#29 授業
――――――ゼルティア高等部一年二組――――――
「今日は普通に学校あるのかよ…」
「まあ、今日の授業は少しマシだよ」
隣に、ガルド。
いつもの2人と違うのはまた新鮮だったが…
いつ襲撃が起きるのか分からない中、授業に集中できないのだ。
よくこんな中で普通の生活ができるものだ。
一限目――歴史総合。
僕が学ぶ意味はあるのか…?
先生が淡々と話す。
「今から大体400年前」
(大体ってなんだよ…)
「人類史上の大災害"地獄の氷河"が発生した」
「魔力の暴走説や、故意の事件等囁かれているが、真相は明らかではない」
「その時に発生した魔力が、今でも残り続けている。
それの爆心地が、魔導遺跡アル=ゼリオ」
うん?
今、知ってる単語が出てきた。
真面目に話を聞くべきだった。
後ろに立つカルナに目を向ける。
カルナは、知っているはずなのに、真剣に授業を聞いていた。
「その後は、しばらく冬が続いて、多くの人が犠牲になったんだと」
「そんなことになっても、400年も経つとこんなに発展できる。僕はそこに歴史を学ぶ意味があると思う。たとえこの先、どんなことになってもね」
最後は先生の言葉で締められた。
二限目――物理
この街はアル=ゼリオとは違って、元の世界と同じ要領で動かしているようだ。
「酸素と水素が結合すると、水になる」
中学生で習うことを高校でやっている。
退屈だ…
―――――――――放送部部室―――――――――
やっぱり…
「誰かがパスワードを解いたみたい…でも誰が?」
防犯カメラは…
「アクセスされてる…」
防犯カメラは放送部と情報部、生徒会が権限を持ってるけど…この中の誰かが?
――――――ゼルティア高等部二年一組――――――
三限目――言語文化。
「Zzz…(*´~`*)。o○」
私の隣の人――イリスは、机に突っ伏して寝ている。
本当にこの人が関わっているのか…?
それを疑わせるほどだ。
「ほら、起きな…」
少しつつくいてみるも、起きる気配は無い。
「後少しだけ……( 。- -。)zzZZ」
また寝た。
でも、寝顔もとても悪い人には…
なんで、この人がターゲットなんだろう?
ヴェルナさんに聞いてみよう。
――――――――放課後、戦略部――――――――
どうしてイリスを見る必要があるんですか?
先輩がヴェルナに聞く。
それは…イリスが新聞部だからよ。
新聞部…?
「新聞部は放送部とは対を成す存在で、新聞部は紙でニュースを伝えてるんだよ」
ガルドが付け加える。
「新聞部は情報部とつながりがあって、イリスはそこで編集長をやってるんだよね」
先輩が驚いた顔をしている。
「で、その新聞部が、最近デマを流してるっていう噂があるんだよね」
「デマって……どんな?」
思わず口にする。
ヴェルナは少しだけ間を置いてから、端末を操作した。
空中に、いくつかの記事が映し出される。
「“白い巨人は自然現象である”」
「“戦略部の介入により被害が拡大した可能性”」
「“目撃証言の大半は錯覚”」
「……なにこれ」
ガルドが眉をひそめる。
「完全に逆だろ」
「でしょ?」
ヴェルナは肩をすくめた。
「でもね、問題はそこじゃないの」
「問題?」
「この記事――全部、発行の“直前”に内容が書き換えられてるのよ」
空気が、重くなる。
「書き換え……?」
「新聞部が最初に作った原稿は、もっとまともだったらしいわ。でも、最終的に出る頃にはこうなってる」
「じゃあイリスが――」
言いかけて、止まる。
昼間の光景が頭をよぎる。
机に突っ伏して、無防備に寝ていた姿。
あれが、全部演技だとは思えない。
「断定はできないわね」
ヴェルナが言う。
「本人がやってるのか、それとも“やらされてる”のか」
「……操られてる、ってことですか?」
カルナが静かに口を開いた。
その一言で、全員の視線が集まる。
「可能性はある。けど、少し違和感もあるのよね」
「違和感?」
「操られてるなら、もっと露骨におかしくなるはず。でもイリスは――普段通り、ただちょっと抜けてるだけ」
「それ、フォローになってないよね?」
ルナが小声で突っ込む。
少しだけ空気が緩むが、すぐに戻る。
「だから君たちには、イリスに近づいてほしいの」
ヴェルナはそう言って、こちらを見た。
「内部から確かめる。それが一番確実だからね」
「なるほど……」
頷く。
「じゃあ私は自然に接触できるから、そのまま様子を見るね」
先輩が軽く手を上げる。
「僕は……」
少し考える。
「放送部のクロード先生に話を聞いてみます。放送の件も気になりますし」
「いい判断ね」
ヴェルナが満足そうに笑う。
「じゃあ、今日は解散。無理はしないこと。明日は巨人が現れるはずだから、準備は整えておいてね」
その一言で、ミーティングは終わった。
廊下に出る。
窓の外は、すでに夕焼けに染まっていた。
(デマ記事、謎の放送、巨人……)
全部が、どこかで繋がっている気がする。
そして――
その中心にいるのが、
(イリス……)
まぁ、今日はもう寝よう。
来たる明日に備えて…




