#176 落ちる星
黄昏時、夜に変わる頃。
「この世界も全部幻だなんてね…」
まるで箱庭で過ごしている気分だ。
「で、今からその管理人と戦うと」
果たして脱出出来るのだろうか。
なんなら、永遠にここに閉じ込められる可能性もあるかもしれない。
そうなると、逃げ出すのはほぼ不可能なわけで…
「チャンスは一度きりってことね」
今夜がその時。
「夜中に術をかけ直すタイミングがある。その時だけ姿を表すから」
空の色が目印らしい。
「来るならいつでも来い。ビャクヤ!」
丑三つ時…
仮眠と称して二人は寝た。
「……」
惰眠を貪っている。
変な事したくなったが、我慢だ。
「私にだったらいくらでもどうぞ」
そういう話じゃないんだけどな…
「にしても、罠にかかってるのによく寝れるよね」
「…ヒトとはそういうものです。呑気です」
そこがいいところではあるんだけど。
「ルナも、久しぶりに寝れることがいいんでしょう。安眠そうですよ」
そのまま永眠…なんてのは信じたくない。
「…私が、本来の選択だったら」
ポラリスが何か呟いた。
「どうかした?」
「いや、"運命王"を呪っただけです。もし介入がなかったら、きっと貴方の隣にルナはいなかった」
それは「私が本来の相手」と言いたいのだろうか…?
「でも、それだと僕はこの世界に来ない。会えるのも"運命王"のお陰って言ったらアレだけど」
すると、ポラリスは苦い顔をした。
「私が結ばれる世界はなかった…」
一夫多妻制――それこそ夢のような話だ。
現実ではそんな事ないんだが。
「私は…2位でも良いよ」
スパコンじゃないんだし。
閑話休題。
「神格者は、『悪』だと思いますか?」
突然投げられた質問は、深い。
「…全員がそうかと言われると、違うと思うんだよな」
少なくとも、リゼリア以降は知り合いだし、ルナ・ポラリスもいい人だ。
「もしかしたら僕が知らないだけで、あの人たちにもやらないといけないことがあるのかも――」
「少なくとも、私は嫌いです」
同じ神格者をこうもバッサリと。
同族嫌悪と言うやつだろうか…?
「そもそも、そんな存在が要らない。監視を作るから話がややこしくなって、尚且つ自我を持っている。何のためにあるのか分からない」
そう言われると、なんとなく――
「そこで、提案があるのよ。私と一緒に、神格者を消そう」
…これまた突拍子もないことを。
「いなくたって世界は廻る。変な力を与えずに、自由に――」
その瞬間、空が変わる。
「天罰…いや、来たのね」
術のかけ直し。
「ほら、早く起きるのよ」
ポラリスが2人の身体を揺さぶる。
没まない夜が、4人を照らした。




