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#183 分岐の果てに

珍しく、廊下に誰も人がいない。

不気味とも言える静けさが、少しの恐怖心を沸き立たせた。

例えるなら…先生に呼び出された時のように。

いや、それよりもっと不安になる何かが、そこにあったのだ。

「…勝手に解放したから怒ってるとか?」

「そんなわけないでしょ。受け入れるとは言っていたし」

言い合うも、拭いきれない。

「全力で謝ったら済むかもしれないし、最善は尽くそうよ」

先輩が言った言葉も、もはや諦める前提だった。

「…開けるよ」

普段よりも何倍も重い扉に力をかける。

そして、ゆっくりとそれは開いた。


「…来たか」

"社長"は机を背にして、窓から外をのぞいていた。

感情は読み取れない。

壁際に立っているセレナは、なんだか気まずそうだった。

沈黙のうちに、2人と目を合わせる。

そして、一斉に言う。

「「「…すみませんでした」」」

しかし、思っていた通りの反応は返ってこなかった。

「…なぜ謝るんだ?私は君達には感謝している」

聞いた途端、少し安堵した。

「今までよく働いてくれた。ギルドマスターとして感謝しよう」

そして、ようやくこちらを向く。

「君達に最後の任務だ。これを終えたら、後は好きにするがいいさ」

最後…といきなり言われ、少し寂しくなった。

「分かりました。その任務をやります」

2人も了承してくれたようだ。

「…君達なら、そう言うと思っていたよ」

一瞬、"社長"の顔が綻ぶ。

次の瞬間――パチンと指を鳴らした。

刹那、情報確認(パラメーターチェック)が作動する。


[天罰]

・弱体化

・鈍化

・耐性消滅


明らかなデバフ。

「"社長"!?一体何を…」

弱くなった状態で勝てってことか?

しかし、結果はまたしても違う。

――ルナが、墜ちた。

同時に、ポラリスが剣から戻る。

正確には…戻される。

「は?」

慌てて見直すと、そこには――


神(・)格(・)者(・)の(・)み(・)有効。


この七文字は、"社長"の意図を的確に表していた。

「そう言えばまだ言っていなかったな。今回の任務は…」

もったいぶってから言う。

「神格者の、抹消」

抹消という響きが、冷酷だった。

"社長"が言った瞬間から、セレナが動き出す。

「セレナさん!どうして…」

「…ごめんなさい。仕方がない事なのよ」

しかし、そう言っているのに割り切ったようには見えなかった。

「…悪く思わないで!私は、こうするしか…」

刃が振り下ろされる。

体に当たるその直前で、ルナは必死の防御結界(ディフェンス)を張った。

「…まだこんな力が…?いや、虚勢ね」

じわじわと押され続けている。

「助けに…」

しかし、武器がない。

すると、ポラリスの声が部屋に響く。

「逃げて!私達は大丈夫だから!」

「…そんな事、できるわけ…」

しかし、こうしている間にも何もできない時間が広がり続ける。

「⋯四大霊王(ホーリー・バシリアス)!」

ポラリスは最後の力でスキルを発動した。

「ウリエル、ミカエルは私の周りに。ラファエルとガブリエルは⋯二人を安全なところへ」

「了」

「は?ちょっと待て⋯」

しかし、止める力はない。

「⋯使用主(マスター)。お願いです。他の神格者を⋯探して下さい」

そうして、少し離れた所に降ろされる。

深い森の中。

「それでは、お願いしますよ」

そう言って去った。

ユラリアの森に、二人だけが残された。

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