#52 犠牲
「皆さん、行きますよ」
「OKだよ」
円を描くように一斉に走り、魔力を要所に落とす。
「なるほど、攻撃用の陣を描くつもりか。だが、それで私を止める事など出来ない!」
取り出したのは、なんと日本刀!?
本当に日本人なんだ…
「やっぱり一筋縄では行かないね…」
作戦はこう。
――――――――――少し前――――――――――
「神格者を否定しているなら、神格者にしてしまえばいいのです」
シフリスはさらっと言う。
――どれだけ難しいかも知らずに。
「無理無理!そんな簡単に出来ることじゃないし、それに私の義弟にアレが加わるの嫌なんだけど」
ルナの必死の抵抗。
「なら、それ以上の案を出せますか?」
静かな圧。
シフリスに詰められ、観念したようだ。
「――分かったよ。でも、どうやって神格者にするの?」
たしかリゼリアから教えられたのは…
『神格者なんてのは魔力と能力と魂さえあれば簡単になれますわ』
あの時は技術部部長の魂だけを使って神格化したようだが…
「違う。私が言いたいのは魂の話。誰が犠牲になるの?」
一番の問題はそこ。
「それは私が」
シフリスが変わらず言うが――
「ちょっと待ってよ。シフリス消えたら帰れなくなるじゃない」
それだと、本末転倒だ。
「その点は大丈夫なはずです。既にルナさんには、私の記憶がありますから」
いや、どういう事…?
「擬似的な時空跳躍を再現できるということです。ですよね、ルナさん」
「うん、一応できるけど…」
あ、できるんだ。
「本当に、それでいいの?」
いつもよりも真面目な顔になる。
「操られていたとはいえ、この世界に連れてきたのは私です。私自身のケジメとさせて下さい」
シフリスの声は真剣で、その目は、覚悟ともとれる感情が表れていた。
「…分かった。シフリスがそれでいいならいいよ」
「ありがとうございます」
シフリスは、普段見せない表情を見せた。
「まだまだ行くよ、それっ!」
陣は結構大きく、細かいところまで描くため、戦場を走り回らなければいけないのだ。
一方のシフリスは、自分の足下に小さな陣を描く。
自分だけが犠牲になるように。
(私が消えた時に悲しむのは、きっとこの人たちだけでしょうし…)
シフリスは、天涯孤独の身だ。
親も、まともな友人と呼べる人もいなかった。
――白石達を除いて。
ある意味、特別だった。
過ごした生活はどれも眩しく、手放したくない。
それはシフリス自身がよく分かっていた。
それでも、帰る事を応援するのが連れてきた自分ができる唯一の事だと。
(なぜでしょうね。こんなにも胸が苦しくなるのは…)
その感情は悲しく、とても清々しかった。
「小賢しい…」
三人がかりで描いているため、対処が間に合わなくなってきている。
「こっちはもう終わったよ!」
「こっちも!」
後は僕のところだけ…
「なるほど、そういう作戦か…」
黒幕が走り出す。
僕の方へ!?
マズイ。間に合わない!
今動くわけには行かないのに…
間に合え、間に合え…!
あと五、四…
「これで終わりだ」
三
チャキン
構える音。
二
空気を斬る音。
一
後少しで…
ブンッ!
刃は首下まで進み――止まった。
「完成…した?」
ドサッ
倒れる音が聞こえる。
遂に――
その途端、黒幕が動く。
(まだ諦めないのか!?)
いや、今度はシフリスの方へ。
「何をするつもりだ!」
答えはない。
ただ、一つ確かなのは…
シフリスの近く、魔法陣の一部に剣を向ける。
黒幕が、魔法陣を壊す。
神格化の途中停止。
その代償こそ計り知れないが、かわりに――
「私、なんで生きて…」
…
そこで一つの答えにたどり着く。
「ああ、そういうことか!」
「白石君…?」
「分かった。君がどんな存在か」




