#3 魔法の存在
「この世界で暮らすには、最低限の魔法は覚えてもらう必要がある」
“社長”は腕を組みながら言った。
「魔法は大きく三つに分けられる」
指を三本立てる。
「戦闘魔法、回復魔法、生活魔法――この三つだ」
今日は座学らしい。
“社長”直々に教えてもらえるのは名誉なことだ、と周囲には言われたが――
正直、そんな気はしない。
(この人、普通にヒマなのでは……?)
「まずは一番簡単な生活魔法からだ」
やっぱりヒマなのかもしれない。
「基礎として、体調管理を覚えてもらう」
「異世界から来た人間でも、魔法って使えるんですか?」
「問題ない。この世界に来てから多少時間も経っている。魔力も身体に馴染んでいるはずだ」
……そんなもんなのか。
「覚えるって言っても、何をすれば?」
「難しいことはない。すでに“種”は渡してある」
「種?」
「魔法のきっかけとなるものだ。あとは発動するだけで使える」
「発動って……」
嫌な予感がする。
「口に出して言えばいい」
やっぱりだ。
「いや、普通に恥ずかしいんですけど」
「そんなことはない」
あるんだよなぁ……
……まあ、いいか。
「《体調管理》!」
――。
…………。
何も起きない。
「……今の、失敗しました?」
「いや、成功だ」
「え?」
「体調を整える魔法だ。見た目に変化がないのが正常だ」
「ああ……なるほど」
言われてみれば、確かにそうだ。
「次だ。《情報確認》を覚えろ」
「これも叫べばいいんですよね?」
「もちろんだ」
もう吹っ切れた。
「情報確認!」
叫んだ瞬間――
視界が暗転した。
頭に鈍い衝撃が走る。
そのまま、意識が途切れた。
「……あれ?」
目を開ける。
見慣れない天井。
「ここは……」
「やっと起きたか」
横を見ると、“社長”がいた。
「確か、さっき……」
「気絶したな」
あっさり言うな。
「おそらく原因は魔力切れだ」
「え」
「今の君では、複数の魔法は扱えないだろう」
そんなゲームみたいな制限ある?
「しばらくはこの2つだけにしておけ」
「えー……」
「今日はもう休め。今後のことは、また明日話す」
そう言われた瞬間――
ふっと、意識が沈み始めた。
(あれ……?)
急激な眠気。
抗えない。
そのとき、ふと思い出す。
――体調管理。
(これ、回復じゃなくて……)
(普通に“休ませる”魔法なのでは……?)
考えがまとまる前に、意識は闇に落ちた。
明日も更新




