#67 花が告げるモノ
『ご来場の皆様へお伝えします。ご予約された席以外の確保はおやめ下さい。この花火大会は、日没後に――』
ああ、遅すぎる。
「まだ来ないのか?一体何を…」
「貴方のせいでもあるんですよ」
分かってるよシフリス…
「連絡手段もない上に、復帰してるかどうかも分からないなんて…と言うかどうやって合わせるんです?」
言葉の意味を、一瞬理解できなかった。
「何のことだ?」
「だから、どうやって白石さんは私達のところへ来るんですか?向こうは場所も知らないのに」
「あ…確かにな」
盲点だった。
…こういうのはどうだろう。
会場マップを取り出し、指をさす。
入口は2箇所。
北口と南口で、彼奴らが向かうのはきっと――
南口だ。
「何故言い切れるんですか?」
「彼奴らは恐らく公共交通機関…電車でやってくる。その時に想定されるルートだと、駅に近いのは南口だ。あと…」
「あと…?」
「勘だ」
自信たっぷりなフェイタルと、シフリスの差は激しいものだった。
「勘ですか…それではどうにもなりませんよ」
「いや、行ける」
「あの2人は互いに会おうとしている。運命はきっと応えてくれるはずだ」
「感情論ですか。珍しいですね」
――そうだな。
経験はないからよく分からないが、きっと理屈以外の何かが恋愛には必要なんだろう。
「そういう事で行ってくる。後は任せた」
――――――――――――――――――――――――
駅には人、人、人。何処を向いても人だらけだった。
都内でも有数の大会、会えるのか…?
いや、会ってやる。
強い決意。
構内には常に、ピロン!と電子決済の音が響いていた。
駅から会場はさほど遠くない。
いつもなら、歩いてすぐの距離。
そう、いつもなら。
人並みに飲まれ、歩いている方向が正しいのかも分からない。
「入るよ。もう受け付け混んでるし…」
日没後から始まる花火大会に、日没直前に人が集まるのは当然のこと。
「そんな事言ってられません。早く…」
…会いたい。
どんな結末でもいいから、せめて――
「ここって南口?こっちの方が近いの?」
ここで、ルナの居場所が分からないということに気が付く。
「ああそうだった!場所知らない!」
「はぁ!?なにしてんのよ!」
そこまで考えてなかった…
「探せ!全てをそこに――」
そんな事言ってる場合じゃないです松尾先輩。
「どうすれば…」
そんな状態の僕に言葉が飛び込む。
「やはり、白石は分かりやすいな」
お前は…フェイタル!
「あの時はよくも…」
「貴様が思い出さないからだ」
この…
「ルナはどこにいるのよ。なにかしてないでしょうね?」
「そのためにここに来たんだ。早く来い」
そして、歩き出した。
「会場は広い。早くしないと間に合わなくなるぞ」
――――――――――――――――――――――――
『残り、5分となりました。通路付近は大変混み合いますので――』
「遅いですね…」
そっか…今まで心配してくれてたんだ。
「もういいよ、シフリス。今まで私のワガママに付き合ってくれて…ありがと」
明るく装う。
それが、運命なら仕方がない。
ファルトの力も、もうとっくに切れてる。
神格者として、世界で起きることを、ありのままに記録する。
それが私の――憶奏王としての務め。
今までも例外なく、色んな人を送ってきた。
なのに…なんでだろう。
いなくなったわけでもない。
そこにいるのに…
「なんでこんなに…悲しくなるの…?」
「ルナさん…」
誰か、教えてよ。
誰か…
それって…君が優しいからだと思うよ。
白石…君?
「ただいま」
私に向かって、にっこりと笑うその姿は――
元の、パートナーだった。
泣きかけの私が言う言葉は、開幕を告げるアナウンスにかき消される。
それでも――きっと、伝わっている。
ヒュー…
後ろで、花火が上がる。
「待っていてくれて、ありがとう」
花火の音は、新たな始まりを告げる。




