだよね。それで、回復魔法のほとんどを神聖化しちゃったんだ。つまり、信仰心が必要ってこと」

はぁ!?

「信仰心って言っても、別に神様限定じゃないよ。"自分の信じてるモノの力を借りてる"って言ったほうがいいかな」

ああ、そういうことか。

「やめたらいいじゃんって言ったら、"ロマンってものがあるの!"なんて妹のほうに言われちゃったんだよね。"お兄様が作られた崇高なシステムなんだから!"だって」

あ、そういうタイプの――



街が地平線の先に見えた時には、カノンは跳び上がって喜んでいた。

だいぶ時間も食わされたが…

助かったのも事実。

「ありがとね」

「いえいえ、当然のことをしたまでですよ〜」

口ではそんな事言っていても、嬉しそうなのが丸わかりだった。

顔に出てるんだよな。

素直な良い子だ。

「このあとは、あそこの…法皇さまがいらっしゃる所へ向かってくださいね」

「OK!」

どこから見ても分かりそうな、高い塔が立っている。

「さようなら〜神様の加護がありますように!」

離れていく姿を見て、悪い人じゃないとの想像が確信に変わった。

「普通の子だったよね」

変な所なんてなかった。

「でも、そういうのが厄介な事を起こしてる事もあるからね…」

吟味していこう。

それが今回の仕事だ。

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