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#38 ゲルゼズ共和国

「"社長"ー今日はなんですか?」

事務仕事をしている社長に聞く。

「君たちの未来に関わる大切な仕事だ」

ここは、ユラリアのギルド本部。

収穫祭から一日後、今日も仕事に駆り出されている。

「魔力の解析、終わったわよ」

そう言って出てきたのは、フィアナさんとシフリス。

「いやーいい研究が出来たよシフリスちゃん」

「いろいろ触られました。これが、"屈辱"でしたね」

二人の間に何かあったようだ。

「で、何かわかったんですか?」

先輩が聞く。

「それがね…わずかに残ってた刻印から、場所が分かったんだけど…」

「それ以外何も分からなかったと」

口を挟むルナ。

「まあ、場所が分かっただけイイじゃない」

開き直ったように言う。

「で、どこだったんです?」

「それがね…この国の北。ゲルゼズ共和国なんだよね」

"社長"がため息をついている。

「何があるんです?そこ」

「あそこは…無法地帯だ」

どうやら、もともと僭主政の国だったけど、最近革命が起きたらしい。

で、統治できる有力な機関が存在しないまま、マフィアの巣窟に成り下がったんだと。

「後もう一つ…あそこ寒いんだよね」

なんだ…寒いだけか。

「だから私はパス」

フィアナさんが言う。

「俺は仕事があるからな」

となると…四人か。

ルナはワクワクしているし、先輩は…

「雪国!いい話が出来る予感!」

と、はしゃいでいる。

僕とシフリスは顔を見合わせ、

「はぁ~」

と、ため息をつくのだった。


「出発する前に準備しろよ。恐らく今回が――"最終決戦"だからな」

"社長"の声にはどことなく真剣さが混じっていた。

準備か――

剣を磨くか。


この作業も何度目だろう。

普通なら、剣なんか触れなかった。

もしかしたら、戦うこともなかったかも知れない。

異世界に転移しなければ…

途中で、考えを改める。

転移したから、ルナや色んな人達と会えたし、先輩とも仲良くなれたんだよな…

悪いことだけじゃないのかも。

先輩も、杖の手入れをしている。

ルナは――

暇を持て余していた。

肉弾戦しているから、手入れするものもないのだ。

シフリスは、外の空気を吸いに行っている。

「ほら、出来たか?」

社長が聞き、剣をヒョイと()()()()()

あれ…?

「"社長"。なんで触れるんですか?」

「もともと五代前の所持品だ。使うことはなかったが…」

どういうことだろう。

ルナと"社長"と僕…

何か…

うーん分からん。

「なかなかいい感じじゃないか。腕を上げたな」

「は、はぁ」

乾いた返事が出る。

「"社長"ー(なに)で行くんです?」

先輩が聞く。

「徒歩だ」

「と、徒歩!?」

先輩とルナは驚いているが、僕はもう慣れた。

最初の頃も徒歩だったのだ。

「飛行機とか使えないの?」

「無理だな。無法地帯(ゲルゼズ)には飛ばない。そもそも、国境管理すらままならなっていないからな」

じゃあどうやって――

「まさか…密入こ――」

「それ以上言うなよ?」

悪い笑みを浮かべている。

そうなると、何も言えない。


「ほら、行ってこーい」

ボールを追いかける犬の様に、外に放り出される。

「まったく、いつもあの人は乱暴です」

シフリスが歩きながら言った。

「そんな事もないと思うよ。戦闘技術を教えてくれたのもあの人だし――」

持ち上げる。

ぶっきらぼうだが、面倒見はいいのだ。

「そもそも、時空跳躍(テレポート)があるんだから跳んでいけばいいじゃん」

「それは無理です。私はそこに行ったことがありません」

――行ったところしか使えない。

それが、シフリスの時空跳躍(テレポート)

「でも遠いよ…ヘリぐらい出したらいいのに」

(あの人…元気かな?)

アル=ゼリオに連れて行ってくれたあの人。

せっかくフィアナさんもいたんだから…

まあしょうがない。

「それに、徒歩の旅も楽しいと思うけど…」

そんな事まで話すのも、旅の醍醐味だろうな。

「結局疲れないんだし」

そう、万能な体調管理(コンディション)がある。

便利な魔法だ。

先輩は使っていないが――

使わない理由は、『二度寝がしたいから』


もう昼を越えている。

中途半端な時間に、僕達は大切な旅に出た。

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