#177 ユラリア
この生活からの卒業――はもう少しかも知れません
「仲間が増えた所で、ボクに勝てるとでも思っているのかい?」
聞こえたのは、憎たらしさと冷笑に塗れた声。
そして、恨み。
「この世界から抜け出す事は出来ない。たとえ神格者であろうともね」
朝に矛盾した海からの風が、短い髪を揺らす。
スキルの力で作られた世界が、朝を迎えようとしていた。
「私達をここから出しなさい!」
ルナが吠えるが、その言葉も消えていく。
「…話す気は無いってことね。それなら――」
その時、世界が崩れ落ちる。
遠くの山も、海も全てが、硝子のように割れる。
「君達には、永遠に続く夢を見てもらうよ」
刹那、視界が揺れる。
「いい夢を。それじゃ」
そして、世界から消える。
「待て、ビャクヤ…」
湊の儚い断末魔だけが、崩れる世界に残った。
目が覚めると、僕は草原の上に横たわっていた。
見渡す限り、建物はない。
「先輩!ルナ!ポラリスー!」
声を上げるも、返事はない。
とにかくだだっ広い野原が広がって――
それに、見覚えがあった。
「…もしかして、ユラリア?」
その時、後から声がした。
「ヤッホー!よく来たね」
その声の持ち主は…ビャクヤ。
「ここは何処だ」
すると、ビャクヤはふわふわと飛びながら言った。
「ここは、キミの意識の中だよ」
「意識…?」
訝しんでいると、ビャクヤは説明する。
「キミには今から、ボクの言うことに従ってもらう」
「…嫌だと言ったら?」
こんな事言ったのは理由がある。
勿論、出来れば言葉で解決したい。
ところが、今回は話が違う。
「そうだね…キミを閉じ込めて、この世界から出られないようにしてあげる」
この通り、命は常に握られている状態。
下手に刺激するのも、逆効果…
つい、ため息が漏れた。
「どうする?」
仕方がない。
「君の言うとおりにする。流石に「死ね」じゃないよな?」
すると、ビャクヤは腹を抱えて笑い出した。
「そんな事しないよ。キミにはこの世界を旅してもらうだけ。今までと同じように」
一瞬、耳を疑った。
「この世界はキミの記憶であり、夢。今までと同じ事が起きるからね」
「…どうしてそんな事を」
「それは、キミが知る必要は無い。ボクを充分に楽しませたら教えてあげてもいいけど」
…お決まりのセリフ。
「そうそう。同じとは言ったけど、ゼンブ同じなのかはキミ次第だよ」
「それってどういう…」
「あと、ボクはキミにしか見えないから。バイバイ」
…さて。どうしよう。
すると、空からドラゴンが降ってきた。
…とっくに緊張感も消え失せたモノだ。
しかし――武器が無い。
体術を鍛えておけばと後悔した。
そして――
ドラゴンの爪が振り下ろされる。
それを受け止めるように、"社長"が現れた。
「"社長"!」
不意に声に出すと、「誰だ君は」みたいな顔をされた。
そして、気が付けばドラゴンは飛び去っていた。
夢だけあって支離滅裂――
「キミはソウゾウリョクが足りないんだね」
うるさい事この上ない。




