#196 不明
――決戦前夜。
「もしもし?私だけど」
此花葵は少し離れたところで通信をかけていた。
相手はレイン=カルナ。
『⋯はい。なんですか?』
「久しぶり。そっちはどう?」
こうして話すのも、あの時以来。
『平和そのもの。それで、今日はなんでかけたの?フィアナ先生になにか用事でもあるの?』
「いや、今回はカルナにね」
『⋯私?』
「そう。新しい簡易魔法を作ってほしいんだよね」
すると、少しの間音沙汰がなくなった。
「⋯聞いてる?カルナの能力創造で新しいのを作ってほしいの」
『それは無理。自分しか使えないって前言ったはずだけど』
本当に無理そうな、拒否している声だった。
しかし、ここで引くわけにはいかない。
「4つ作ってくれるだけでいい。お願い!」
神格社二人を出し抜くためには、それぐらいの手が必要なのだ。
『――いつまでに?』
「明日」
機器の向こうで、ため息が聞こえた。
『今日は徹夜か⋯』
それを、葵は了承と受け取った。
「ありがとう!」
――そして、今に至る。
「⋯まさか、そこまでだった⋯とはね」
ポラリスは力尽きたように、ガクリと膝をついて倒れる。
「流石は、私が⋯認めた女、でも⋯」
その顔は、まだ笑みが浮かんでいた。
「四大霊王!」
残された力で、高々と叫んだ。
「え!?なんで使えて――」
そこで、自分がやったことを知るのだ。
全デバフ解除――
つまり、"社長"がかけたのも消えているということだと。
「やらかした⋯!」
葵が嘆いた頃には、既にガブリエルが出現していた。
「⋯今の攻撃で、壁の耐性も消えている」
ドンと、ポラリスが叩く。
そして、白煙を立てて崩れる。
その部屋にいるのは、白石湊とルナだ。
ポラリスはルナには見向きもせず、湊の側に寄る。
「そんな事⋯させない!」
杖を掲げる。
すると、ガブリエルが立ちはだかる。
「邪魔はさせません」
ガブリエルは短剣を持っている。
不用意に近づくと、刺されてしまう可能性も――
「大人しくしていれば、貴方には手出ししないから」そうポラリスは言い、湊へと近づく。
「――ッ!」
(またスキルを使って――いや、白石君も巻き込まれちゃう。もっと近づかないと…)
思考を巡らせるも、良案は出ない。
「ラファエル。彼女のもとへ向かって」
「――了」
最後にそう言ったら、ポラリスは湊の傷口へ手を当てた。
「上位回復」
しかし、効果は見られない。
「生命維持に必要な物も抜き取られてる訳か…そこまでして悠久を共に過ごしたかったのかしら」
それでも"自分がすることは変わらない"。
「…私の力を使って、彼を――」
…カラン。
二つの武器が、床に落ちた。
同時に、四大精霊も消え去る。
残されたのは、三人だけだった。
即座に、葵は湊のもとへ走る。
「…大丈夫!?――ではないか」
しかし、攻撃の跡も消えている。
「"聖霊王"は何をしたの…」
よくよく考えれば、既に死んだ魂が"天界"へ誘われるとするなら――
こんな事はする必要がない。
それにもかかわらず、ポラリスは上位回復をかけていた。
「…最後にラファエルが言った事も意味わかんないし」
すると、湊の指先が少しだけ動いた。
葵の顔が晴れる。
「よかった。生きてる…」




