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#66 古い空気 新しい風

どんどん長くなる。

「なかなか起きないねー」

かれこれ30分くらい経ったかな?

「長いこと起きなかったら、病院に連れて行く方がいいらしいですけど」

スマホにはそう書かれている。

「病院送りかー」

「やったら二度と会えなくなるもんね」

「会う時間が消えます」

まだ待つ?

もうすぐ4時。

移動に1時間かかるとして…

もう時間がないんだよね。

せっかくのいい話だったのに。

名残惜しい…

その時、少しだけ手が動いた。

――そんな気がした。

「今動いた?」

「自分にもそう見えました」

きっとまだ大丈夫だ。

早く起きて…


「戻ってきた…?」

やった!ついに起きた!

「こうしてる場合じゃないの。早く…」

慌てる葵に対して、白石は冷静だった。

「分かってます。早く向かいましょう」

そこで、葵は気が付く。

「白石君…記憶戻って――」

「迷惑かけてすみませんでした」

ならもう話は早い。

とっとと再開させて、万事ハッピーエンドに持  っていくだけ――

「ほら、もう行きましょう。お金は僕が…」

お、出してくれるの?

ならお言葉に甘えて――

「分かった分かった。松尾君はもう帰っていいよ」

もう仕事は終わったからね。

「そんな訳にはいきませんよ。なんかいい話っぽいですし、自分も最後まで見たいです」

おっと、これは予想外。

白石君は「松尾先輩の分も自分が――?」なんて驚いているが、そんなの知らない。

「鍵閉めた?」

「もちろんです。行きましょう」


――――――――――――――――――――――――


昔から、人に大事にされた記憶がない。

「気味が悪い…」

「なんでここにいるのよ」

忌み子のように蔑まれ、ぞんざいな扱いを受けてきた。

「お前みたいなのがいるから――」

「目合わせるなって。関わるとロクな事にならない」

「化け物……」

私は何もしてないのに、離れていなくなる。

手を掴んでも、霧のように消える。

「お前に原因がある」

「そんな事で周りを困らせるな」

私が生まれたのは、間違いだったの?

「あれは、人間じゃない」

こんなのでも、何か役に…

「お前が来てから、全部が狂った」

古傷になった言葉が、新しく痛み続ける。

私がの事が嫌いなの?

誰かが嘲笑う。

――キエロ。

どうして…

もう、抜け出せない。

お願い、助けて――

「誰か…」

目が覚める。

そして、移動していることに気が付く。

「…今のは…夢?」

フェイタルさんが背負って…

「お、起きたか…勝手に動かせてもらってるぞ。人通りが多い場所に…ずっと寝てるのも危険だ」

私より全然小さいのに…

体格差で考えると、ちょっと大きい二年生が高校生を持つようなもの。

「大変じゃないんですか…?」

「そんな事…ない」

息を少し切らして言って、説得力は皆無だが…

シフリスにとっては充分だった。

「…ありがとう…ございます」

「そんな堅苦しくなくても…いいんだぞ。そろそろ歩けるか?」

「まだ、無理です…」

本当はもう歩けるけど、もう少しだけ…

このままでいたい。



想像していたより距離は近くて、すぐに着いた。

「背負われてどうしたのさ」

ルナさん、もう少し空気を――

「いいな…」

その言葉が、本心であることに気が付く。

「あの話、どうなったんですか?」

ルナに悟られないよう、小声で聞く。

「それが…話すのが面倒で殴ったら気を失って…」

「バカですか?」

「その後即座に呼び戻されたから、向こうの状況がよく分からない」

「何してるんです…これじゃどうしようもないじゃないですか」

「いや、向こうがどうにかする…たぶん」

…なんでこの人なんだろう。

「なにか?」

「いいえ、なんでもありません」

「まあ信じよう。彼らを」


――――――――――――――――――――――――


「チケットどうするの?入場できないよ」

「買いました。当日券で一番安いのを三人分。これは部費でお願いします」

流石に自分だけじゃ無謀。

ここは一つ、「部長。アドバイスお願いします!」

「断ったのは君でしょ――なんて言えないもんね。しょーがないな〜」

よかった。教えてくれるようだ。

「まずは謝罪。しっかり謝れ。わざわざ来てくれたのに突っぱねるなんて最低だからね」

最初に謝罪。

「その後に自分の感情を少し誇張してでも伝える事。ここで全て決まるよ」

感情を言う。

「後はアドリブ。何が起きるのか分からないのが恋愛だからね」

あ、へー。

「そろそろ着いたようですよ。降りましょう」

松尾先輩の声がした。

――どこ?

流石の満員電車。

「そこにいるんだね?じゃあ降りようか」

たぶんみんなここだと思うし。

「待ってろよ――」

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