#167 揺れる海岸
春先、時期にして丁度日本海からサーファーが消え始める頃。
「海岸沿いにいるだなんて、ロマンチックな敵」
波が立ちにくい風が吹く海岸を、三人で歩いていた。
「話によると、ここに最後の仲間がいるみたいだけど」
水平線に負けず続く、果てしなく広い海岸が視界の先にある。
「もう少し詳しく聞いたほうが良かったんじゃ…」
それもいつもの事だ。
どんな能力なのか聞けなかったのが気がかりだが――
「仕方ないよ。会話できそうな状態じゃないもの」
ルナがそう言った。
「リツカの方はまだ魂が体に馴染んでないみたいだし、あっちは――」
科学者の興味に触れたようで延々と調べられているよらしい。
対価として、「じゃあこの街を案内しろ」と条件を出したとか。
悠々自適にやっているようだ。
「で、今回のも簡単に終わるといいけど――」
まずは探すところから始めなければいけない。
「そう言えば白石君、近場に街があるみたいだし、そこに行ってみよう」
先輩の提案で、一行はラグナの小さな港町に向かうのだった。
カモメのような鳥が鳴き、魔法仕掛けの船がたまに出入りする街、"レーベル"
街にかかった大きな橋が、何もない周囲を見渡せるモニュメントだ。
「川を挟んで街になっているんだね。珍しい」
現実でやろうものなら、川を境に近隣の市町村に分割されて終わりだろう。
こんな景色も異世界ならではだった。
「で、街に入ってどうするの?これと言った特徴すら掴めてないから聞けないよ」
ルナの正論に、先輩がたじろぐ。
「そんな事ないし?きっと手がかりが転がってくるはず…」
「でもその時、だいたい事件に巻き込まれているような…」
「"運命王"が弄ったのかも?それか疫病神がついてるか」
できれば前者で――いや、どちらも嫌だ。
「全く、どこに行っちゃったんだろうね?」
「あの人達の方が敵役してるよ」
――何か考えがあるのは分かるんだけども、せめて教えてほしいと言うか…
「でも、嬉々としてやってることにかわりはないよ。前回なんて『湊とルナを別れさせる事もできる』って言ってたし」
それを聞いた途端、剣から不気味な意思が流れた。
「こうしている間にも、運命の改変が――」
でも、気が付かないのが太刀悪い。
「ちょっと前まで良い奴だったのに、急に人が変わったみたいになったし」
「会ったことあったの?」
「うん。丁度パートナー達が始めて帰った時だね。その時は『もうこんな仕事辞める』とか言ってたのに」
なんだ、辞める辞める詐欺か。
「閑話休題。宿を探さないと。もう日が暮れちゃうよ」
「…そうだな。マトモなのに泊まれたらいい」
そうして、1日目は何の成果もなく終わった。




