#14 経路
「この汽車、空いてますね」
先輩が、窓の外を眺めながら言う。
揺れる車内。
乗客はまばらだ。
「まあ、魔法があるし、わざわざ汽車を使う人は少ないんじゃない?」
車窓には、のどかな景色が流れている。
どこか、日本の田舎を思い出す。
少しだけ、懐かしい。
――本日は、ラグナ魔法鉄道をご利用いただき、誠にありがとうございます。次は終点、ソル=ラグナ――
アナウンスが流れる。
「着きましたね」
「だね」
汽車が減速する。
ガタン、と揺れが変わる。
窓の外の景色も変わっていた。
田園は消え、代わりに広がるのは都市風景。
高い建物。
整備された道路。
人の流れ。
「……すごいな」
思わず、呟く。
ソル=ラグナ魔法国家。
自分達の居た、ユラリアの北東に位置する都市国家。
その首都、ソル=ラグナは…
“魔法の集積地”。
あらゆる魔法技術が集まる場所だ。
今乗ってきた汽車も、
正確には“魔法鉄道”。
「別の国に行け」
そう"社長"に言われたときは驚いたが、
今なら少し分かる。
ここは、別格だ。
ホームに降り立つ。
まず感じたのは――違和感。
新しい。
建物が、綺麗すぎる。
ガラスのような素材。
光る文字。
浮かぶ案内表示。
「……え、近未来?」
思わず口に出る。
「魔法国家だからじゃない?」
先輩は楽しそうだ。
よく見ると、あらゆる場所に魔力の流れがある。
階段は、人が乗ると自動で動き出す。
案内板は、触れずに操作できる。
まるで、“魔法でできた現代都市”。
「これ、元の世界って言われても信じるかも……」
問題が一つ。
「……で、どこ行けばいいんですか?」
完全に迷った。
「うーん……あ、これじゃない?」
先輩が指さしたのは、案内板。
だが――何も表示されていない。
「……壊れてる?」
「いや……」
近づく。
その瞬間、視界の端に、淡い光が浮かぶ。
「……え?」
体が、勝手に動き出す。
「ちょ、先輩!?」
「え、私何もしてないよ!?」
歩く。
勝手に。
一定のリズムで。
「……これ」
先輩が言う。
「案内してくれてるんじゃない?」
「……マジですか」
逆らえない。
そのまま、導かれるように歩く。
しばらくして。
足が止まった。
「……ここ?」
目の前には、一軒の建物。
周囲の都市とは違い、
どこか落ち着いた雰囲気。
「"社長"の知り合い……ですよね?」
「たぶん……」
少しだけ、緊張する。
そのとき。
――カチャ
ドアが、内側から開いた。
「よく来たね」
女性…?
「今日はゆっくりしてね」
現れたのは、一人の人物。
その姿を見て――
先輩が、目を見開く。
「……あなたは」
「知ってるんですか?」
小声で聞く。
女は、ゆっくりと笑う。
「葵ちゃん〜久しぶり〜」
そう言って、先輩に抱きついた
「さて」
そのまま女が視線をこちらに向ける。
「君が、例の少年か」
「……例の?」
嫌な予感がする。
「流星を斬った、異世界人」
心臓が跳ねた。
「話は聞いている」
一歩、近づく。
圧がある。
「――君には、少し興味がある」
新章がスタート
明日も更新。
作品の事情により女性が多いですがハーレムではありません。




