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#62 存在 記憶

「たぶんこのあたりのはず…」

コイツ…

「ホントに会ってるの…?」

「いやー1回しか来たことないですから…」

さっきまでのあの自信はなんだったんだ。

「このあたりのはずです!」

「確証が何処から来てるのか分かりません…」

さっきから行っている最終手段"表札覗き"

白石 と書いていたら当たりだが…

見当たらない家があったり同性がいたら終わりだ。

その時は全部コイツのせいに…

「ああ、ありました。この家です!」

本当か…?

三人で疑いの目を向ける。

「なんですか?合ってるはずですよ。たぶん…」

"たぶん"かよ。

「じゃあ君が呼んでね」

「え…じゃあちょっと隠れといて」

「なんでさ?」

「いきなりきたら混乱すると思うから…」


ピーンポーン

馴染みのある音がなった。

「はーい」

続いて、あの時の声。

一方的に押し付けた、どこか否めない若い…

ガチャ

「ああ、松尾先輩。僕になんの用ですか?」

彼奴松尾って名前だったのか。

いや、あの姿はまさしく…

私の夫(マイパートナー)!」

ちょ、あいつ…

「君の事を探している人を帰りの新幹線で見つけてね。わざわざ連れてきたってこと」

今思えば、どんな偶然だよ。

「あ、そうですか。でも…」

その顔。

"不安が当たりませんように…"

その願いは惜しくも、砕け散ることになった。

「その方…どこかで、会いましたっけ?」

「なっ――!」

絶句。

「そんな変な冗談つかないでよ――」

ルナが笑って言う。

まだ答えに至ってないようだ。

「これは…」

シフリスが小声で言う。

「記憶をなくしている…?」

ああ、たぶんな。

最悪だ…

「もしかして、人違いじゃないですか?」

ここでルナは答えを知る。

「そんな事ない!」

まるで、自分に言い聞かせるように。

「私だよ!ルナ!貴方の婚…」

言葉は、続かなかった。

星巡記憶(エターニティメモリー)、心を読む能力。

真実を、知ってしまったから。

この人は本当に…

忘れている。

いや、記憶そのものが消えている。

"自分の身体のダメージも無視出来ない"…

ルナはあの言葉を、肉体的なダメージを指す言葉だと思い込んでいた。

本当は、"心体" ココロへのダメージ。

「そんな事…!」

少し暗がっていた声。

「ねえ…思い出してよ――」

「何のことか分かりませんが…」

――帰っていただけませんか?

この言葉が、ルナの心を抉る。

「近所迷惑というのもありますし、周囲から変な目で見られますので…」

異世界のあの、どこか勇ましい姿とは違う…

完全な別人。

「そんなの…バカ!もう知らない!」

「あ、ルナさん!」

走り出して、どこかへ行ってしまう。

「待って下さい――」

シフリスも追いかけて、三人だけになった。

…正直ルナのことはどうでもいいが、それとは別の感情が湧く。

怒り。

あの時私に"救い"を必死に訴えておいて…

あまりにも――身勝手だ。

「松尾さん。今日までありがとうございました」

簡単に例を言い、立ち去る。

あの顔はもう…見たくもない。



――――――――――――――――――――――――


「これでよかったんでしょうか…」

なんだか凄く必死そうだったが…

「どこがで会ったこと、あったっけ…?」

「ま、記憶に無いなら良いけど」

自分の役割は終わった。

「松尾さん。話のネタができなくて…」

あ、そう言えばあの旅行記…

「一応聞いてみるか…自分もあんまり著作権とか詳しくないからな…」

スマホを取り出し、部長へと電話をかける。

「此花部長ー誰かの旅行記を書くのってどうなんですか?」

『本人が了承してるならいいけど…どんな人なの?』

「白石君の事を必死に探してた女性二人と、小さな高校生でした」

『ガタン…』

聞こえてきたのは、落とした音。

「部長?大丈夫ですか?」

『白石君に代わって…』

「あ、はい」

「白石君…部長から」

スマホを手渡す。

「はい。今かわりまし…」

『このバカーー!!』

周囲に漏れる怒号。

いつスピーカーモードにしたっけ?

言われた白石君も、きょとんと…

「な、なんですかいきなり?」

『せっかく会いに来てくれたんだから、答えなさいよ!』

「答えるって、何をですか?」

『んーー!早く追っかけろ!』

「まだ勉強…」

『今すぐ!!』

「でも、どこへ行ったか…」

『聞き出せー!』

プツン

通話が途切れてしまったようだ。

「まあ、行きそうな場所は教えてあげるよ。花火大会の会場。ホントに行くどうか分からないけどね」

一体どんな物語を歩んだのやら…

「でも、まだ開催時刻より全然早いですよね」

――確かにそうだな。

もう一回かけるか。

「部長ーまだ早いので手がかりがありません」

『じゃあ私がそっちに行く。そこで待っていて』

通話が切れる。

「あの…白石君。部長が来る事になったわ」

少し気まずそうに言う。

もちろん、白石君も…


13時頃に、部長が着いた。

「なんで追い返したのさ!」

白石君は早速、お叱りを受けている。

「"記憶にございません"を言い続けた!?どこかの政治家じゃないんだから!」

それとはちょっとニュアンスが違うような気もするけど…

まぁ、自分には関係ない。

関係…

「ちょっと、松尾君もなにか言ってよ!」

うーわ、最悪な振り方。

咳払いして言う。

「なんでそうなったのかは知らないし、君に何があったか分からないけど、彼女達結構遠いところから来てたみたいだよ。しかも必死に」

とても記憶違いの人に向ける感情じゃなかったし…

「そんな事行ったって、会ったことない人にどう話をすればいいんですか?先輩達ちょっと変ですよ」

まあ、本人の意思を尊重したいけど…

まだまだ厳しそうだ。

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