#2 訓練
訳あって遅れました
働くって、こういうことだったのか。
――いや、違う。
思ってたのと、だいぶ違う。
“社長”は、本当に社長だった。
……いや、正確には違う。
この世界で言うなら、ギルドマスター。
つまり、冒険者を束ねるトップらしい。
そして――
目の前から拳が飛んできた。
「っ!?」
次の瞬間、身体が宙を舞う。
地面に叩きつけられ、肺の空気が一気に抜けた。
相手は、見るからに強そうな大男。
本人は“軽いデモンストレーション”だと言っているが、
全くそうは思えない。
「ハッハッハッ! こんなものか、少年!」
「異世界でも……結局、肉弾戦かよ……」
地面に転がりながら、ぼやく。
こんなことになったのには理由がある。
“社長”が言ったのだ。
「この世界で暮らすには戦闘力が必要だ。ちょうどいい訓練相手がいる。戦ってみるといい」
――軽いノリで。
もう一度、拳を繰り出す。
パンッ!
乾いた音。
だが――手応えがない。
気づいたときには、相手の手に止められていた。
「……軽いな」
その一言の直後、
またしても、吹き飛ばされた。
「ぐっ……!」
「しかたがないな」
“社長”がどこかへ歩いていく。
武器か?
頼む――
強そうな武器、来い……!
戻ってきた“社長”の手にあったのは――
シンプルな剣だった。
いや、武器ではある。あるのだが。
地味だ。
圧倒的に地味だ。
「その剣は、ただの剣じゃないぞ」
“社長”が言う。
「五代前から保管庫に眠っていた、由緒ある品らしい」
そう言われると――ほんの少しだけ、光って見える。
「在庫整理だな」
大男がぼそっと言った。
――気のせいだった。
「剣に必要なのは、切れ味と使い手の力だ」
“社長”が続ける。
「もう一度やってみろ」
……まあ、そうか。
武器があれば、多少は違うはずだ。
剣を構える。
「さあ、来い。少年」
今度こそ――!
「うおおおおっ!」
︙
︙
「いやー、あんなに早く終わるとはな」
「ずるいですよ……筋肉が鉄みたいに硬いんですけど……」
「……あれ、まだ言ってなかったか?」
大男が“社長”を見る。
“社長”は、ゆっくりと目をそらした。
嫌な予感しかしない。
「俺はスキル持ちだ」
大男が軽く腕を叩く。
ゴン、と鈍い音がした。
「筋肉鋼化――筋肉を鋼みたいにする能力だ」
……え?
「じゃあ、最初から勝ち目なくないですか?」
思わず“社長”を見る。
「いやー、すまんすまん。完全に忘れてた」
忘れるな。
というか、その情報は先に言え。
「ハッハッハッ! 精進しろ、少年!」
理不尽だ。
明日投稿します。




