#63 宿命
「どうやって記憶を戻すか…」
時刻は午後3時をとっくに回っている。
開催まで――後3時間。
「部長が記憶を取り戻したのはどうやったんですか?」
「それだ!」
部長が取り出したのは…メモのようだ。
「これには白石君とルナの恋愛記も…」
ページをめくる。
「あった。思い出して!」
ページを開いた状態で押し付ける。
「先輩、見えません!」
少し遠ざけて見ている。
「え…これ僕がやったんですか?」
「そうだよ!全部君が…」
「そんなわけないじゃないですかー僕全然モテないんですよ」
笑い飛ばす。
「ん~~!」
部長は何とも言えない声を出して応戦するが…
無駄だ。
「題材にして書くなら先に言ってくださいよ。"僕が書いた"なんて思われたらたまったもんじゃないです」
「ほとんど君のエッセイなの!」
試合は白熱してきた。
ここは攻め時か?
「じゃあ自分帰っていいですか?」
正味関係ない気してきたし…
「ダメ。君にもまだ…そうだ!思いを伝えるのはどうだろう」
「でも今あの人たちいないですよね」
「そうだったーどうしよ…」
「はぁ…帰りたい」
…
「そうだ。直接会いに行かせたら良いんだ!」
「また会わなきゃ行けないんですか?いくらなんでも…」
「そんな事言うな!男だろーが」
男はちょっと関係ない気がするけど…
「旅費は出す。必要経費じゃー!」
「どうせ会場まででしょう…自分は帰りますよ」
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何のために、ここまで来たんだろう。
せっかく会いに来たのに。
記憶がないなんて…
私のスキルでも、失われた記憶を呼び返す事は出来ない。
無駄…だった?
「ルナさん!」
ガァーン!
何が――
「電柱にぶつかるなんてどうかしてますよ。正気を保ってください」
「保っていられると思う?この状況で」
「違います。ひとまず落ち着いてください」
「やっと追いついた…」
フェイタルが息を切らして言う。
そうか…結構走って
「なんでわざわざ駅に行くんだ。もっとマシなところに…」
「帰る」
「は?」
「帰るって言ってんの!」
「誰が金出してると思って…」
怒りと言うより呆れである。
「…私の予定だけでも済ましてからにしろ。それまでは帰さん」
「予定って何ですか?」
「花火だ。予約までしたんだ」
言っても一番安いとこだけどな。
「それだけ済まさせろ」
「そう言えば、あの方どこへ行ったんでしょうか?」
松尾か?
彼はきっと――白石と一緒だろう。
運があれば、な。
自分にも呆れる。
この期に及んでなお、運命を信じるとはな…




