#187 災禍の三人衆
ギルドの建物は、町を見渡せる小高い山の上に立っている。
あの時は「景色がいい」とだけ思っていたが、こうしてみると非常に攻めにくい。
まさに、天然の城。
「準備はいい?」と一歩先を歩いていた先輩が言った。
全員が目線を合わせる。
そして、小さく頷いた。
四人の足取りは重くはない。
むしろ、意気立っていた。
「"社長"に何があったか、しっかり聞きに行こう」
そう言って、一歩踏み出す。
そして――
「悪いけれど、ここから先は通させない」
上空から声がした。
出鼻をくじくように、彼女は現れる。
深海のような髪が、冷気で少し揺れた。
「リツカ⋯」
猛威を振るった氷の魔女が、あの時と同じように浮いていた。
「今回は、ボク達もいるよ!」
当然のようにビャクヤ達もリツカの後ろに出てきた。
「君達⋯また敵になったの?恩を仇で返すってこういう事だよね」
先輩が半ば呆れたように言った。
すると、心苦しそうな顔を後ろの二人はした。
リツカはまったくそんな気はなく「大人しく投降すれば悪いようにはしない」と言った。
どうやら、本気のようだ。
三人がそれぞれの武器を構える。
「⋯戦うしかない」
どんな事情があるのか知らないが、こちらとしても譲れない理由がある。
「歴史は繰り返すものだ。だが、まさかこうして――いや、もういい」
その言葉に反応し、こちらも武器を向ける。
「災禍を、再び示そう」
その言葉で、戦闘が始まった。
最初に動いたのは、リツカだった。
二人の後方に下がり、スキル:冷瀑被を発動。
弱体化しているとはいえ、その威力は衰えていない。
氷の結晶が、一斉に4人を襲った。
「世界超越。お返しします!」
シフリスもスキルを発動させ、氷の結晶をすべてテレポートさせる。
そして向きを変え、再び発射。
今度は、ビャクヤ達を氷が襲った。
「ちょっと!アブナイじゃないの!」
そうビャクヤが吠える。
「やはり、危険」
「流石そこまで想像は出来ないから、どうにかして避けなさい。あと手伝って」
初めての実戦ということもあり、向こうも連係がうまくいっていない。
咄嗟に先輩と目を合わせる。
((今がチャンス!))
そして、果敢に攻めかかる。
僕は盾を駆使し、防御しつつ攻撃。
先輩は後ろで、簡易魔法発動を進める。
彼女――"そう言えば名前決めていなかったあの子"の猛攻をなんとか防ぎ、意識をすべてこちらに向けさせる。
そして、先輩の魔力が充分溜まった頃――
「炎華爆発!」
高らかな声が響くと同時に、爆発が起こった。
「やったか!?」
煙が徐々に晴れる。
そこに現れたのは――巨大な氷。
そして、その横からひょっこりと顔を出したのは、ビャクヤだった。
「流石に防いでくるか…」と先輩はため息をついた。
氷が割れる。
そして、平然と三人は立っていた。
「全盛期よりは落ちているはずだが、ここまでとは…」
すると、リツカが言った。
「…今の私は、スキルに操られたときとは違う。魔力の使い方も、戦い方も知った」
そして、氷を幾つか出す。
「何より、今の私には仲間の力が――」
話している途中で、リツカが落ちた。
シフリスが世界超越を使ったのだ。
「多分、めっちゃ良いこと言ってたと思うけど」
先輩が言うも、シフリスは「油断したリツカ様が悪い」の一点張り。
フェイタルが柄にもなくベタ褒めしていた。
…なんとも締まらない話である。
しかし、戦闘はまだ続く。
「キミ!リツカをドコへやった!?」
ビャクヤが吠えた。
僕はシフリスに目を向ける。
「…出口を設定するのを忘れていました」
つまり、今も落ち続けているということ。
「早く!」
すると、丁度ビャクヤの真上に出口ができた。
「いきなり何を――!」とビャクヤが声を上げた。
そして、静かになった。
「…ふざけてない?」
「私は大真面目ですが何か?
「ああ、なら良いけど…」
彼女が2人を突く。
リツカの真下にいるビャクヤはのびてしまった。
さらにリツカも、落ちただけとは言え深刻なダメージを負っている。
「…勝負、ついちゃった」
災害とは無縁の決着を迎え、なんとか先に進めるようになったのだ。




