#40 柵の向こう
「これ、どうやって越えるの?」
頭を悩ませる原因がある。
柵だ。
いや、当たると弾かれる壁と言うのが正解か?
当たるとかなり飛ばされてしまう。
しかも、かなり痛い。
無理矢理越えてもいいが…
「え〜 絶対にイヤ」
と、断られてしまった。
「回復魔法が使えるんだから、別にいいと思うんだけどな…」
「だったら、こういうのはどうでしょうか」
シフリスが出した案は、
シフリスが先に向こうに行く。
↓
ゲートを開く。
↓
そのゲートを通る。
と言うものだった。
確かに、現実的だ。
「じゃあ、どうやってシフリスは向こうに行くの?」
そこなんだよな~
「ちゃんとゲートから通るか、それとも――」
視線が向く。
これは…まさか。
「制御は任せといて、しっかりやり遂げるから」
「こっちも準備OKだよ」
だろうな。
想像は着いた。
僕のことを文字通り"壁"にして、反発されたシフリスをもう一回押し込む。
そこに、ゲート作成。
後はゲートを通過すればいいと言う事。
しかし、これ…
僕の負担が大きすぎる気がする。
「誰だろうね〜回復魔法があるから無茶してもいいって言ったのは」
先輩には結構恨まれているようだ。
「じゃあ行くよー」
え、まだ心の準備が――
「発射!」
発――?
その次の瞬間には、はるか彼方。
遠くで歓喜の声が聞こえる。
成功…したのかな?
ルナが寄ってくる。
「ほら、回復魔法」
「回復しても…結構痛いな」
「でしょ。これからあんな事言わないでね」
「はい…」
ここが、柵の向こう側…?
目の前には、大きな山脈。
村があったようだが…
廃れている。
「これは…野宿になるかもね…」
先輩が不安そうに言う。
「とりやえず進もう。話はそれからだ」
とはいえ、山を越える気にはならないな。
道に沿っていけばなんとか…
「どこも壊れてる…」
道ですら、歩きにくい。
「これが――ゲルゼズ共和国なの?」
国と言っていいのかが怪しいほど。
無法地帯というのも冗談じゃ無さそうだ。
「黒幕の場所はどのあたりなの?」
シフリスが地図を出す。
丸がつけてある場所は、ゲルゼズの中心部。
今は南。
「あと三日ぐらいで――行けるかな?」
「本当に行ける?」
「歩き続ければなんとか――」
「それは難しいと思いますが」
「行くしかない!」
うん。行くしかない。
「とにかく歩こう!」
明るく言う。
そう言って、一歩踏み出した瞬間…
《ビー!》
警報!?
「白石君、何かしたの?」
「いや…何も…」
その時、近くのドアが開く。
「なんだぁ?あんたら」
これは…まさか893?
『あそこはマフィアの巣窟だ』
"社長"の言葉が脳裏に浮かぶ。
「客か?そうは見えないが…」
「ボスは今取り込み中だ。少し待ってな」
そう言って、建物の中に入っていった。
「どうする?今なら逃げ出せるけど…」
「それはするべきではないと思います」
「何で?」
「ボスらしき人が、向かって来ているからです」
ドカァーン!
ドアが壊れ、人が飛ぶ。
「てめぇに貸す金はねえ。何度も言わせんな!」
「そこをなんとか――」
飛ばされた人が言う。
すると、ボスは胸ぐらをつかみ、
「なんだ、まだ者足りないってのか?」
拳を握る。
「ヒッ!」
情けない声。
「分かったらとっとと帰れ!」
「はいぃ!」
逃げ出すように消えていった。
「で、お前らは何だ?」
鋭い眼光。
背筋に変な汗が流れる。
「いや――僕たちは…」
目を合わせたら――殺られる!
あやふやな返事を言っていると、ボスは察したらしく、
「さっきは見苦しいところを見せたな。わざわざこの国に来たってことは、誰かを探してんのか?」
探してる――
間違いではないな。
「はい」
「やっぱりそうか…」
「ボス、あの子達をどうするんです?」
「残念だが、俺たちは慈善活動してる訳じゃない」
「それだと可哀想ですよ。せっかくここまで来たんですから」
「でも不思議ですね。どうやって入ったんでしょうか」
「――確かにな。ゲートは閉まっている」
「お前ら、どうやって来たんだ?」
ついにバレたか!
「あの柵を…越えてきました」
真面目に言うしかない。
「まさかこの子供、犯罪者だったのか――」
「犯罪も犯したくなるでしょう。そんなに会いたいなら」
「でも犯罪を犯さないと入れない国ってどうなんです?」
「――確かにな。おかしな話だ」
「この国の政府が悪いんじゃないか?」
「どんな奴に会いたいんだ?ツテがあったら探してやる」
手伝ってくれるのかな?
「(僕たちの)ラスボスで、(シフリスを)操って戦わせた、悪い人です」
「(この国の)ラスボスで、(民衆を)操って戦わせた、悪い人…?」
「この子達、もしかしてレジスタンスでは?」
「となると…同業者なのか?」
「ボス。この子達と共に、立ち上がる時ではないですか?」
「そうですボス。この国をもっとよくしましょう」
「この国のために!そして組織のために!」
「そうだな…いっちょやってみるか!」
「俺達のボス!バンザーイ!」
「あの―」
「俺らは君達と共に行こう。この腐敗した政府を倒して、我らの理想の国を創り上げよう」
「オーーッ」
どうしてこんな事に?




