#173 来訪者
夜中、ポラリスは一人ベッドに座っていた。
ポラリス――神格者は寝れない。
だから、こうして近くに座っているのだ。
この体を不便に思ったのは久しぶりだった。
人と同じ生活をしようとするたびに、それが退屈だった。
いつしか諦めた生活だ。
「⋯見守れるのも悪くはないけれどもね」
もうすぐ朝。
幸せだった時間も終わりだ。
「⋯そろそろね」
ベッドから離れる。
「ラファエル、ガブリエル、ここから離れないこと。よろしく頼むわね」
「「御意」」
一人扉を締めた。
宵時、朝。
夢が覚める頃。
人知れず、青空は禍々しい色に染まる。
「どうしてルナがあそこまで静かだったのか、ようやく分かった」
寝れないはずなのに、私の邪魔をしてこなかった。
私以外が寝かされていたとするなら⋯
初日の夜、私は剣になっていた。
きっとその間に、術がかけられた。
「残念だったわね。一番厄介な人を取り逃がすなんて」
神格解放。
上空に佇んでいた、誰かに向かって。
「随分と大掛かりなことをしてくれるじゃない。落とし前を付ける準備はできてるんでしょうね?」
そう言い、剣を向ける。
すると、彼女は口を開く。
「ボクはNo1008。きっと見覚えがあるハズだよ。"聖霊王"ポラリスさん」
そして、おもむろに片手を上げる。
「ユメを見れない神格者は、ソコで這い蹲ってなよ」
直感する。これは精神攻撃系のスキル。
「私にそんな生ぬるい攻撃が効くとでも?」
神格者かつ聖霊体であるポラリスは、圧倒的な精神攻撃耐性を誇っている。
その程度の攻撃なら、簡単に弾けるのだ。
「ちぇ。ツマンナイ」
すると、彼女は逃げた。
「相手するのはまた今度にしてあげるよ」
すぐさま、ポラリスは追う。
しかし、その姿は深い空にすぐに消えてしまった。
「――取り逃した」
朝日が登るとともに、空は本来の色に染まっていく。
「まだ箱庭の中にいるなんて⋯」
その事に最初に気が付いたのは、海を割った時だ。
その轟音の中に、少しだけ"世界が割れる音"がした。
何でも切れるとは言え、世界に干渉するほどの力は持っていない。
その瞬間から、ニセモノだと知ったのだ。
宿に帰り、部屋の扉を開ける。
湊はまだ寝ていた。
「――その夢が、幸せだといいわね」
頭を撫でる。
「二人もありがとう」
ラファエルとガブリエルを呼び戻す。
あいも変わらず、世界は静かに動いていた。




