#195 新種
昼下がりのゼルティア国立図書館。
「ねえμ's。死んだ人の魂は何処へ行くと思う?」
ミネルヴァは手に持っていた本を閉じ、周囲を飛んでいたμ'sに聞いた。
μ'sは何も答えない。
「⋯貴方に"死"はないもの。聞いても分からないわよね」
「キ」と答え、パタパタと本棚の合間を縫うように飛んでいく。
ミネルヴァは、近頃迷っていた。
世界中の資料を漁っても見つからない答え。
それが"死"だった。
当然ながら、死んだ後に本を書いた人などいない。
しかも、今自分はそれとは対局の存在。
「考えても仕方のないことね⋯」
彼女はため息を付いた。
閃光が満ちた。
精霊体であるポラリスはまったくの無害。
しかし、生身の人間が耐えられるはずがない。
「⋯終わったかしら。私はそろそろ――」
すると、小さな魔力の切れ端を見つけた。
「この魔力⋯葵のね。まだ何処かに⋯」
ポラリスは周囲を見渡す。
それらしきものは全く見当たらない。
「⋯残留しているだけね。消し飛ばすつもりはなかったのだけれど」
手には小さな光が残っている。
今ので魔力の殆どを消費してしまったのだ。
「長居は無用。さっさと⋯」
「環境逆転!」
その声に、ポラリスは咄嗟に反応した。
光が、一瞬にして暗転する。
「これは⋯!?」
始めて、ポラリスが驚きを顕わにした。
それもその筈、このスキルは――
「私の、知らないスキル⋯」
それは有り得ないことだった。
この400年間、簡易魔法は進化しなかった。
そして、全てのスキルをポラリスは知っているはずだった。
「――カルナに感謝しておかないとね。判定玫瑰!」
刹那、ポラリスの動きが鈍る。
精霊体のはずの自分が、食らうはずがない感触。
ありったけの状態変化。
「クッ……誰だ!一体何をした!?」
ポラリスのその言葉に、葵は答える。
「私の知人に、新たなスキルを生み出せる人がいてね。その人に頼んで作ってもらったの。2人しか知らない、新しいスキルを」
「…馬鹿な。そんな事など――」
ポラリスは気が付き、絶句する。
「まさか……天災カルナ!」
「そろそろ、無意味な戦いを終わらせよう。原始回葬!」
万物に通用する、太古への変遷。
葵が放ったそれは、ポラリスを静かに包み――
すべてを過去にした。
――奇しくも、[天罰]までも!




