#53 矛と盾
風邪が治りません。文も少し短めです。
「分かった。君がどんな存在なのか」
答えは複雑なようで、たった一つだったのだ。
「君の存在、それは――」
「矛盾だね」
力が抜ける。
一番いいところを先輩に言われた。
「それ、僕が言いたかったんですけど…」
「私をなんだと思っているの?白石君より早く気がついてたよ」
あ、そうなの?
流石は人の心を描くプロだ。
「矛盾。それはヒトが持つ心」
何やら、演説会が始まった。
「君の行動にも、現れていたよ」
黒幕を指す。
「倒そうとしながら、シフリスを助けたり…」
「私達の事だって、あの時に助けたよね」
ゼルティアでの一件の事だ。
「なぜ"シフリスを助けた"と言えるかって?簡単なことさ。神格化を止めるなら、自分の足下の陣を破壊すればいい。そうでしょ」
「でも、君はわざわざシフリスの陣まで走って壊した」
確かに不自然だ。
「神格化の陣と、生贄の陣は別物だと言うことを知っていたんだろう?」
生贄のは、魂を取り出す用のもの。
神格化のは、魂を取り込むもの。
それぞれは別に機能している。
「神格化の陣を壊せばもちろん止まる。でも、魂は失われる」
ああ、それで遠くの"魂を取り出す陣"を壊したのか…
「君はきっと、過去に何かあったはずだ。君は忘れているが、心が覚えている」
「今ならきっと、分かるはずだよ。ルナちゃん、やってみてくれない?」
「もちろんオッケー!」
堂々と人の心に踏み入れる。
もう慣れているようだが、少しでも慎重に…
「少しの心的外傷が、きっとあったんだろうね」
先輩は話を進めていた。
「思い出してみなよ。君がどうやってこの世界に来たのか」
「時空跳躍もなしに来るってことは、何か過去にあったんじゃないの?」
黒幕は、なんだか苦しそう。
「黙れ…これ以上言うな!」
それにも臆せず、まだ話を進める。
「きっと君は――」
口を開きかけた先輩を止めたのは、シフリスだった。
「やめてください!」
「忘れたいと思った記憶を掘り起こしたって、解決にはなりません」
「シフリス、また操られて…?」
先輩の放った一言を一蹴する。
「私は正常です。異常なのは心を覗こうとする貴方達では?」
「私はあくまで受動的に、この人の心の内を見ました。それはとても恐ろしく、残酷なものです」
「それを思い出して破滅に導こうものなら、きっと――」
ここで、止めに入ったのはまさかの黒幕だった。




