#24 跡始末
目を開けると、目の前に川があった。
静かで、透き通っている。
どこまでも、澄んでいた。
「……ああ」
既視感。
前にも、こんなことがあった。
(死にかけたのか……)
妙に、落ち着いている。
恐怖は、ない。
(まぁ今回も……)
来ない。
「……あれ?」
待っても、何も起きない。
(いや……)
冷静に考える。
(一回助かったからって、また助かる保証なんて……)
ない。
「……もしかして」
死ぬ?
その考えが、ゆっくりと現実味を帯びる。
その時。
視界が、暗転した。
(ついに……)
覚悟を決める。
次の瞬間。
視界が、戻る。
「……何だったんだ?」
違和感。
前と同じようで、何かが違う。
背後に、気配。
振り向かなくても分かる。
あの時と、同じ。
「……ごめんね」
静かな声。
「ルナに、よろしく」
それだけを残して。
意識は、途切れた。
「はっ!」
勢いよく、目を開ける。
白い天井。
ベッドの感触。
「起きましたか。自分が誰か分かりますか?」
白衣――いや、ナース服の人。
「白石……湊……」
「意識あり、記憶正常」
事務的な声。
ここは、病院らしい。
「白石君、起きました」
「分かった」
医者が入ってくる。
「あんな状態でよく生きてたな」
軽く言いながら、脈を測る。
「最後に脳波だけ見せてくれ」
機械に入れられる。
どこかで見たことのある装置。
(現実と、変わらないんだな……)
「異常なし。帰っていいぞ」
あっさりとした言葉。
外に出ると、先輩とフィアナがいた。
「また死にかけたのか……」
その一言。
「治りたての人に言う言葉じゃないですよね」
「まぁ、生きててよかった」
前よりも、どこか落ち着いている。
「今日は私の家に来な。今後の話は明日だ」
そのまま、帰路につく。
家に着くと。
「……あ」
カルナが、いた。
「な、なんで……」
視線が、首元にいく。
刻印は――消えていた。
「今回は……すみません!」
深く、頭を下げる。
「コミュニケーション不足で……関係ない人まで巻き込んで……」
言葉に、迷いはない。
「しかも……あんなことまで……」
「まぁ、生きてるしいいよ」
本音だった。
「そんな……!」
「これから、必ず償います!」
真剣な目。
「はいはい。今日はもう終わり」
フィアナが手を叩く。
「話は明日だ。全員、休め」
「はーい」
声が重なる。
それぞれの部屋へ。
――静かな夜。
だが。
一つだけ、引っかかることがあった。
(ルナ……)
今日、一度も見ていない。
いつもなら、必ずいるのに。
(何か……あったのか?)
答えは、ない。
ただ。
胸の奥に、小さな不安だけが残った。




