#21 支配者の迷宮
タイミングを測る。
一瞬の隙を狙って――踏み込む。
「ここだ!」
相手へ、装置を押し当てる。
その瞬間。
魔力が、吸い込まれた。
首元の刻印が、ゆっくりと消えていく。
同時に、攻撃の手も止まった。
「成功した……」
上手く作動したようだ。
「やったね!」
先輩たちも喜ぶ。
あとは、前に進むだけ――
そう思っていた。
「チッ」
カルナは苛立っていた。
「まさかあいつが、あんなものを作っていたとは…」
想定外。
「そもそも、剣で受け止められる規模の爆発じゃなかったはず」
それなのに…
「まぁいい。どうせあいつらも…」
そう言って、再び監視を始めた。
いくつかの敵が現れたが、操られているだけあって動きも単調。
簡単に解く事が出来た。
先輩とルナはスキルが使えないが、敵の動きを見て隙を見つけてくれている。
不意打ちにも対象出来るので、ありがたい。
ただ…
「トラップ多くない?」
迷宮と言う名が相応しい量の罠。
多すぎる。
穴が空くトラップ。
矢が飛んでくるトラップ。
スキルが使えたなら、簡単に対処できただろう。
しかし、今は使えない。
それが、難易度を上げていた。
時折、パズルの様なものも出てくる。
(頭を使うのは止めてほしい…)
かろうじて突破。
「カルナさんは過去に何があったんだろう」
「ここまで難しいのは、"拒んでいる"証拠なんですかね」
「操られるのを自分から受け入れているとなると、大変なことがあったんじゃない?」
フィアナさん。一体なんで喧嘩したのですか。
「大事な事は覚えていてほしいね」
本当に。
瞬間、身震いをする。
「少し寒くなってきましたね」
「深いところに来たんじゃない?」
確かに、もう結構歩いている。
「そろそろ…」
扉が見えた。
重厚で、まるで来るのを拒んでいるようだ。
「あかないね…」
「しょうがない。ちょっと離れてて」
そう言い、剣を振る。
カァーン。
音がなっただけでびくともしない。
「うーん。開かないですね…」
どうしようか…
その時、足場が動き出す。
溝ができる。
僕と、先輩とルナを分ける壁が。
「白石君!」
「先輩!ルナ!」
もう、飛び移れない。
分断。
2組の間に壁が現れ、やがて見えなくなった。
壁が止まった。
静寂。
「……っ」
耳が痛いほど、静かだった。
「先輩!」
呼ぶ。
返事はない。
「ルナ!」
叫ぶ。
やはり、何も返ってこない。
完全に、分断された。
(落ち着け)
深呼吸する。
焦るな。
パニックになったら終わりだ。
先輩たちは別ルートに流された。
たぶん、生きてる。
そう信じるしかない。
そして――
自分は、一人。
「……やるしかないか」
剣を握り直す。
少しだけ、手が震えていた。
その時。
奥の扉が、ひとりでに開いた。
ギギギ……
重い音。
まるで、
“待っていた”
と言われているようだった。
「……カルナ」
小さく呟く。
進むしかない。
部屋の中は、広かった。
天井が高い。
中央には、巨大な魔法陣。
その中心に――
「来たか」
カルナ。
玉座のような瓦礫の上に座っている。
まるで、王様だ。
「先輩たちはどこだ!」
剣を向ける。
「安心しろ」
カルナは淡々と答える。
「別室だ。生きてはいる」
少しだけ、胸を撫で下ろす。
「……なんでだよ」
気づけば、口に出していた。
「なんで、そこまで拒むんだよ。助けられるなら、それでいいじゃないか」
カルナの目が、少しだけ揺れた。
「助ける……だと?」
低い声。
「軽々しく言うな」
空気が、変わる。
「お前に何が分かる」
カルナが立ち上がる。
「救われる側にも、覚悟がいる」
その声には、
怒りよりも――
悲しみが混じっていた。
「私は、もう戻れない」
胸が、ざわつく。
この人は。
本気でそう思っている。
「それでも!」
思わず叫ぶ。
「それでも、助けたいって思うのは駄目なのかよ!」
沈黙。
カルナが、ゆっくり杖を構える。
「言葉では、止まれない」
魔力が集まる。
「なら――力で示せ」
ついに。
カルナとの、本当の決戦が始まる。




