#162 ポラリスの視点
投稿されていないことに今気が付きました。疲れは怖いものですね
"聖霊王"エスピリト=ポラリスはご機嫌だった。
今まで待ち続けた自分に、ようやくチャンスが回ってきたのだと。
この機会を逃すまい…そう思って、湊を連れ回していた。
ところが――
「夜中になったら任務に戻らないと――」
など、湊は逢瀬を避けたがるような発言を度々していた。
流石に、そんな事をされては耐え切れるものではない。
そして、腕を掴んだ。
このまま連れ去っても良かったが、その時――
遥か上空に光が見えた。
『ガブリエル。あれは?』
《攻撃です。例の対象者のものと思われます》
『分かったわ』
そして、湊を引っ張る。
丁度よろけた、その瞬間だった。
ドン!と、立っていた場所に大穴が空いた。
そして光…いや、エネルギーの塊が現れる。
《警告!爆発します!》
ガブリエルからの警告を受けて、咄嗟に体が動いた。
「危ない!」
つかんでいた腕をさらに奥へ押しやり、その上に即座に覆いかぶさる。
そして、爆発が起きた。
「…!?」
ポラリスは驚く。
爆発ではなく、湊を押し倒していることに。
(ラッキー!カミサマも捨てたものじゃないね!)
その事を、絶対に顔に出さないように必死だった。
その必死さは、湊には敵襲に対するものだと勘違いされる。
「ポラリスさん!剣に戻って…」
「嫌」
拒否。
別に、剣になるのが嫌というわけではない。
ただ、我慢ならないだけだ。
「私一人でやる。貴方は民間人と一緒に避難して」
「それでも…」
「心配は要らないわ」
どうせ、これだけじゃないんでしょう?
真の狙いがリツカの魂だとするなら、ルナの事を狙ってくるはず。
だったら、真打はこれじゃない。
『ガブリエル。他の異変は?』
《目撃情報が無かった残り2つの街にも爆発があったのとの事。ミカエルとウリエルを向かわせますか?》
『いや、しなくていいわ。本部の動きは?』
《警戒態勢が敷かれています。いつでも出せるようです。それと、対象についての懸念事項が二つあります。一つが、本人の姿や魔力、生命エネルギーに至るまで観測できていません。憶測ですが、"憶奏王"の位置を探っているものと思われます》
『…ま、そうよね』
《もう一つが、スキルの不確実性です。"創壊王"のように物体が持つエネルギーを扱う種類なのは確かですが、のように物体を破壊している訳では無く、そこにあるエネルギーをそのまま利用している可能性がある事です》
『そうなると、エネルギーがあるだけで危険ね』
《"運命王"が行った実験は、我々にも知らされていないのが災いしました。徹底的に問い詰めることを提案します》
『あの二人が今行方を晦ましているのは知っているでしょう?それより、特定して』
《畏まりました。使用主》
…親がやらかした事を救うのも親孝行、か。
「全く、厄介な親を持ったものね」
私だったら絶対にしない。
その時は隣に…ふふっ。
《特定終了。首都から少し離れた森林に潜んでいます》
『ありがとう。にしても、森の中…』
《どうかなさいましたか?》
『いや、心当たりがあっただけよ』
《提示をお願いします》
『⋯姿を見たけれど、話した人は誰一人いない』
《目撃情報の中に直接話した人は一人も確認されていません》
『そこが気になるのよ。どんな形であれ何らかのコミュニケーションは取るはず』
《話すタイミングが偶然無いだけと思われます》
『そうかしら?いくら何でも偶然が過ぎない?』
《"運命王"が弄っているとするなら、十分考えられます》
『私はそうとは思わない。目撃者の中に、"目が光っていた"と証言した人がいたわよね』
《ヤクザと呼ばれている人の事ですね》
もうちょっとオブラートに隠しなさい。
『ともかく、本当に目が光るとするならただの人ではないのは明らか。そうよね?』
《比喩でないとするなら、目が光るのは神格者か、はたまた⋯》
『⋯昔、戦争があったのよ。貴方達は知らないでしょうけど⋯』
ラグナ帝国が領土拡大の野心を周囲に向けていた頃の事だ。
国家と国民は似て否なり⋯まさにそのように、当時は反戦ムードが漂っていた。
勿論、それを政府はいいと思わなかった。
デモの参加者を捕らえて、尋問した⋯との記録が残っていた。
《それと今回の件、関係性は限りなく薄いものと思われ⋯》
『話は最後まで聞きなさい。もし政府に、神格者が関わっていたなら⋯?』
《尋問後、実験対象となった可能性があります》
『なら、どんな魔改造をされていても不思議ではない。そう考えるのが妥当でしょう?』
《なら、それについて予想と推測を――》
いや、その必要はなさそうね。
『夜中になれば、必ず来る。ルナを呼んで頂戴』
《畏まりました》




