#15 虚偽
「こちら、私に魔法の使い方を教えてくれた、フィアナさん」
「エリス=フィアナだ。よろしく」
落ち着いた声。
無駄のない所作。
――ただ者じゃない。
直感で分かる。
(この人……強い)
「早速だが」
フィアナさんの視線が、こちらに向く。
「君は、魔法を使えるのか?」
ドクン、と心臓が鳴る。
「……何でそんなことを?」
先輩が間に入る。
ナイス。
「“流星を斬った”と聞いてね」
さらっと言う。
「魔法なしで出来るとは思えない」
……ああ、その話か。
少し安心する。
「生活魔法を、2つだけです」
「2つ、か」
視線が、腰の剣へ移る。
「その剣は?」
「えっと……それで斬りました」
少し迷ってから続ける。
「斬ろうとしたら、急に光って……」
「……光った?」
フィアナさんの目が光った。
空気が変わる。
(あ、これ……)
ただの興味じゃない。
“引っかかった”感じ。
「それ以降は?」
「……一度も」
沈黙。
フィアナさんは、何かを考えている。
(やっぱり、変なのか……?)
「で、何で私たちを呼んだんですか?」
先輩が切り込む。
少しだけ、空気が緩む。
「ああ……そうだったね」
フィアナさんは軽く息を吐く。
「君たちが追っている“黒幕”の件だ」
表情が変わる。
真面目な顔。
「操られていたなら、魔力の痕跡が残る。それを解析したかったんだが……」
視線がこちらへ。
「その人物は?」
「ユラリアの本部にいます」
「……あれ?」
フィアナさんが首をかしげる。
「一緒に連れてくるように伝えたはずだが」
「聞いてません」
先輩が即答する。
その瞬間。
――空気が震えた。
みえない何かが、身体をなぞる。
ぞわっとする感覚。
数秒の沈黙。
「……うん」
フィアナさんが頷く。
「嘘はついていないね」
(今の、何……?)
「あの……今のは?」
「スキルだよ」
さらっと言う。
「虚偽確認」
軽く笑う。
「私の前で嘘はつけないよ」
……怖い。
「さて」
パン、と軽く手を叩く。
「せっかくだし、少し教えておこうかな」
嫌な予感がする。
「スキルについて」
やっぱりだ。
「まず、スキルを使うには何が必要かな?葵ちゃん」
「魔力、です」
「正解」
軽く頷く。
「じゃあ次。種類は?」
急にこっちに振られる。
「え、あ……3つ?」
「惜しい」
ニヤッと笑う。
「半分正解」
(半分……?)
「確かに分類はできている」
指を折る。
「生活、回復、攻撃」
「でも、それは“使い道”の分類」
一歩近づく。
「本質は、別にある」
少しだけ、声が低くなる。
「スキルは――生まれ持つか、後から得るかで分かれる」
「……」
「生まれ持つもの」
「固有魔法」
「後から得るもの」
「簡易魔法」
「例えば」
自分を指す。
「虚偽確認は固有」
こちらを見る。
「情報確認は簡易」
「……なるほど」
少しだけ理解できてきた。
「ちなみに」
フィアナさんが続ける。
「固有魔法には、さらに段階がある」
「段階……?」
「3つ」
指を立てる。
「一般能力」
「特殊能力」
「神格能力」
空気が重くなる。
「私のは、特殊能力だね」
さらっと言うが――
(いや、それでも十分やばいだろ)
「……じゃあ」
ふと、口に出る。
「シフリスさんの、時空跳躍は……?」
フィアナさんの目が、こちらを向く。
一瞬だけ、間。
「いいところに気づくね」
口元がわずかに上がる。
「おそらく――固有魔法」
「しかも」
少しだけ、声を落とす。
「上位の可能性が高い。それと、基本的には下位のスキルは上位のスキルに抗えない。ということは…」
"黒幕"は、もっと上かもしれない…
そして。
フィアナさんの視線が、再び剣へ向く。
「……それと」
静かに言う。
「君のその剣、ただの剣じゃないね」
ドクン、と心臓が鳴る。
「光った、というより――」
一歩、近づく。
「“反応した”んじゃないか?」
「……反応?」
「君に、あるいは――」
一瞬、言葉を切る。
「“あの時”に」
空気が張り詰める。
「少し、調べさせてくれ」
フィアナさんが手を伸ばす。
「え、あ、はい……」
剣を渡す。
その瞬間、音が響いた。
フィアナさんが咄嗟に手を離す。
「これは……拒絶している?」
魔法とスキルを統一しました。
明日も更新




