#178 白夜の旅
塔の最上階は、思いのほか広かった。
天井はない。
広がる空は、夕焼けに染まっている。
ここで、意識が飛んでいることに気がついた。
「その通り!キオクリョクがないから重要な所ばかりになってるんだよ」
…早く終わりそうで何よりだ。
そして、舞台は記憶通りに進む。
確かこの次は――
考えていると、首元に何か触れた。
冷たい感触。
――ナイフ。
分かっていても、流石に冷や汗を垂らす。
「動かないで」
そこには、前の姿のシフリスがいた。
少し懐かしいが、当時の服装に驚かされる。
――ハレンチである。
「あーいうのがコノミなの?ヘンタイ」
違います。誤解を生まないでください。
「それで、この後は?」
確か、剣を振って――
もしかして…詰んだ?
「どうしようもないかもしれない」
そんな事をビャクヤに言ったら、呆れ返っていた。
「素手。ス・テ・ゴ・ロ!」
拳で抵抗できるのか…?
ともかく、構える。
「ちなみにだけど、もしここで死んだら…」
「向こうにエイキョウは無いけど、起きれるのかな?」
…あやふやに恐ろしい答えを返された。
「次元跳躍」
そう言っている間に、シフリスは消える。
隙を見せた瞬間に刺せるようにしていた。
「…洗脳を解くか」
既存ルートとは少し違うけれども、仕方がないだろう。
「リアエンド=フェイタル…いや、夜月玲!変なマネはするなー!」
シフリスと、その奥にいるフェイタルに向かって叫ぶ。
すると、動きが止まった。
「今だ!」
首元…を殴るのは気が引けるので、シフリスからナイフを奪う。
そして、刻印を割った。
「…終わった?ツマンナイの。次はキミが死ぬところが見たいなー」
その願いは、すぐに叶いそうである。
「炎華爆発!」
高々と放つ声。
天災カルナの名に相応しい攻撃。
当時は空間支配に悩まされていたが、完全な上位互換と戦った今、そこまで苦戦はしなかった。
しかし――今回も一人である。
手数でも火力でも負けているのは、戦況を不利に働かせた。
「…でも、対策はできる」
至近距離の攻め。
どれだけ炎華爆発を撃たれようが、カノンとラファエルの守護・昇華のお陰で、ある程度まで軽減できる。
――結果、そこまで苦戦することはなかった。
周りに助けられたことを実感する、良い機会ではあった。




