#39 国境の街
「そう言えば、ルナの能力ってなんなのさ?」
先輩が放った一言。
確かに、と思った。
神格化しているから、とんでもなく強い能力なのかな?
「スキルか――。滅多に人に見せないんだよね。それに、見ても地味だと思うよ」
神格能力で地味…?
ますます気になる。
「やっぱりヤダな…」
「お願い!見せて」
先輩が懇願するが、聞き入れて貰えない。
その時、先輩がこっちを見てきた。
白石君も頼んで!
とでも言いたげな目だ。
「僕も――見てみたいな」
一拍間が空く。
「仕方ないな――。ほら、これ」
そう言って出てきたのは、光る珠。
「なんですか?これ」
シフリスが言う。
もちろん僕も――先輩も同じ気持ちだ。
「これはね…記憶を集めた珠なんだ」
「記憶なんか集めて、どうするのさ?」
「いや…集めるだけだよ。それが私のスキル:星巡記憶だからね」
エターニティメモリーか…
「便利なのは、記憶を忘れない事かな?」
それは記憶と言うか…記録では?
「地味だね…」
先輩が口を開く。
「だから言ったのに…」
変な空気になってしまった。
和ませなければまずいな。
いいモノは…
「あ、ほら、街が見えて来たよ」
そこには、小さいながらも立派な街があった。
「もうすぐ日も暮れるから、ここで泊まらない?」
「そうだな――」
街に入ると、見えたのは大きな柵。
「なにこれ…」
何でこんなもの…
「そこの人達。この先に生きたいの?だったらすぐに行った方がいいよ」
少年が言う。
「明日は行けないの?」
先輩が聞く。
「明日は…たぶん閉まってる」
閉まる?
「それ、どういう事?」
「明日からは暫く開かないんだって」
「どうします?今日泊まるのは難しそうですよ」
小声で先輩に聞く。
すると、意外な返事が返ってきた。
「白石君…私達は密入国しようとしてるんだよ。ゲートから堂々と入れないでしょ」
「今日はもう寝ようよ〜」
ルナが入る。
「初日から歩きすぎるのはオススメしません」
シフリスにまで言われた。
「だったら…泊まるか」
「少年。この辺の宿何か知ってる?」
「だったら…あそこかな」
そう言って指をさしたのは、明らかに高そうな建物だった。
「白石君。これに泊まるの?」
先輩は不安そうな目で見るが、こっちにはコレがあるのだ。
「こら、金が無いなら来るな。冷やかしなら結構だ」
「お金は無いけどコレなら…」
紙をヒラヒラと見せる。
バッ
あっ取られた。
「その紙がなんだと…」
途中まで言って、目を丸くする。
"ギルドマスター公認の冒険者"
費用は全て、ギルドが支払う事になる。
「こんな子供達が…?」
「お金がないって言うんだったら別の所行くけど…」
聞いた途端、態度が急変した。
「いやいや、ここに泊まっていいですよ」
へりくだる態度。
こうして、宿を得ることに成功した。
久しぶりのボッチ飯。
ルナは?先輩達はどうしたって?
もちろん別室だ。
女性三人と同じ部屋で寝る勇気は僕にはなかった。
そもそも、元の世界でも親の仕事の影響でボッチ飯は日常茶飯事。
悲しいが、慣れている。
それに、一人で泊まるのも良いものだろう。
誰にも気を使わないで済むし…
思っていて、なんだか悲しくなった。
今日はもう寝よう。
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女性部屋に、動く影がある。
シフリスだ。
彼女の楽しみは、夜中に温泉に入る事。
訪れた街の近くにある温泉には、必ずと言っていいほど入るのだ。
今回泊まっている宿にも、有名な温泉がある。
部屋を出て、生活魔法:簡易光源を発動。
周辺の人を起こさない、優しい光。
シフリスは静かな廊下を歩きながら、考えていた。
内容は、自分の能力について。
(私…あのまま元の世界に返した方が良かったの?)
こんな戦いに巻き込む必要もなかった…?
そもそも、操りが解けてからまともに使用していない。
浴室に到着。
(ここなら…)
スキル:時空跳躍を試しに発動。
その時、身体に異変を覚えた。
首下。刻印の欠片が光る。
「これは…!」
即座に発動を停止。
「今のは…なに?」
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明朝。いつも通りの時間。
荷物をまとめて外に出る。
最初の印象こそ悪かったが、流石に部屋は良かった。
まともに払うと、一人三万は越えるだろう。
ロビーに立つ人に感謝を告げ、宿を出た。
目指すは、柵の向こう側。
少しだけ、霧がかかっていた。




