#186 激甚
「失礼します」
そう告げて部屋に入るのは、災禍の三人。
医者ヘレルに言われた通りに、ギルマスである彼の本を訪れたのだ。
「済まないね。今少しごたごたしていて…」と"社長"は言う。
「会話に充分な時間は取れそうにない。だから、単刀直入に言おう。君たちの強さを見極めたい」
三人の脳裏に、疑問が浮かぶ。
「私達の強さは、もうご存知の通りかと」とリツカが言った。
"社長"は、少し黙ってから言った。
「その事はよく知っている。それとは別に――例えば、神格者とやり合える程度の強さがあるのかだ」
「…理解しかねます。物事の本質をはっきりと教え下さい」
すると、少し面倒そうに"社長"は言う。
「…仕方がない。本来は説得からの従軍と生きたかったのだが、どうも白石のようには行かないな」
そう言って、机の引き出しから何かを取り出す。
銃のような見た目だが、銃口がない。
トリガーは厳重に保護されている。
「…やはり、あの医者に作らせておいたのは正解のようだ」
そう言葉を漏らし、机に置く。
「これは、君たちの制御装置――言うなれば絶命装置だ。トリガーを引けば、君達の制御している魔力が溢れ出し、身体の崩壊が始まる代物だよ」
動揺が三人に現れる。
「返して欲しければ――分かるよな?」
その瞬間、彼女らは気が付いた。
命を人質に、自分達を制御するつもりだと。
「…これが人間のすることか!?"社長"いや――ディストリス=デイナート!」
聞く耳も持たず、一方的に選択を告げる。
「従うか、果てるか」
白石が味方だと言っていたのが嘘のように、それは非酷な敵だった。
一方、こちらはユラリア郊外。
「明日突入するけれども、準備はいい?」と先輩が言う。
白石湊は、剣を振っていた。
いつもと違う感触に、手こずっていた。
「剣って…ここまで振るのが難しかったのか」
いつものは、恐らく――ポラリスが力を貸してくれていたのだろう。
初心者でも難なく振れて、尚且つ強い剣だった。
今回のは強さこそあの剣以上だが、その分振りにくい。
しかも、今回は盾が付いてきている。
両手で持って振る事ができないのだ。
「――明日までに調整間に合わせてよね」
先輩が無慈悲なことを言った。
「一体、いつ家に帰れるようになるのでしょうか」とシフリスが嘆く。
シフリスは[天罰]の影響もあり、思うように動けていない。
世界超越で移動していた為、体力も落ちている。
「私は前線に出ることはできません」
フェイタルはどこで習ったのか剣を磨いていた。
見慣れた刀ではなく、本人がスキルによって作った武器のようだ。
「なら私が斬る。サポートは任せた」
――流石の仲である。
それを自分で作ったくせに喜ぶエレンと、物語の一環として踏むファルト。
監視者の立ち位置も、簡単ではなさそうだった。




