#182 新たな門
脈拍、正常。
体内、外見共に異常なし。
多少のPTSD反応検出も、今日範囲内…
「問題なさそう。これまでで一番軽い」
しかし、必ずしも異変がなかった訳では無い。
テロメア消失、老化細胞特殊減少。
他の2人にも同じ反応が現れていた。
ヘイフリック限界が消えている。
つまり、老いることはない。
異様な成長速度の遅さの理由が分かった。
恐らく、遺伝子を弄られた影響だろうか。
人類が渇望した「不老」が、目の前に生まれている。
しかし、それを聞いた当の本人達は余り良い反応を示さなかった。
…まあ、関係のない話。
「検査終わった。この後は?」
『彼らに「自由に旅させてあげて」と言われているわ。情報はすべてこちらで保管する旨を伝えてから、後はユラリアに渡らせなさい』
「はいはーい。了解です」
通信を切る。
つまるところ、私に遠回しに「かかりつけ医になれ」と言ったのだ。
「面倒臭い…が、楽しそうね」
そして、少し軽い足取りで三人の病室へ向かったのだ。
「…と言うことで、治療が済み次第貴方達は自由の身よ。ただし、条件がある。定期的にゼルティアに来て、私の診療を受けなさい」
まだ分からないことだらけで検査したい――だけではなく、彼女らの安全の為だ。
「貴方達の情報は全て私が保管しておく。後、一度ユラリアに行きなさい」
恐らく、こき使おうという魂胆だろう。
「それだけよ。退院まで頑張ることね」
扉は静かに閉まった。
――ユラリア
『⋯と言うことで、準備は完了しました』
椅子に座り、外を眺める"社長"の姿がある。
「⋯反対もあるだろうが、仕方がないな」
その時、セレナが入室する。
「お呼びでしょうか」
キチンと姿勢を正し、言う。
しかし、ただの営業人と違い後ろにはハルバード、服の中には武器がいくつも収められている。
「⋯実は――」
"社長"が言ったその言葉に、セレナが反応する。
「一概に決めつけるのは得策とは思えません。良心で動いている者も中には⋯」
いつも命令には従順なセレナだったが、今回のは違った。
「それに、五人は直接目で見て判断できています。とてもそのようなこと⋯」
それを、"社長"が一喝する。
「残りの奴等の中には確実に悪意で行動している者達がいる。ならば全員抑えてしまう方が得策だ。感化されて何をするか分からん奴等ばかりだからな」
「ですが、しかし⋯」
まだ何か言いたげなセレナだったが、"社長"の目は決まっていた。
「⋯もうじき来る。その時までに覚悟を決めろ」
「⋯」
日の目は潰えていた。




