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#37 ゼルティア学園

朝。

何事もなかったかのように、鐘が鳴る。

生徒たちの笑い声。

廊下を走る足音。

窓から差し込む、柔らかな光。

――日常。

昨日まで、あれほど壊れかけていたとは思えないほどに、ゼルティア学園は“いつも通り”を取り戻していた。

「ねえねえ聞いた?昨日のアレ、ただの訓練なんだって」

「マジで?めっちゃリアルだったんだけど」

そんな会話が、あちこちで交わされる。

真実を知る者は――少ない。

それでいい。

それが、“守った”ということだから。

そう思っていた。

―――――――――――屋上―――――――――――

風が、吹く。

フェンスにもたれながら、空を見上げる少女。

リゼリア。

「……平和、ね」

ぽつりと呟く。

その言葉には、少しだけ疲れが混じっていた。

「不満そうだね」

隣に、ルナ。

いつもの調子で、軽く笑う。

「別に」

視線を逸らす。

「ただ……思ったより、あっけなかっただけよ」

「そう?」

ルナは空を見上げる。

「私は、結構ギリギリだったと思うけどな」

少しの沈黙。

風が、髪を揺らす。

「……守れたね」

ルナが、小さく言う。

リゼリアは、少しだけ目を細めて――

「ええ」

短く、答え横を見る。

それだけで、十分だった。

―――――――――――中庭―――――――――――

「でさ〜!私がバンッて撃ったらさ〜!」

イリスが身振り手振りで語る。

「はいはい、すごいすごい」

呆れたように返す葵。

「なにその適当な相槌!?」

「だって盛ってるでしょ絶対」

「盛ってないって!」

言い合い。

でも――

その距離は、昨日よりもずっと近い。

「……ありがとね」

ふいに、イリスが小さく言う。

「え?」

「なんでもない!」

すぐにいつもの調子に戻る。

葵は、少しだけ笑った。

(ちゃんと、戻ってきたんだ)

それが、何より嬉しかった。

――――――――センターベース――――――――

「総損傷率、23%。思ったより軽傷ね」

ヴェルナが端末を操作しながら言う。

「軽傷ってレベルじゃない気がしますけど……」

「動いてるから軽傷よ」

即答。

「それに」

画面を見つめる。

「ちゃんと守りきった」

少しだけ、表情が緩む。

「それで十分よ」


――――――――――――――――――――――――


「え〜……転校するの?」

イリスの声が、少しだけ掠れる。

「もうここにいる意味も無いからね」

先輩は、軽く笑って答える。

「それに――これは、もともと決まっていたことよ」

ヴェルナが続ける

いつも通りの冷静な口調……だけど。

ほんのわずかに、寂しさが滲んでいた。

「せっかく……仲良く(カップルに)なれたのに……」

ぽつり。

イリスが俯く。

「また、いつか会いに来るから」

先輩が、優しく言う。

「その時まで――我慢ね」

「……ほんと?」

「約束する」

短い沈黙。

「それに」

リゼリアが、いつもの調子で口を挟む。

「元に戻るだけでしょう?そんなに悲しむことでもないのでは?」

リゼリアが爆弾を投下する。

「そんなんだからいつまでも一人なんでしょうが!」

イリスが即座に噛みついた。

「私は常に二人ですわ」

リゼリアがさらっと返す。

その隣で――

「うん、ちゃんといるよ」

アルクが、楽しそうに笑っている。

「どこが!?一人でつっ立ってるだけじゃない!」

「貴方に見えてないだけですわ」

「余計怖い!」

「ほらほら、そこまで」

先輩が、間に入る。

空気が、少しだけ柔らぐ。

笑いが、戻る。

――だからこそ。

余計に、別れが近いことが分かってしまう。

「……何かあったら、すぐ呼んで」

先輩が、真剣な顔で言う。

「どこにいても、絶対に行くから」

その言葉に――

「……うん」

葵が、静かに頷く。

「頼りにしてる」

イリスも、小さく笑った。

「じゃあ――」

一歩、下がる。

「バイバイ」

振り返らずに、手を振る。

その背中が――

少しだけ、遠くなる。

誰も、すぐには動かなかった。

見えなくなるまで、見送っていた。

――――――――――???――――――――――

暗闇。

その奥で――

「……十人目、か」

低い声。

「予想より、早いね」

微かに、笑う気配。

「いいよ――面白くなってきた」

光が、一瞬だけ灯る。

浮かび上がる影。

観察する者(レコーダー)――

「さあ」

静かに、告げる。

「次は――どこまで“守れる”かな?」

その声には、

期待と――

ほんの僅かな、悪意。

光が、消える。


物語は、まだ終わらない。

それでも。

この日、確かに――

彼らは、“守りきった”。

だからこそ。

――この物語の、続きを。

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