#16 純愛
「まさか……拒絶されるとはね……」
フィアナさんが、がっくりと肩を落とす。
完全に落ち込んでいる。
「解析、したかったな……」
本音が漏れていた。
「まあまあ先生」
先輩が明るく声をかける。
「せっかくソル=ラグナに来たんですし、どこか案内してくださいよ」
「……案内板に聞けば、どこでも行けるよ……」
ダメだ、立ち直ってない。
「先生じゃなきゃダメなんですよ〜」
ぐいぐい揺さぶる。
「先生じゃなきゃ?」
「そう。先生じゃなきゃ」
数秒の沈黙。
そして――
「……しょうがないなぁ」
顔を上げる。
「葵ちゃんがそこまで言うなら!」
復活、早い。
(……ちょろいなこの人)
「とりあえず、駅に行こうか」
「また駅ですか?」
「この街、拠点が全部そこに集まってるからね」
歩き出す。
雑踏の中へ。
その時だった。
横から、人影。
(やば――)
避けきれない。
ゴンッ!
鈍い音。
視界が揺れる。
星が散る。
(いってぇ……)
倒れはしなかったが、世界がぐるぐると回る。
「ああ、すみません!」
女性の声。
焦っている様子。
「白石君、大丈夫!?回復魔法!」
柔らかな光。
視界が、戻る。
そして――
最初に見えたのは、
見知らぬ少女の顔だった。
ぱっちりとした目。
整った顔立ち。
そして――
「私と、結婚してくれませんか?」
「……は?」
思考が止まる。
「え!?白石君いつの間に彼女作ってたの!?」
先輩が食いつく。
「いや違いますって!?」
「先に言ってよ〜!」
揺さぶられる。
情報が多すぎる。
頭が追いつかない。
そして――
プツン。
意識が落ちた。
――――――――――――――――――――――――
「……あーあ、また気絶しちゃった」
先輩がため息をつく。
「で、君は?」
フィアナが静かに問う。
「私?」
少女は笑う。
「ミリア=ルナ。ルナって呼んでね」
「……で?」
フィアナの目が細くなる。
「何でいきなり求婚なんてしたのかな?」
「えー?」
ルナは首をかしげる。
そして、あっさり言った。
「一目惚れ、ってやつ?」
沈黙。
「……」
「……」
「おおー!」
一人だけテンションが違う。
「いいねそれ!小説に使える!」
メモを取り出して書き始める。
その隙だった。
一人の男が、こっそり近づく。
視線は――剣。
「ヘッ……高く売れそうだな」
手を伸ばす。
だが――
それより早く。
ルナが動いた。
「それ、ダメ」
ひょい、と剣を取る。
拒絶されるはず。
2人はそう思った。
だが。
何も起きない。
普通に持っている。
「……え?」
さらに。
――光。
剣が、輝く。
形が変わる。
しなる。
細くなる。
弦が張られる。
――弓。
完全に、別の武器。
「……なっ」
空気が変わる。
ルナが、ぼそりと呟く。
「……ひさしぶり」
(今、何か……?)
盗賊が舌打ちする。
「チッ……」
武器を構える。
「そこで寝てるマヌケから奪えると思ったのによ」
その一言。
空気が凍る。
ルナの表情が変わる。
笑顔が消え、怒りの表情を浮かべる。
「……今、なんて言った?」
低い声。
「私の――夫を」
ゆっくりと、弦を引く。
光が集まる。
矢になる。
「侮辱したな?」
「ハッ、一本で何が――」
「一本?」
ルナが笑う。
冷たい笑み。
「よく見なよ」
天空へ放つ。
矢は――
一瞬、消える。
そして。
次の瞬間。
無数の光が、降り注ぐ。
「なっ……!?」
逃げ場はない。
「軽蔑したこと、後悔しなよ」
光の雨。
悲鳴。
衝撃。
やがて――静寂。
盗賊は倒れていた。
生きてはいる。
だが、完全に戦闘不能。
ルナが振り返る。
にっこり笑う。
さっきまでの空気が嘘のように。
口元で、指を立てる。
「これ、内緒ね?」
――――――――――――――――――――――――
「……う、ん……」
目が覚める。
「起きた!」
飛びつかれる。
「うわっ、ちょっ……誰!?」
「ルナ!」
満面の笑み。
「ミリア=ルナ!将来のお嫁さんになる人!」
「……ああ」
さっきの事を思い出す。
頭を抱える。
「夢じゃなかった……」
明日も更新
純愛だね〜




