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#25 襲来



キーン

空を飛ぶエンジンの音が響いている。

『ポーン』

シートベルトサインがつく。

〘まもなく、ゼルティア上空に到達します。シートベルトをお付けになってください〙

「あ、あれじゃない?」

ルナが言う。

「あれが…」

学園都市ゼルティア。

都市の中心には校舎があって、その周りにビルが放射状に伸びている。

元の世界では見たことない、完全な計画都市。

「すごい…」

思わず口に出てしまう。

その時、景色の右上に、爆発音が響いた。

鳥が飛ぶ。

『ウゥゥーー!』

警報が鳴る。

〘一種緊急警報発令により、安全区域に退避します〙

アナウンスの直後、機体が横に傾く。

煙のなかに、少しだけ形が見えた。

(なんだあれ…白い…巨人?)

すぐに、街は見えなくなった。


――――――――――――――――――――――――


黒いワンボックスカーが、路面を鳴らして滑る。

ハンドルを切る。強引に、ねじ伏せるように。

タイヤが悲鳴を上げ、車体が横に流れた。

片手にはトランシーバー。

「やれやれ……こんなタイミングで来るなんて」

ため息まじりに、笑う。

「そっちは行ける?」

『もちろん。いつでも』

「いいわ――」

一瞬の静寂。

「発進」

次の瞬間。

圧縮された空気が、解き放たれる。

“撃ち出された”。

人影が、弾丸のように空を裂く。

一直線。

爆発の中心へ。

風が遅れて追いかける。

手に握るのは、巨大なハンマー。

振りかぶる。

落下の加速。

重力と速度が、質量を暴力へと変える。

「――ッ!」

振り抜いた。

ドォンッ!!

衝撃が空気を裂く。

白い巨人の胴体が、ひしゃげる。

一瞬の抵抗。

――砕ける。

光が散り、巨人は霧のように消えた。

静寂。

遅れて、風が吹き抜ける。

彼は、ゆっくりと顔を上げる。

空には――

白く光る、一機の飛行機。

「あの中にいるのか……」

小さく、呟く。

「どんな連中なんだろう」

その目は、どこか楽しげだった。






「反応消失を確認。警報解除して」

ピロン!

通知がなる。

画面には、

〘間に合った?〙

(心配性なんだから…)

「今ついた。と…」

すかさず、

〘今?少し遅刻〙

(もう!細かいんだから…)

車を降りる。

(待ってなきゃいいけど…)


――――――――――――――――――――――――


「3回目…か」

「完遂には、ほど遠いな」

「まあ良い。まずは一歩だ」


――――――――――――――――――――――――


〘当機はまもなくゼルティア国際空港に着陸します〙

地面に着く感覚。

滑走路を走る。

「さっきの、何だったんだろうね」

「さあ…あれが、この街での任務とか?」

「アレを倒せって?無理無理」

でも、さっきのは消えたようで、窓から見える街の景色はいつも通りに戻っている。

「降りたら分かるでしょ」

頷く。


「空港も綺麗だね」

さすがは大都市。埃一つ落ちていない。

「確か誰かが待ってるはずだけど…」

それらしき人は見えない。

その時、奥から走ってくる人がいた。

(まさか…あの人か?)


「ごめんね〜遅れちゃって」

本当にあの人だったとは。

「私はゼルティア戦略部顧問のヴェルナ。よろしく」

この人、運転が荒い。

体調管理(コンディション)がなければ酔ってしまいそうだ。

そして、それを使っていない先輩は…

「酔ったみたい。窓開けてもらえる?」

やっぱり。

そして、次に

「おお…凄い」

つられて外を見ると、空を裂くビルが何本も建っている。

ソル=ラグナも凄かったが、それ以上だ。

「この街は、中心にある学園で自治が行われているのよ。農業するのも、会社を運営するのも全部ね」

とにかく、凄いというのは分かった。

「で、なんで私達をここに呼んだんですか?」

本題に入る。

「ああ…君たちには、潜入捜査をお願いしたくてね。

そのために、ゼルティアに入学してもらうよ」

「…」

理解に時間がかかった。

そして、口を揃えて

『ええ―――!!』



車内に、見事に声が響いた。

「ちょ、ちょっと静かにしてよ。目立つでしょ」

ヴェルナが苦笑いしながら周囲を見渡す。

窓が空いているのだ。

すでに、何人かがこちらを見ていた。

「いやいやいや!説明不足すぎません!?」

思わず前に出る。

「僕たち、ついこの前まで命懸けの任務してたんですよ!?それがいきなり学生って…!」

「いいじゃない、若いんだし」

軽い。

「そういう問題じゃないです!」

横を見ると、先輩はまだ少し青い顔で、

「……学園モノ……いいかも……」

とか呟いている。

この人、もう適応し始めてる。

あ…でも僕達ちょっと前まで学生だった。

「で、具体的には何をするんですか?」

ルナが冷静に聞く。

助かる。

「簡単に言うとね――」

ヴェルナは少しだけ声を潜めた。

「このゼルティアの学園内部で、“何か”が動いてるの」

空気が変わる。

さっきまでの軽さが、少しだけ消えた。

「“何か”って…」

「さっき見たでしょ?あの白い巨人」

あれか。

あの、煙の中に見えた――

「アレ、ここ最近この都市の各所で観測されてるのよ」

「観測ってレベルじゃなかったですけどね…」

普通に危険だ。

「で、それを倒しながら、犯人を突き止めてほしいんだよね」

「そんな器用なこと…」

「ゼルティアはね、才能ある人を集める場所なの」

車が、都市の中心へと進んでいく。

窓の外には、さっきよりもさらに巨大な建物。

その中央に――

圧倒的な存在感を放つ、ひとつの校舎。

「あれが、ゼルティア中央学園」

思わず、息を呑む。

「君たちは今日から、あそこの生徒」

「……マジですか」

「マジよ」

軽くウインクされた。

軽いんだよな、この人。

「安心して。戸籍も経歴も、全部こっちで用意してあるから」

いや怖い怖い。

「クラスは別。監―見守るのは難しくなるけど、ターゲットが多いからしょうがないわね」

「監視って言おうとしました?」

「言ってない言ってない」

絶対言おうとした。

そのとき――

ピロン。

ヴェルナの端末が鳴る。

一瞬だけ、彼女の目が細くなる。

「緊急予報ね。3日後にアレと同じ事が起きるわ」

「……初日からハードすぎません?」

思わず、そう呟いた。

ヴェルナは、ニヤッと笑う。

「だからこそ、君たちを呼んだのよ」

車が、学園の正門前で止まる。

重厚な門が、ゆっくりと開いた。

「ようこそ――ゼルティアへ」

その一言が、

これから始まる“非日常”の合図だった。

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