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#188 それぞれの思惑

少し坂になっている原っぱで、2人がようやく目覚めた。

「…やっと起きた」

起きるまでの間、彼女はクローが刺さらない程度に顔をツンツンし続けていた。

「ん…あれ?アイツラは…」

ビャクヤが間の抜けた声を出す。

「もう行った。2人が寝ている間に」

すると、リツカが飛び起きた。

そして「どうして止めなかったの!?このままだと――」と言いかけた後、言葉を止めた。

言おうとしたことが、現実になったからだった。

「…三人揃って負けた訳か」

そう言って歩いてきたのは、"社長"本人。

「…今更なんですか?私達はもう負けました。後はお好きにどうぞ」

言葉と裏腹に、リツカは"社長"の動向を注視していた。

(もしあの装置を出したら、その瞬間に凍らせてやる)

後にある杖にさりげなく手をかける。

"社長"は、小さな鞄に手を入れた。

(来る)

リツカのみならず、残りの2人もそう思っていた。

――そして、予想外のことが起きた。

鞄から出てきたのは、機械ではなく書類。

その事に、つい呆気にとられる。

「…手にとって読んでみるといい。私はあの医者一つ任せられていた」と"社長"は言った。

おっかなびっくり、手に取る。

そこには、びっしりと字面が書かれるとともに、どういう訳か存在しない情報が乗っていた。

「君達の戸籍を作ってくれと頼まれていたもので、丁度それを私に来たのだよ」

そう言って、"社長"はあの装置を取り出す。

「こんな物もいらない。自由に旅をしなさい」

そう言って、装置を壊した。

――しばらくの間、言葉を失っていた。

"社長"は何も言わず、歩いていった。

「――あのヒト、結局何がしたかったの?」

疑問だけが、三人の中に残り続けた。



一方、建物の門の前にやってきた4人。

いつもよりも重厚に見えた扉を、ゆっくりと開いていた。

「建物の中で戦うって、流石に修繕費が馬鹿にならない気がするけど…」

先輩は、すでに先のことを見据えているようだ。

それとも、ただの呆れなのか?

「私なら瞬殺も出来ますが、どうしますか?」

そう言えば、ちょっと前に「相手の体がゲートの半分を超えたあたりで閉じると切断できる」みたいな事を思いついたらしい。

実際にやってみたら、どんなものも両断できたとか。

世界超越(ファストトラベル)の凡庸性の高さに驚きを隠せない。

ただ、今回は――

「甘いかもしれないけど、今回は誰も倒さないでいよう」

いや、今(・)回(・)も(・)だな。

しかも、その時とは違って今は[天罰]を受けている状態。

万全に動けるとは限らない以上、下手な事はしないほうが良い。

「…入るよ」

小さな足取りで、大きな一歩を踏み出した。


建物の中に、人はいない。

避難しきった後なのか、はたまた出払って余裕がないだけなのか。

とにかく、廊下をゆっくり進んでいた。

…そして、難なく社長室の前まで来れてしまった。

「流石に冗談だよね…?」

すると、何やら紙がドアの前に張られていた。


"不在"


冗談としか思えない。

一体何がしたかったのやら。

「今のうちに捕まってる人を助けましょう」

戦わずして奪還。

無血開城をモットーに頑張って…

「あ、まだ書いてある」

そう言って先輩が見つけたのは、後ろに貼られていた新たな紙。

「…三つの部屋に入って、条件をクリアしてから来なさい…?」

切羽つまった状況のくせに、ゲームの様である。

「"社長"…真面目にやる気あるのかな」

完全に呆れてしまった。

「…従ってみる?」

そう言いつつも、先輩は乗り気だ。

「…変な目に合わせれそうな気がするけど、一回やってみるか」

そうして、三つの部屋に分かれて入る。

変なクエスト、謎の条件。

――不思議だ。

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