#23 真実と嘘
「……ふざけないでよ」
先輩の声が、震える。
怒りか、悲しみか。
自分でも分かっていないような声だった。
「こんなところで……終わるわけないでしょ……!」
駆け寄る。
体を揺らす。
反応はない。
「ねえ、起きてよ……」
必死に呼びかける。
それでも――
返ってくるのは、静寂だけ。
「……遅かったな」
低い声。
カルナが、ゆっくりとこちらを見る。
「もう手遅れだ」
「黙れ!!」
叫ぶ。
その声は、今までで一番強かった。
「まだ終わってない!」
その時だった。
「コレ…」
小さな声。
「白石君!」
「ルナ…コレ、使えるんでしょ」
白石 湊の手から、剣がはなれる。
ルナが、それを見る。
「……これ……」
「知ってたんだね…私がこの剣に触れる事を」
真剣で、悲しそうな声だった。
「さようなら」
ゆっくりと、手を伸ばす。
触れた瞬間。
ドクン――
空気が、脈打った。
「良かった…」
湊から、魔力の流れが消えた。
剣が、光り出す。
いや――
“形を変えている”
同時に、ルナも。
「なっ……!?」
カルナが初めて動揺する。
「また……」
ルナの口から、ぽつりとこぼれる。
「力を貸して」
その言葉と同時に。
剣は――弓へと変わった。
ルナも、一回り大きくなったように感じる。
「……あの子」
カルナの表情が歪む。
「なぜ……それを……」
ルナは、静かに弓を構える。
さっきまでの無邪気さは、そこにはなかった。
「返して」
短い言葉。
だが、重い。
「私の…大切な人を」
魔力が、集まる。
今までとは比べ物にならないほどの密度。
次の瞬間。
光の矢が放たれた。
それは、カルナではなく――
白石 湊へと向かう。
「なに……!?」
光が、白石を包み込む。
止まっていた魔力が、
再び流れ出す。
「……っ」
指先が、わずかに動いた。
「馬鹿な!スキルは使えないはず!」
カルナが叫ぶ。
思考を巡らせ、一つの考えにたどり着く。
まさか…
認めたくない。
「そんな事…」
空間支配が特殊能力である以上。
その効果に打ち勝つことは出来ない。
ただし、一つを除いて。
神格能力。
神格者にのみ許される、最強の能力。
その効果には、全てが抗うことができない。
「そんな事…あり得ない!空間支配!」
天井が崩れる。
質量攻撃。
押しつぶすつもりだ。
先輩が叫ぶ。
「不味い!」
「大丈夫」
――――――――――――――――――――――――
「ハァ、ハァ…コレなら…あいつらも」
その時、一筋の光が見えた。
そこには、結界が張られている。
埃一つ通さない、完全な結界。
「そんな事…できる訳が…」
まだ魔法を発動させようとしている。
その時、カルナの周囲に結界が張られた。
ルナのものではない。
空から、バラバラと音がした。
ヘリ!?
ってことは…
「ごめんね〜遅くなって」
「先生!」
――――――――――――――――――――――――
白石は運ばれた。
命は、繋がった。
「……さて」
フィアナが、カルナを見る。
「なんで、あんなことをしたのかな」
「殺せ」
即答だった。
「“救い”なんかより……その方がマシだ」
対話は、拒絶される。
「……やっぱり」
フィアナが、小さく呟く。
「私のせい、なんだね」
「今さらか!」
カルナの声が、荒れる。
「全部……貴様のせいだろうが!!」
空気が、軋む。
「他人の願いも分からず……“救い”なんて押し付ける!」
その言葉に、胸が詰まる。
「それが正義か?」
誰も、答えられなかった。
「……真実なんて」
フィアナの声が、震える。
「知ったって……いいことなんてない」
「信じたいものが、壊れるだけだ……」
膝が崩れる。
「私は……ただ……」
かすれた声。
「信頼できる人が……欲しかっただけなのに……」
沈黙。
カルナは、何も言わない。
ただ、目を閉じる。
「……先生」
先輩が、小さく言う。
「最後に、アレを」
フィアナが立ち上がる。
手の中に、黒い装置。
「……これで終わりにする」
ゆっくりと、歩き出す。
カルナは、抵抗しない。
ただ――
小さく、呟いた。
「……遅いよ」
その一言が、すべてだった。
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