#17 不明
月が綺麗な夜。
今は、フィアナさんの家に世話になっている。
「あの子、どうするのさ?」
フィアナさんがぼそっと言う。
「どうする、って……」
答えに詰まる。
「このまま付き合っちゃえば?」
「やめてください」
即答。
先輩は楽しそうに笑う。
「年の差カップル、書いたことないんだよね〜」
(いや、そういう問題じゃない)
横を見る。
ルナは、のんきに“テレビ”を見ていた。
(この世界、テレビあるんだ……)
魔法で動いているらしい。
もう、いちいち驚かない。
「それより」
先輩が小声で言う。
「あの子、剣に触れたんだよね」
「しかも弓に変わった」
フィアナさんが続ける。
「……“ひさしぶり”って言ってた」
少しだけ、空気が変わる。
ただの子どもじゃない。
そんな気がした。
「よし、今日はもう寝ようか」
フィアナさんが立ち上がる。
「葵ちゃんとルナちゃんはこっちね」
「……僕は?」
「庭」
即答。
「え?」
「庭」
……ひどい。
本当に、外に出された。
まあいい。
野宿は慣れている。
体調管理のおかげで、問題はない。
「この世界にも月はあるんだ……星、綺麗だな」
少しだけ、夜空を見上げる。
朝。
やっぱり早く目が覚める。
「もうちょっと寝たいんだけどな……」
ぼやいた瞬間。
「おはよ」
声。
横を見る。
ルナがいた。
「……なんで?」
「起こそうと思ったのに、もう起きてた」
少し不満そう。
「早いですね」
「そっちもね」
たぶん、同じで、体調管理を使っている。
「おはよ〜」
先輩が出てくる。
眠そうだ。
「今日は早いですね」
「ロマンスの予感がしたからね」
「ないです」
即答。
先輩は不満そうに戻っていった。
「……ルナさん。僕たちも入ろうか」
「うん!」
名前を呼んだだけでこの反応。
(……扱いづらいな)
「今日はどこへ行くんですか?」
汽車の中。
四人で座っている。
「魔法の叡智が集う場所」
フィアナさんが答える。
「詳しくは秘密」
フィアナさんは笑って誤魔化した。
車内は空いている。
やっぱり、みんな空を飛ぶらしい。
――次は、ラグナ国立大学前――
「次だね」
減速。
その瞬間――
ドンッ!!
爆発音。
「っ!?」
衝撃。
身体が浮く。
「脱線!?」
咄嗟に掴む。
片手はつり革。
もう片方――
ルナ。
「きゃっ!」
小さい身体が宙に浮く。
間一髪、掴む。
車体が回転する。
視界がひっくり返る。
天井が“床”になる。
「回復魔法!」
痛みが消えた。
ルナが、顔を赤くしている。
……見なかったことにしよう。
外へ出る。
惨状。
車体が横倒しになり、煙が出ている。
破片が当たりに散らばっている。
「……ひどいな」
幸い、大きな怪我人はいない。
「……ああ」
フィアナさんが、前を見る。
「君か」
その視線の先。
一人の人物。
静かに立っている。
「私の“元”弟子」
少しだけ、声が低くなる。
「レイン=カルナ」
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