↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
179/211

#164 イタズラ

最近疲れてます。風邪です

「もし、仮にさ。僕が今ここで致命傷を負ったら、ラファエルはどうする?」

背中を預ける身として、一応聞いておきたかった。

「不吉な事を言う前に頭を働かして下さい。見捨てると使用主(マスター)から並大抵ではない仕打ちを受けると分かりきっています」

ラファエルは少し身震いをしていた。

「⋯安心した」

"見捨てる"だなんて言われたらどうしようかと思っていたのだ。

「ただし、私に戦闘能力はありません。期待しないで下さい」

もとより、加勢して貰おうなんて気はなかったから関係無い。

そっちのほうがフェアだ。

「敵だとしても、余裕がなかったとしても一対一」

暴力で蹂躙するだけでは、過去の傷は解決しない。

そんな事をセレナさんが言っていた。

『相手に真っ向からぶつかって、相手の気持を全部受ける。それぐらいの意気がないと、罪を背負うことなんて出来ないわよ』

その時のセレナさんの目は、何処か遠くを向いていた。

その理由が、何となく分かった。

「来い。正々堂々相手になって――」

暗い木々の間から、目が光る。

思わず足が竦んだ。

「やっぱり呼ぼうかな⋯」

怖気付いた時だった。

膨大な魔力を感知する。

まさに、一瞬の心の揺らぎを狙ってきたかのように。

三本の斬撃が体を襲った。

「クロー!?始めて見た⋯」

それを、とっさに避ける。

――重大なことを見逃していた。

ポラリスが別行動しているということは、剣がないということ。

「拳で抵抗しないといけなかったり⋯」

それ以外の武器がないから仕方がない。

受けるのは不可能。

この暗闇に包まれた森から、突然として飛び出してくるのを避けるしかない。

「ラファエル!攻撃・防御系バフって全部付けれてる?」

「勿論です。しかし、無理はしないで下さい。使用主(マスター)が悲しみますから」

「⋯どうして?」

接点がほぼほぼ無いと言っても良いだろう。

ルナも言っていた通り、別れた数は半端ではないはず。

「鈍感ですね。女たらし」

⋯はい?

「その言い方だと、もしかして――」

「はい。使用主(マスター)は貴方のことが好きのようです」

思いがけない一言に、脳が困惑する。

「集中して下さい。それとも、呼びましょうか?」

誰のせいだと⋯

しかし、相手は待ってくれない。

少しでも隙を見せた途端に襲いかかってくるだろう。

――それは、今かもしれない。

殺気が肌に刺さる。

憎しみを表したような、おどろおどろしい感情が。

それらとともに、現れた。

「小回りはこっちのほうが⋯上!?」

視線の先は、黒洞々たる闇が広がっているだけだった。

低いっ⋯!

マズイ。退避が――

「完全防御(パーフェクトバリア)」

ラファエルの声とともに、爪が弾かれる。

そして、怯んだように再び森の中へ。

「助かった⋯」

「死なれては困ります」

さっきまで何気ない心配だと思っていたものが、恋愛感情によるものだと知って少し怖くなった。

「とはいえ、このままだと防戦一方。何か手立てがないものか⋯」

「捕まえてしまえばどうでしょうか」

ラファエルの無謀とも思える提案だ。

「無理。見たでしょ?あの爪」

切れ味と言ったら刃物を凌駕するだろう。

「ちょっとの傷だったら私が回復させてみせます」

貫通するかもしれないんだよ?

「それ以外ありません。やりましょう」

ラファエルは従順だと思っていたら、随分推しが強かった。

「また来ます」

二つの目が光る。

「…痛いのは嫌だけど――」

赤い光が揺らぐ。

大地を蹴りつけ、駆けた。

「来い!」

3本の煌めきが、体に刻々と迫る。



「白石氏、交戦中とのこと。援軍を呼ばないようにしてほしいとの連絡が入りました」

オペレーターのその言葉に、葵は頭を傾けた。

「どういうこと?仲間がいなくてもいい――って…」

それほどまでに弱い敵なのか、それとも強すぎるのか。

もしかして、下手に神格者と合わせると手がつけられなくなるから…?

どちらにせよ、向かうのはよそう。

「にしても、武器無しでどうやって戦ってるの…?」

疑問はそれだけだった。

――そして、それを盗聴していたのが、最悪の人――ポラリスである。

「…なんで呼ばないの?」

拳をグッと握っていた。

「私が…やらないといけないのに」

堪えきれず、走り出した。



体を捻り、相手の左手を避ける。

そのまま腕を掴んで、相手の体勢を崩す。

相手の力を利用して抑え込む。

これは、フェイタルから教わった技。

武道に精通しているようで、合間にこういうのを習っておいたのだ。

「素晴らしいです!傷を受けることなく抑えるだなんて…」

いや、まだだ。

まだ右手が残って――

「拘束(レストライン)」

ラファエルが既に塞いでいたようだ。

「さーて。話を聞かせてもらおう…」

視線を移す。

その姿は、まさしく異形だった。

猫耳――だけで見るなら可愛らしいものだが、額からは一つの角。

クローだと思っていたものは、文字通りの爪だった。

「人体実験…」

獣化とでも言うのだろうか。

長い年月が経った後も、傷跡が生々しく残っている。

「ラファエル…これは流石に――」

「治せません。最近ついたであろう傷だけでも――」

すると、彼女は口を開いた。

「ハハハ!こんなに早く捕まっちゃうなんてね。どう?驚いた?」

甲高い声と、混沌じみた発言。

「これが私よ。研究員に好き勝手に体を改造された、悲しき人類…って所。後は好きにしたら?煮るなり焼くなり…調理方法は沢山ある」

子供っぽい笑いと、その裏の憎しみ。

爪はいつの間にやら消えていた。

「…何が目的?」

「察しの通りよ。629を取り返しに来た」

やっぱり同件だったか。

「幸いなことに、死傷者は出ていない。今なら君をまだ許してくれる…」

「甘いわね。こういうのは先に潰しておくって、習わなかったの?」

…なにが言いたい?

「ともかく、私の負けだわ。動物ってのはね、優しくされたら弱いのよ」

気まぐれと言うか、何と言うか…

中途半端な悪戯だと、思ってしまった。

そして、その後に神格者が襲来することになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。