#5 再会
遠い。
とにかく遠い。
同じ景色が、延々と続く。
歩いても歩いても、変わらない。
一つ目の目的地に着くまで、二日もかかった。
それでも、不思議と疲れは少ない。
おそらく――スキル《体調管理》のおかげだろう。
便利だけど、ちょっと怖い。
道中、魔物には一度も遭遇しなかった。
……それどころか、人影すらない。
静かすぎる。
(この近くの街も、まさか……)
――やめよう。
考えても仕方ない。
街は、思っていたよりずっと賑やかだった。
人の声。笑い声。
家々には飾りが施され、どこか祭りのような雰囲気すらある。
(……よかった)
思わず、肩の力が抜けた。
“社長”の話では、この街の近くに“異世界から来た人”がいるらしい。
――此花先輩かもしれない。
そう思うだけで、足が軽くなる。
まずは聞き込みだ。
「その人か? ああ、たまに見かけるな」
「女の人たちと楽しそうに話してるよ」
「うちの子の遊び相手にもなってくれてねぇ」
……特徴は一致してる気がする。
でも、居場所は分からない。
(あと一歩なんだけどな……)
「お兄さん、お兄さん」
後ろから声をかけられた。
振り向くと、小さな子どもが木を指さしている。
「あれ、とって」
見ると、風船が枝に引っかかっていた。
「いいよ」
軽くジャンプして、それを取る。
「ありがとう!」
元気に笑う。
……もしかして。
「ねえ、このお姉ちゃんって――」
「さっき、公園にいたよ!」
即答だった。
(でかした)
礼を言って、駆け出す。
胸が高鳴る。
やっと――再会できる。
公園に着いた。
そこにいたのは――
此花先輩と、楽しそうに恋バナをしている女性たちだった。
……。
(いや、何してんですかこの人)
「おおー、白石君じゃないか」
何がおおーだ。
「何してるんですか」
「何って、ネタ集めに決まっているでしょう?」
「ネタ集め?」
「せっかく異世界に来たんだから、ここでしか聞けない恋愛事情を調べてたの」
……元気そうだな、この人。
心配していた自分が、急にバカらしくなる。
「お姉ちゃん、また遊ぼうねー!」
子どもたちに見送られながら、僕たちは街を出た。
“社長”に言われた通り、次の目的地へ向かうためだ。
――未練たらたらの此花先輩を引き連れて。
「もっと話聞きたかったのにー」
「遊びに来たわけじゃないんですよ」
「えー」
本当に分かってるのか、この人。
「どこに行くのさ」
「元の世界に帰る手がかりを探します」
「帰れるの? やった!」
「決まったわけじゃありません」
「ええー」
単純だ。
「今、単純って思ったでしょ?」
なぜバレた。
「女はね、人の心が分かるんですよ」
なぜか誇らしげだ。
思わず、笑ってしまう。
それにつられて、此花先輩も笑った。
――退屈だったはずの旅路が、
少しだけ、楽しいものに変わった気がした。
7時に投稿するようにします
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